【もうなくなってしまったけど、それでも愛しいもの。】




「じゃ〜ん!!。これ見てよ。」


そういって見せてくれたもの。
此の頃何かを作っていた北雪が満面笑みでに見せた。


「・・・・・・首飾り?」


「ごめいと〜う。正解者にはもれなくそれプレゼント〜。」


北雪はにそれをかけた。


「どう嬉しい?」


「・・・・・・分からない。けどこれはとても脆い一日も持たない。」


は、自分の首にかけられた首飾りをみた。
ソレは、植物やら動物の羽やらで作られていて強く握ってしまえばすぐに壊れてしまうほど脆かった。
北雪はの言葉を聴くと待ってましたとばかりに力説し始めた。


「だからいいんだよ。」


「?」


。君今日が自分の誕生日だってことも忘れたの?」


「・・・・・・誕生日。」


誕生日ということを忘れてはいたがそれとこれがどう繋がるか一向に分からない
を尻目に北雪は誕生日の大切さを熱心に語っていた。


「忘れちゃ駄目だよ。君がこの世に生まれて光を見てそして僕と出会えたんだから。」


「そうか。」


のなかで北雪から学んだことが増えた。
それは旅をしなければ、北雪に会っていなければ、分からなかったもので。


「うん。あ、それでね。一日だけって言うのは綺麗じゃんそれ。」


北雪は首飾りを指した。
はそれをじっとみると自然の中でしか出せない色鮮やかで
人では一生かけても作り出せない美しさがそこにあった。
は恐る恐るそれに触れながら北雪に顔を戻すと


「確かに美しい。」


にさ。似合うのってそんなのしかなかったし
それに永遠よりも今日一日を精一杯生きている方が僕は美しいって思うんだよね。
でさ。やっぱに上げるなら一番をあげたいと思ったんだ。」


「・・・・・・北雪は凄いな。」


「でしょ〜。時々自分の才能に驚くくらいなんだよ。」


「うん、凄い。」


が北雪を見つめ返すと、北雪は頭をかいて背を向けた。


「・・・・・・あ〜。今日売り上げ少し入ったから鶏肉入り鍋食べたいな。」


「そうか。北雪。」


「うん?」


急に名前を呼ばれた北雪はのほうへ向き直った。


「分からない。けど、とてもここがいい気持ちだ。」


そういっては心臓あたりを掴みながら北雪を見つめた。
北雪はそんな姿を温かな瞳で見つめながら笑った。


「あはは。だったら嬉しいな。」


「嬉しい?」


「うん。が喜んでくれて嬉しいってこと。」


「私は喜んでいたのか?」


「やっぱ天然だね〜。ここがさ。いい気持ちになるってことが喜ぶってこと!!」


北雪はの掴んでいた場所を指した。
は掴んでいる部分に目を向けてから北雪のほうへ顔を向けた。


「やはり北雪は凄いな。」


「う〜ん。それ以上言われると照れるから。」


「嬉しいってことか?」


「ちょっと違うけど嬉しすぎてどうしたらいいのか分かんない?ってとこかな。
もう〜それ以上喋らせないで。」


「顔が赤くなった。」


は北雪が徐々に赤くなっているさまをじっと覗き込むように見ていると
北雪は顔を覆った。


「顔見ないで〜。」


そういわれてもは止めず。


「北雪。分かったぞ。たぶんこれが嬉しいってことだな。」


「・・・・・・意外とエスだね。」


「エスってなんだ?」


「エスって言うのはね〜。」


北雪の笑い声が聞こえる。
声が段々と遠くになって、そしてとうとう聞こえなくなった。


?」


北雪と違う声が上から響いた。
上を見れば仮面を久々に外した鳳珠が心配そうにの顔を見ていた。


「・・・・・・鳳珠か。どうかしたか。」


は、まだ夢から覚めない頭で今の状況を把握しようとした。
どうやら白昼夢を見ていたらしい。


「・・・・・・何もなければいいんだ。それより今日が誕生日だと聞いたが。」


「ああ。情報は叔父上か。」


すると二人しかいなかった部屋にはいつの間にか紅い服を着こなし
扇を持ちながらこの館より主人らしい顔して椅子に座っている黎深がいた。


「ふん。誰からも祝われないお前を哀れに思った寛大な私のおかげだ。感謝しろ。
そして私から時間を奪ったのだ。それ相応の覚悟は出来ているんだろうな。」


かなり意味不明な喧嘩ごしに喋る黎深を鳳珠は呆れながら。


「黎深それは祝う奴の台詞じゃない。、誕生日おめでとう。」


二人はの前にソレを置いた。


「・・・・・・。」


「なんだ嬉しいなら嬉しいといってもいいのだぞ。」


黎深がに話しかけたが、まったくは反応しない。
ソレをただじーっと見つめている。
鳳珠はに聞こえないように黎深に話しかけた。


「おい。やはり服や物のほうが良かったんでは?」


「服や物などあげてみろ。奴は興味がないことなど調査済みだ。
お前があげたときこれ以上いらない。って言われただろうが。」


「お前いつ覗いていた?
だからといって子供のようなしかもこれではすぐ駄目になるぞ。」


「他に何かあったのか?の好きなものを盛り込む以外に。」


「・・・・・・けどまったく反応ないぞ。」


「知るか!!」



「鳳珠。叔父上。・・・二人で作ったんですか?」


ようやくが二人に話しかけると
二人は安心したようにそしていち早く黎深が動いた。


「こっちのセンスがいいのが私だ。」


黎深は赤を貴重とした派手すぎず
それでいて細やかな作りと複雑な編みこみで作られた
素材がすべて木々や木の実などの植物で作られた冠をさした。


「こちらが私のだが、・・・その、気に入らないか?」


鳳珠は黄を貴重とし
簡単な編みこみだが繊細で落ち着いた作りで
素材が黎深と同じだが黄の色は羽であしらっている冠をさすと
鳳珠が伺うようにを見た。
その後ろからやはり気になるようで黎深もの方へ意識を傾けている。


「どうしてこれを。」


「「お前に一番似合うと思ったからだ。」」


二人とも台詞が被ったことにお互い顔をしかめあい
真似するなと喧嘩に発展していった。
はその姿を見てぎゅっと心臓あたりを握り締め。


「ありがとう。鳳珠。叔父上。・・・嬉しいです。」


二人はそれを聞くとよりも嬉しそうに顔を和らげた。
そして自分のほうが喜んだとか出来の話になりまた喧嘩しあっていた。
を二人の性格が如実に現れている冠を嬉しそうにそして悲しそうに眺めた。
偶然というには出来すぎている悲しいほどの必然を感じながら。



北雪。あの時お前が言ったように、私も永遠よりその一瞬のほうが美しく思えるよ。
だからこそお前の思いはとても綺麗で大切で。
でも二人が私を喜ばしたこともまた事実なら。

・・・・・・。

それでも私は大切な記憶と共に生きていよう。お前と共に生きていよう。
いつかが来るかもしれない来ないかもしれない。
それでも北雪が私にとって最愛な人に変わりはないのだから。


は二つの冠をそっと抱えた。
もうなくなってしまったものをしっかりと胸に刻みつけながら。







2007・7・26