最初はただの興味だった。
問題は、その興味対象が近づいてしまったことにある。
そしてそして、その興味対象がちゃんと彼のところへ行けばいいのに、
なぜか真田のほうばかり行ってしまう点にある。
この頃は真田に興味があるんではないかと最悪の事態しか考えられない。
そうなってしまったときを考えれば、みぞけがよだつ。
テニス部がもはやテニス部としての活動は、もとよりある男の未来は潰える。
二人は俺の幼馴染だ。出来るだけ、穏便にそして輝かしい温かな未来のために。
別に、面白いからとかではない。
「皆集まれ」
柳が、皆を集つめた。
何事かと思えばこのところの部長のこと。
皆がああ、あれはな、と言い合う中一人の少年だけが違う反応を示した。
「なんか、変わったことあったすっけ?」
と、そういえば皆からに見られ、いや睨まれた。
なんすか、と声を出す前に後ろから音がした。
コートの中では幸村と真田が試合している。
ポコーンパコーンの音の中にドゴォグフっという音も含まれている。
真田が倒れ、その姿を見て幸村がにっこり笑い、まだまだいけるでしょう?と・・・・・・。
皆、コートから顔を背けた。しかし切原だけは分からなかったらしく頭をかしげている。
「気付いてないのは、赤也だけか」
「ええ、真田くんが頑丈といえども危ないですね」
「ってか、あの原因ってなんなんだ?」
「そうだ、ここに一冊のノートがある」
三冊ほどあったノートの二冊はもはや強奪された後だ。
ノートを手にした幸村は乙女のように微笑んで、
それから般若のような顔でストーカー行為は許さないよ。と言われた。
よく分からない複雑な思考に冷や汗を思い出す。
柳は思わずでそうなったため息を飲み込んで、ノートを読んでいる皆をみる。
「・・・・・・いやいやいやいや、まさかこいつが原因じゃぁねぇだろうな」
「この方は有名で私も知っていますが」
「ってかこの人本当に女っすか?」
切原の言葉に、柳はすっと指差した。
その方向を見ればサッカー場が見える。
そこで見事な動きをしている人物がいて皆口々に凄いな、と言っている。
「うぉ天才的ープロになれるんじゃねぇ」
「良い蹴りだ」
「あ、決まった」
サッカー部が盛り上がっている中、柳がパンと手を叩き皆の視線を戻した。
「で、あれが彼女だ」
「はっ?」
切原の台詞にみなの意見が一致し、それぞれ感情を顔に貼り付けた。
ただ一人だけは、そそくさとその場を移動しようとしている。
柳は見えているのか見えていないかの瞳で先ほどからなにも言わない男の名前をいった。
「で、仁王お前は彼女と交流があるだろう」
ノートに書かれた の考察の文字に、仁王は深いため息を吐いた。
ピヨピヨと鳥が鳴いている姿を横目に、仁王は雑誌を捲った。
横では、ただもくもくと食べ物を口にしている 。
話題の人がそこにいた。
交流っても。
気付いたらいたんじゃ、いいなれば悪友ってとこか。
少しばかり飛んでいれば、が口にしているものを飲みこんだときだった。
「なぁ、私さこのごろ誰かに見られている気がするんだよね」
「で」
「どうやら君んとこの人らしいんだけど、何してんのあの人」
「・・・・・・情報収集」
「じゃぁいいか」
よくない。よくないだろう。
目の前でロールケーキを飲み込んでいる人物を見る。
短くも長くもない黒い髪の毛、自分より小さな身長に細い体。
けだるそうな瞳は大きく黒く、口は小さくロールケーキがよく入るなと思えるほどだ。
可愛いほうの部類に入るが、いかんせん彼女は他の男よりも男前だ。
マジマジと見れば見るほどなぜ幸村が彼女を選んだのか分からない。
より取り見取りなのに、なぜこんな癖のある人物を選んだのか。
「なんだよーロールケーキはあげないぞ」
「いらんいらん」
「いらないってことはないでしょ。これマジで美味いんだって」
「今回のはだれじゃ」
「んー真田母作」
飲んでいたジュースを吐き出した。
「・・・・・・おんし」
「え、マジで美味いよ。ほれ二本あるから」
いきなり入ってきた甘さにむせ返りそうになったが、
尋常じゃない数を食べている奴が美味しいと言うだけあって
普通よりも美味しい。
少しだけの幸福感と、部活中の真田の姿を思い出して頭を振った。
「なんで、真田」
「えー、そんなことより美味しいだろ?」
「いやいや、そんなことで終わらん」
「美味しいっしょ」
「ああ、美味いな」
「じゃぁいい」
「よかない。よかないよ。なんで真田?」
「あーなくなっちゃった。また貰いにいかなくちゃ」
「だから質問に答えてくれ」
しぶしぶめんどくさそうに話した彼女によれば、前自分のお弁当をあげたら真田の母親に
お菓子を貰ったらしい。真田経由で。
それがどうやらいたく気に入った彼女は、お礼と名の押しかけで真田と一緒に真田家に行き、
お菓子を返したら真田の家族に気に入られ、母親とはお菓子をあげ貰う仲に。
いかん。一瞬真田の死亡フラグが。
だからこのところ真田は一人で帰っていたのか。
「おんし、このごろ真田と帰ってんのか?」
「うん、面白いよね奴」
死んだ確実に。
知れば知るほど真田は死んでいく。
「のぅ」
もうここは腹をくくるしかない、今一番聞きたくもあり、返答によっては一番聞きたくない質問を口にした。
「真田が好きなんか?」
「まぁ好きちゃ好きだけど?なんで」
「違うそういうんじゃなくてのぅ、こう愛やら恋じゃ」
「すーげ、仁王お前がいうと嘘くさいね」
ケラケラ笑うに握った拳を下ろした。
殴っても避けてしまうだろうし、無意味だが時々慌てふためく姿が見たいと思う。
ひとまず良かったのは、真田に対してそういう対象ではなかった事実。
報告はそれだけ。
どうにか二人をくっ付けなければ、あのノートを見た幸村は自分にすら攻撃してくるだろう。
痛いのは、ごめんじゃ。
2009・5・6
修正:2009・5・20
柳ノートの補足
一冊目:友好関係と運動神経の異常と今スカウトされている部活の名前などなど。
二冊目:なぜ彼女の体にあんなに入るか?ブラックホールのなぞにせまる。
食べたものと、好みを記してある。
三冊目:食べたものUと好みU。まだまだあった友好関係。補足版
段々増えてく。
けど、次から目立ったこと(尾行など)をすると幸村の制裁がくるのでひっそりと。
取られたのは、二冊目と三冊目。