*この物語は暴力的表現が含まれます。その類が苦手な方は飛ばしてお読み下さい。
肉に針のように鋭利なものが突き刺さった音が、聞こえた。
「よく分かったな」
雲雀を守るように手を広げたままの格好では顔だけを上げた。
血だらけの白い着物の上にまた新しい赤が染まっていく。
「貴方ならこうすると思ってましたよ。いい趣味です。傀儡 なんて」
それも、怜奈じゃなくて恭弥さんを選ぶなんて。
ギッ睨めば、わざとらしく怖がった振りをして道場の入り口を見た。
「紅。褒められたぞ」
道場の入り口には、無表情で黒い服を赤く染め顔まで血がついている
紅が片腕に伸びる鉄線をのほうへ伸ばし、
もう片方にはぐったりとしこちらも血塗られている鏡の姿があった。
「鏡さん」
怜奈は、鏡をみて叫んだ。
は苦しそうに息をしながら、視点が合わなくなった目で見ていた。
耳も危うい。
「」と、想像しがたい人の泣きそうな声が後ろで聞こえた。
そして、の腕に温かい温もり感じたが、宗主が紅に目で合図すると鉄線を引っ張った。
の体は宙に浮き手を広げている格好で、宗主の目の前に動かされた。
温もりを感じられた腕を見れば、宗主に顔を前を向かされる。
「絶体絶命だな。お前はもう自由が利かない。負けを認めろ」
嬉しそうに笑う宗主の姿をみて悔しそうに顔を歪めて綱吉は、叫んだ。
「こんなの試合じゃない」
体の自由がきくのであればすぐにでも助けるのに。
きっと、それは誰もが思っていたのだろう。
みんなが宗主に向かって、抗議の言葉を口にして、
体を動かせようと一生懸命動こうとしている。
しかし、誰も動けるものはいなかった。
初めて宗主が綱吉たちの方を向いた。至極呆れた顔で。
「キャンキャン喚くなよ。そっちではどうだか知らねぇけど、勝てばいいんだ。
どんなに卑怯でも、どんなに姑息でも、どんな方法でも勝てば同じ。
どの戦いでもそうだ。ようはここ。頭よ。体力があっても、技が良くても、
たった一本のペンで負ける時だってある。その勝負に負けたんだ」
それから急にの顔を近づけた。
二つの目と目がぶつかり合う。
「なぁ、。お前の唯一の弱点は、自分よりも弱いものを守るという陳腐な考えだ。
そこだけだ。
お前はそれ以外はとても素晴らしい。
俺が褒めるんだ。その才能も血族もその頭もその顔も体もすべてだ。
お前は、俺に似ていた。そっくりなくらいに。
お前は、俺の上をいっていた。嫌になるほど。
だが、お前は俺に負けた。
お前の考えの甘さに。お前は守るべきものに殺されるんだ」
綱吉たちが、動くのをやめた。
は、何も口にせず、瞬きもしないでじっと宗主を見ていた。
その姿に満足したのか。宗主は話を進めていく。
「そんな奴らいらないだろう。分かっているはずだ。
お前を、守れるのも、一緒に共にできるのも俺だけだと」
そのセリフに、ギリっと音が出来るほど山本と雲雀が動こうとしていた。
そして、表情が変わらない紅の顔に少しだけ影が出来た。
「俺を選べ。そして、共に頂点をとるんだ。お前と俺ならできる。
その体だってなおせる。。お前は俺のもんだ」
それを聞いては笑い始めた。壊れた人形のような姿に一同どうしたのかと
目を見張れば、笑い終わったは宗主に言った。
「それは、とてもいい考えで一番最良な選択肢ですね」
だろう、と宗主は笑いに笑いかけるが、次の言葉で一変する。
「ですが、貴方は勘違いをされている。
私は貴方とは似ていない。私は素晴らしくない。
守るべきものといいましたが私は誰一人守っていません。
さっきの行動は、私のわがままです。
なにより、貴方は私を守れない、ともにも出来ない。
なぜならば、貴方は私よりも弱い。弱者よりも弱いもの。
ああ、貴方にまた言いましょうか?
弱虫。
あのときのようにまた誰かに泣きつかれるのですか?」
その瞬間、宗主の手刀が、の首を飛ばした。
それから、スローモーションのようにの首が落ちていく。
の髪どめは切れ長く白い髪が血に濡れて、ごとんという音を立てて
床に落ちた。
「あぁぁああ嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああ」
人か動物かよく分からない声が道場に響いた。
2009.1.17