平穏だ。
は、縁側でお茶をすすった。
カンカンと、高い音が近くでするが、空しか見ていないには関係ないことだ。
空は青くて、雲は白い。そんな当たり前なことを考えて、
雲の形を連想していれば、それを遮る叫び声。
「おい、!助けてくれよ」
藍色の髪を揺らして、の主人でもある知盛と木刀を交えている男、
前は先輩であった彼は、今では同じ年で、まったく変化しない姿に
時空の流れの不可解さを無視して、むず痒さだけが残る。
彼は、有川 将臣。私の初恋の人。そして、私がここにいる原因でもある人。
ズーと音を立てて飲むお茶は渋い。
ひらりと蝶が飛んだと思えば、清盛の服で、仁王立ちをしながら二人を微笑ましそうに見ている。
彼が言うには、将臣は、清盛の大事な死んでしまった息子の生まれ変わりらしい。
生まれ変わりがすぐに生まれ変われるはずないだろう、頭大丈夫かというには色々出来てしまう世界
だって、時空を渡れるし、怨霊だっているし、
そして、蘇らすことだって出来る。
清盛の後ろにいるのは、敦盛と経正それに惟盛だ。
蘇った彼らは、色々と変わってしまった、まぁ清盛ほどではないけれど、
確実に変わってしまった。
敦盛は、外に出ることを嫌がって自分が穢れていると自分の体を憎んでいる。
惟盛は・・・・・・・・・
血なんて嫌いで見れば、立ちくらみすらしていたのに、今や好戦的で
攻撃的になったけれど、の横には、柏もちが置かれていて、
惟盛が用意したそれを口に含んだ。
口にした瞬間こっちをみて扇で隠し嬉そうにしているから、
一緒に食べてはくれなかったけれど、律儀な彼は約束を果たしてくれたから、
私は、彼が変わったようには思えない。
「お、いいもん食ってるな」
将臣はどうやって知盛から抜け出せたか知らないが、の近くに来ると
皿に乗っている柏もちを食べた。
「あ」
声にする間もなく、将臣の頭に惟盛の扇が飛ぶ。
それから、キンキンした声で叫ぶ。
「それは貴方の食べ物ではないのですよ。なんて野蛮な、あなたが父上だなんて認めません」
そういって、惟盛が消え去るのと同時に、皆も散りじりになる。
その姿になんだなんだと疑問符をつけて、答えを私に求めてくる。
ため息を吐きながら、は答えた。
「虫の居所が悪いんだよ。きっと」
その答えに疑問も持たずそっかと笑う姿に、平和ボケした戦いも知らない青年の姿に
恋をしていた平凡で幸せな日々を思い出して少しだけ泣きそうになった。
この出逢いが、運命だなんてそんな立派な言葉で終わらすよりも、
ただの偶然だって、そんなありふれた言葉で終わらしたい。
私が思うよりも貴方は私を思っていないし、綺麗な言葉で表現できるほど
この出逢いはいいものではないから。
2009・4・1