俺が、京洛 という人物を知ったのは、クラスが一緒になったときからだ。
わいわいと、皆と騒いでる中に、静かに一線を引いている人物がいれば、
自然と目が行くもんだ。

俺の京洛 の最初のイメージは、静かで大人な人。
そして少し苦手な人物だった。
笑っているのに、本当は何を考えているのかさっぱり分からなかったのだから。


俺が、すべてに見捨てられたとき。
大げさな表現だけど、俺には、野球というものしかなかったから
世界から見捨てられたんだと本気で思っていた。
皆が集まるだろうと屋上に立った。
風が俺の髪を揺らして、空は悔しいぐらい青空だった。
こんなときでも、この腕が怪我さえしてなったら野球日和だった、なんて考えてる。

嘲笑。

その姿は、誰にも見られてないはずだった、のに。

「なるほど、死を前にして笑うとは大物ですね」

淡々と言ったものが人ではないと思うほどの感情のない言葉に、
俺は顔を向けた。
そこには、貯水タンクの上に座って本を読んでいる京洛 がいた。
彼女は俺なんて少しもみてなくて、本に目を向けていつもの笑みもなく
静かに、本を読んでいた。

急に、カッとした怒りが俺の中で溢れた。

「悪いかよ。お前みたいのにはわかるわけねぇよ。
この世の全てに見捨てられた気持ちなんて!!」

俺は、今でも覚えている自分のいったことも、それからのの顔も言葉も。
なんで、あの時あんなことをいってしまったのかとかいう後悔もあった
けど、それよりその時ようやく俺は彼女の本当を見れた気がした。

彼女は、本から目を離して
とても笑顔なんて言えない泣きそうで辛くてそれでも確かに笑って俺に言った。

「ええ、分かりません」

と。否定しているのに、肯定した言葉を俺は忘れない。


皆が集まってくるといつの間にか彼女の姿はなかった。
それから、俺はツナに助けられて。

この世に、野球以外のものがあると知った。
そして、京洛 のイメージが変わった。
あの時、俺は知らなかっただけだった。けど、は・・・。
それから、俺は可笑しいぐらいにを気にし始めた。
近寄りたいのに、らしくもなく近寄れない。
気軽に挨拶できただけでよかったと、思うぐらいだ。
けど。
が、雲雀が好きだといったことを知ったとき
追っかける姿を見たとき

自分の中でなにかプチプチとつぶれていった。
と雲雀をみるたに、野球の手が止まるほど。
フェンスの跡がつくくらい握りしめていた。
俺は、せめて近づきたかった。

俺の精一杯は挨拶程度だ。
ツナがにボンゴレに誘っていることを知った時は嬉しかった。
きっかけが出来たから。
が、誰を思ってっても良かった。
ただのクラスメイトで終わるのがイヤだった。

それから、は妹の怜奈がきて失恋をしたときは、
俺の中に光が生まれたんだ。たとえそれが真っ暗でも光だった。
が悲しんでいるのに、自分が喜んでいることに気付いた。
もっと、もっと近くなって。
無理やり友達になって・・・知れば知るほど
笑顔が、嘘くさいなんて思えないほどになっていけばいくほど
何気ない素草に、抱きしめたいほどの感情が芽生えていく。


俺は絶対にもうあんなふうに笑わせない。

名前を呼べば、振り返ってくれる君が愛しい。


なぁ、もう雲雀じゃなくてもいいだろう?
俺にを守らせて・・・。




2008・12・1