男から聞いた話によると、争いはおこってはいないらしい。
私のほっとした顔を見て、男は警戒を緩めた。
なんだぁ、幽閉されてたのか?というとそのまま、自慢げに細かく教えてくれた。


治承3年。『平家にあらずんば人に非ず』の時代、平 清盛がいる時代なのだと。
なんて、神秘。
どうやら国は一緒らしいが、タイムトラベルとは・・・と思い悩んでいると
聞き入ったと勘違いした男が声を大きくして、話を続けた。

そこからは男の身の上話で、バカバカしくて笑えた。

へんぴな村で生まれた男は、村があまり好きでなかった。
そこで上京して物をうり、金を増やそうとしたものの泣かず飛ばずで
村に残してきた嫁のところに、情けなくかえるのは嫌だったが、
病気であるということを噂でしり、無理やり貸してもらった金で村に帰ろうと思えば、
盗賊に襲われて身ぐるみをはがされ、死ぬ物狂いで逃げてきたらしい。
私から言わせると、嫁を残して村を出るなだ。
かなり自分勝手な男は、ひとしきり言って満足したらしく、今度は私を見てきた。

「おまぇさ、どっから来たんだ?なんか見慣れない身なりしてっけれどさ、
・・・おまえ鬼じゃないだろな?」

「鬼?鬼ってあの人食べる奴?」

「ちげーよ。金の髪で見たこともない目ん玉の色して、妙な術を使う人ならざるものだ。
ま、あんたの髪も目も黒だしそんなことはないが、やつらは人に化けると言うからな」

おおーおそろし。と言って手をする蝿のような男だ。

「ふーん。化けるねぇ。狸か狐かの進化形ってことかな。要するに。
私には関係ないや・・・・・・ってまって、そいつらって妙な術使えるって言ったよね?」

「お、おお」

「そいつら、どこにいんの?」

「・・・・・・変な奴だな。わざわざ殺されにいくのか?」

男の酷くイラッとする顔を殴りつけたくなったが、
なんせ、私の帰る方法を知っているかもしれない人物の話なのだ。
グッと我慢をして襟を揺さぶった。

「言いから、いい、なさいよ!」

「わ、分かった。・・・・・・なんでそんなに会いたいかは知らねぇが、おれが教えてやるよ」


最後、怪しく笑った姿をちゃんと見ておけばよかった。
自分のバカさに涙が出るよ本当。

今、私はさっきの男と同じ状態にある。
つまり、縄で縛られている。
私の目の前には数人の男と縄で縛られた原因がいた。

「やっぱり下種な見た目は心も腐ってるというわけか」

「なんとでもいいなぁ、おれだって、こんなこたぁしたくないけど、金のためだ。
あそこで二人でくたばるより、おまえさんだって良いもの着れて、良いもの食える
おれだって、金をかかえて村に戻れる。いい話じゃなぇか」

ど・こ・が・だ。
にやにや笑ってる顔に一発殴ろうとするが、手に縄が食い込んで思うように動かない。
それを楽しそうに眺めている。悔しくて仕方がなかった。
人を信じた自分が、甘すぎた自分が、負け犬の遠吠えだとわかっているけど


「お前、不幸になるよ」


言わずにはいられなかった。
男がびくっと肩を揺らし怯えたが、私の姿を見て鼻で笑うと馬鹿した目で私をみる。
男が口を開く前に、すっと、襖が開いてデカい男が一人入ってきた。
男の身なりは、テレビの中でしか見たことのない鎧の格好をしていて、
歩くたびに木の床が軋む。
囲んでいた男たちが、皆頭を下げていた。
どうやらこいつがここを取り締まっているやつらしい。
男は確かに立派な体に立派な身なりをしていたが、
そこにいるボロを纏った男と同じようにしか見れなかった。

「顔をあげろ」

太い声が響く。ああ、こいつとは、うまくやっていけそうにない。
第一印象最悪な男は、私を頭からつま先まで見て言った。

「こいつが、舞姫の代わりか?はっ、使えなさそうだ。しかも髪も短いし、
変な格好をしている。女というにはあまりにもお粗末だ。
だが、人でが足りん。猫の手でも借りたいくらいだ。このさい我慢しよう。
して、お前名前を何という?」

誰がいうかアホ。







2009・2・20