本当にな。守りたかったんだぜ。俺は。


空が綺麗で仰ぎ見ればボールが飛んでいった。
ホームラン。
嬉しいさ。とても。

キァという女の子の声と才媛。
それに笑えば、もっと強くなる声。
先輩達が俺の肩を叩いて、ヒーローと言った。

そうだ。俺はヒーロー、上の窓を見れば、応接室、彼女がよくいるのを見た。
今はもういないけど。



「ごめん」

俺は
目の前にいる女の子、名前は知らない子に謝る。涙を流しているその子は、
疑問を口にした。

なんで?


俺は、その質問に答えることが出来ずに頭を下げた。



教室で、教師が分からない文字をつづっている。
ごちゃごちゃしてよく分からない。
全部野球関係にしてくれたら、この面白みのない授業も楽しくなるのに。

なんでか、前よりつまらない。


ふっと横を見る。誰かいた席はもうなくて、
心に一つ空白が出来る。


「親の都合で」

そんな簡単な言葉でいなくなってしまった彼女。
ぐっと握れば、シャーペンが壊れていた。


仲間との昼食で、久々に喧嘩もなんにもなくて平和な日々。
俺と獄寺とツナで、たわいもない話をしていた。

ツナが、ちょっとお茶買ってくるといって、屋上から出て行った。
珍しいこともあるもので、獄寺は代わりにいきますというはずなのに
今日は行かずに横でタバコを吸っている。

「野球ヤロー、なに落ち込んでんだよ」

「・・・・・・なんのことだ?」

いきなり言われた言葉に、意味が分からない。

「自覚なしかよ。チッ、薄ら笑いなんかしやがってちっとも似合ってねーぞ」

獄寺はタバコを足で消すと、俺のほうを向いた。

「話せよ」

俺は、空を見ていた。でかくて綺麗な空。
彼女にあったのもここで、とてもいい空と言っていた。
全てが、綺麗な思い出で、そういえば花火また一緒に見ようって言ったのに、
野球だって次の試合来てって言ったのに。
ああ、でも。一度も彼女は頷くことはなかった。
やるせない。

「例えばの、話な」

例えばと続けば、大体自分の話だっていうのは本当だ。

「守りたくてしょうがないどうしても大切なものがさ。
誰かのものになって、目の前からいなくなったらどうする?」

「死んだのかよ」

「いや、生きてる」

「おまえなー」

獄寺が頭をかきながら、呆気にとられた顔をしていた。

「死んだわけじゃねぇだろ。だったら、いつでも会いに行けるだろうよ」

お前がそんなんだと十代目が心配なさるし、俺も調子狂うだろうが。

あ、それと

「誰かのものでも、欲しいものは奪い取れ」

獄寺がその時、北斗の拳にはまってたなんてしらなかったけど、
単純明快な答えに俺は笑った。自分がこんな簡単なことに気付かなかったのかと

「ハハハっ、そーだよな。すげーよ、獄寺」

肩を叩けば、いてーよ。馬鹿ヤロウと怒っていた。
その後、ツナが帰ってきて、

俺は二人に

「センキューな」

と笑えば、なにか安心したみたいに笑うから心配かけたみたいだ。







俺は長い石段を眺めている、それを軽やかに登れば、君に会える。





俺は、君を守りにいくんじゃない。ただ君に会いたいんだ。
そして、雲雀以上の男になっていつか君を奪いにいく。















2009・3・8