「え?」


怜奈は体のしんが冷えるような心地がした。
鏡のいった言葉が信じられなかった。
だってもしそれが真実なら自分はなんて酷いことを。
怜奈は宗主を見た。
なに嘘言ってんだと怒って欲しくて、
面白い冗談だと笑って欲しくて、
そうであることを期待した。
しかし、宗主は怜奈の期待を裏切った。


「もう、いっちまうのかよ。つまらねぇ奴だ」


最後までとっとけよ。と残酷な言葉を吐き
怜奈からの視線に宗主は笑って言う。


「可哀想にな、怜奈。
ここまで一人で生きてきて、一人ぼっちだと思い続けて、
認められたくて頑張って訓練して、その結果がでて、強くなれて、
お前を一人にさせない彼氏も出来た。京洛家じゃなくてお前を認めてくれる奴らもできた。
それなのに、お前を邪魔する奴がいる。いいや最初から邪魔ばかりしてくる奴が
お前は憎んだな。一人にさせたのもこれ以上、上になれないのも、彼氏が取られたのも。
全部、あいつのせいだ。死んだのも、自業自得。
ようやく全てがうまくいく。そう思えれば幸せだったのに。
本当、ひどい奴だな。鏡。真実を知らせるものが一番罪だと思うぜ」

「お前はどこまでも下劣な」

「はん。お前はあいつがいないと何の価値もない。
そうだな。怜奈。お前と一緒だ」


真っ青になった怜奈を言葉と裏腹に髪を撫でる。
髪をぐしゃぐしゃと撫でる行為はいつもの兄のような宗主で
本人が言っているんだということを実感させられる。


「お前がいなければは自由にどこかへ逃げれたし俺を殺すことも出来た。
それをしなかったのは、一重に怜奈お前のせいだ。
あいつの自由と引きかえにお前は、生かされてた。
殺してもいない家族を責められて、殺されるはずだったお前を庇って、
京洛家でご飯も寝る場所も金もすべて自由にさせて、
お前を強くさせるように教える人を選んで、
お前が自由であるように京洛以外を教え、
俺にこれ以上お前を縛らせないために彼氏を与えた。
知ってるか?怜奈。お前は俺の婚約者候補だったんだ。のかわりのな。
それを、あいつはどこで嗅ぎつけたのか。お前に彼氏をつくらせて
しかもボンゴレに入っていることで流れておじゃん」

まぁ、誤算もあったようだがなと、ちらりと雲雀を見る。
一瞬殺意を向けすぐにそれを元に戻すと、
怜奈から手を離し目をみて褒めた。


「だが、俺はそんなお前を賞賛しよう。
このまま行けば、あいつは二度と俺に逢わないで知らない場所で死ぬだけだった。
よく、つれてきてくれた」

「それは怜奈ちゃんのせいじゃない。お前のかけた術をとかないと死ぬから」

綱吉の言葉に宗主は、何も知らない奴がを語るなといわんばかりの
視線で綱吉を見た。

「ハッ、あまりをなめるな。ボンゴレ。あいつは京洛家で一、二を争うほどのやり手だ。
あいつはな、あんな一回の発動だけじゃ、死なない。
いいや、双子ごときの弱者にあいつが全力で挑むはずがない。
あいつの髪は白くなったか?ならなかったろう?あいつの覚醒はな。この状態だ」

そういって、の頭をさす。
ほんのり温かい首は、血が抜けたのか真っ白で髪と同じ色になっていた。
白いそれは、赤ばかりが目立つ。

「完全に覚醒しなければすぐに死にことはない。深い眠りにつく程度だ。
なぜ、はきたか?答えは簡単だ。
怜奈、お前はそこの彼氏と別れたな。はその手の情報に鈍いからな」

「そんなまさか」

怜奈はがたがたと腕を振るわせた。

「怜奈。
お前は実にいい『至高の珠』だった。実にいい人質だったよ」


の目が開き口から血を吐きながらお前のせいだと睨んだ姿が、怜奈には見えた。


「いやぁぁ」

ごとんと首が落ちる音がした。
怜奈は顔を隠しながら叫んだ。

「わ、私が私がいたから?私のせいでちゃんは・・・・・・私が、私が
何も悪くないちゃんを責めて・・・・・・ね、姉さまをこ、殺して、」


発狂寸前の怜奈に、鏡が大声をあげた。


「それは違う!!」


怜奈は、大粒の涙をためた瞳で鏡をみて静止した。


「そうじゃないんだ。怜奈。そうじゃない」

怜奈の茶色い瞳と鏡の黒い瞳がぶつかった。
一息鏡は息を吐く。


は、おまえのために生きていたことは確かに事実だ。でも、お前がいたから生きていられたんだ。
それに、を殺したのも自由にさせなくしたのも全てそこの男のせいだ。
すべては、宗主、いや京洛 一己との出会いから始まったんだ」









2009.1.21