私が、雪月として名前が知られてないころ
質問されたことがあった。
「なぜ、風景画しか描かない」
人物画ならいくらでも金になるだろうとそう、言われた。
私は、一言。
「風景画しかかけないんだ」
ふぅと息を吐くと白く吐き出される。
歩くたびに白くなるそれをみると、自分は息をしているのだと実感する。
夜のくせに嫌に明るい空を見て
は、足を止めた。
目の端にとらえたものを、確認しようと上を見る。
息よりも白い雪に、
だから寒いとかそんな感情よりもまたこの季節が来たのかと
目を瞑った。
目を閉じれば、浮かぶあの人。
脅威の記憶力は、彼を留めておく。
髪もつめもなにも変わる事のない彼の姿。
たまらない。
なんで、風景画しか描かないか、なんて
決まっている。
描いてしまえば、もう過去だなんて思い知らされるから。
絵は思いを閉じ込める。
けど、今をとじこめてはくれない。
だから、私は風景画しか・・・かけないんだ。
2008.12.10