今日も両手に後輩からの貢物を持って、
口には購買部のおばさん(さゆりさん(52歳))からもらったメロンパン。
大量な食料を持って廊下を歩いているに皆興味があるらしく見ているが、
見られていることなど微塵にも気にしないでは歩き続けていた。
は、器用に足だけを使い屋上の扉を開けた。
空は少し曇っていて晴れてるのか晴れていないのかよく分からない色合いをしていて、
自身の心境にも似ていた。
がいることに気付いて友人が手を振って場所を示す。
そこにいる人物をみて、ぺろりと唇を舐めもう胃の中に納まってしまったメロンパンを恋しんだ。
ペタンと座ったセメントで出来ている床はぬるくて眉をひそめた、
横に座っている人物も眉をひそめてた。
以心伝心?
「、なぜ卵焼きを食べている」
「メロンはロマンだから」
「〜〜〜たわけ!!」
上からくる真田の拳骨、女の子になんて仕打ちをひょい、と頭をずらして回避する。
「さにゃだ、ごひゃんをたべてりゅときわ、ん〜りゃめ」
「まず、箸から手を離せ」
は、真田の弁当をかなりのスピードで箸を握り食べ続けた。
ようやく喋れるときには真田の弁当は空っぽで、
もう怒るというよりも呆れて、真田からため息が出てきた。
その姿を素晴らしい笑顔で見ているものだから、先ほどのように女だと言うことを忘れて
殴りたくなったが、殴ろうとしたときの横から感じた殺気にもう涙が出そうになった。
真田が色々な感情が渦巻いているときに、目の前に出された薄紫色の包み箱。
なんだと思えば。
「まぁまぁ、真田。代わりといっちゃ何だが、私のお弁当をあげよう」
そういって渡された女子のお弁当というには大きすぎるお弁当。
じっ、とそれを見ていれば、は渡したお弁当と違う小ぶりなお弁当を口にしていた。
風呂敷を開くと、細々と何品も入り料亭の和食弁当を思わせるそれに真田は目を見開いた。
顔を上げればもう食べ終わったのか違う弁当を口にしていた。
目が合っては、まだ真田が口にしていないことに怪訝に思ったのか弁当から箸を離した。
「それは、貰い物じゃなくてちゃんと私のだよ。
流石に人から貰ったものをあげるわけないじゃない。だから、食えや」
は、自分の箸にサトイモをさすとそのまま俺の口に入れた。
その時、温度が確実に下がったのだが、口に広がる良好な味に、
思わず口にする。
「美味い」
そういえば、はいつもの人の悪そうな顔ではなく、純粋無垢に子供のように笑った。
「そうでしょ、私の手作りなんだから、当たり前」
その姿に一瞬見惚れた。
「へーそんなに美味しいなら、俺も食べてみたいなぁ」
現実から戻れば、ある場所からの冷気が漂っていて、振り向くことが出来なかった。
「ん?食べる?ハイ」
はそのまま箸で、からあげをさして幸村に向けた。
一瞬、目を見開いた幸村だったが、笑顔で口を開けた。
は、無邪気にどうだと聞いている。
にはその行為がどういうことかわかってはいない。
ただ、いえることは。
「美味しいよ」
そう本当に幸せそうな顔を幸村がしていたので、よしとしよう。
ちなみに、は幸村は肉をつけたほうがいいとか、
真田ん家の料理は薄味で好みとか、そんなことを言っていたが、
練習のときの幸村の攻撃が軽くなったので、よしだ。
そして、少しだけ顔が赤くて見たことがない
とける様に甘い笑顔に、隣に座ったいたの友人が気付かないわけがなかった。
2009・4・26
修正:2009・5・20