綱吉は、息を切らした。長い階段からまた歩いて何分もかかる場所を
前にいる柊は、ステップを踏むようにすいすいといってしまう。
まだなんとかついていけるのは前の修行のおかげかもしれない。
ここです。と言われ何個もあった建物の中で一番離れた大きな場所に辿り着いた。
横に見える庭園は、嵐がきたかのように荒れている。
柊はそれをみて、鏡が戦っているようですね。と指差す。
そこではチカチカと小さく光るものが見えた。
リボーンとコロネロはいい筋してやがるとか使えそうだなとかぶっそうなことを感想を述べていた。
戦い大好き人間には困り者だ。そういえば、もう一人の大好き人間は珍しく何も言わず
興味ないとばかりにさっさと建物に入っていった。

建物の中に入れば、そこは木造建築なのに鉄の匂いが充満していた。

その中心で俺達は、激しく静かに戦っている人をみた。
数人の年を経た人たちが壁際に立っていてまばたきしないでみていた。


「そこまでか?


「貴方も、そんなものですか?」

上半身裸で、下には黒の袴だけをはいており、体に牡丹の刺青が描かれている、
20代くらいで背が高く、体格も良く
肩につくかつかないかぐらいの黒髪を後ろに流しライオンのような髪型をした男が、
重い突きを出す。
それをふわっと音がでそうな軽やかさで流して
所々破れている白い着物と長い三つ編みをした女がいた。
その人物はよく知っている人で、いやその人物のためにここまで来たんだ。
分からないわけない。でも、知らない人だった。



誰か、彼女の名前を呼んだ。
名前に反応して振り向くまで、俺は彼女だと思えなかった。
だって、そんな。
彼女は、こんな場所で戦う人ではない。
彼女は、驚いた顔をして俺達をみてすぐに我に変えると叫んだ。


「逃げて!!」


その言葉に重なるように錫杖のシャンという音が鳴った。
一体何がおこったのか理解できずに、山本の肩にいるリボーンに聞こうと
横に顔を向けようとすれば、動かない。
周りの人間も事の次第が理解できたようで、騒いでいる。

「やられたな」

横でリボーンの声がした。ちゃんは、じっとこちらを睨んでいた。
睨んでいる場所には、柊さんがいたはずだ。
男の攻撃は休むことなく彼女に降り注いだが、
難なく避けると、ちゃんは、男を見据えた。
睨む行動よりも迫力があり、目の中に静かに燃える炎が宿っていた。


「余所見とはいいご身分だな」

「どういうことですか」


声は、いつもと変わらなかったが言葉だけで呪い殺せそうなものを感じた。


「お前が、少しでもいてくれた仲間にも最後くらいみせてやりたくてな」

「・・・・・・この、外道が」


は、左手を突き出し、宗主はそれを避ければ、避けた宗主の首を目掛けて
折りたたんだ指が下りてくる。宗主はすんでの所で交わしての手を掴んだ。


「危ない、危ない。怒ると怖いなお前は」


そういって笑う宗主の手を跳ね除け、二人はまた武器も持たずぶつかり合った。




「リ、リボーン」

「なんだ。駄目ツナ」

リボーンは、もう少し見ていたいとワクワクした子供のような声を返した。
ツナは、ため息を吐いたら、なかなか見れないレベルの試合だぞ。
ちゃんと見とけと怒鳴られた。

「そ、それはいいから。なんで俺達動けないの?」

「それは、柊だろう」

「フフフ、乱暴なことしてすいませんね。安心して下さい。私の技の一つですから」

だから、なにを安心しろというのか。

「私も本意ではないのですよ。でも、危ないからということで皆様を動かさずに
しておけと言われたものですから」

縦社会なんですよ。というがリボーンと同じで声は弾んでいる。

「だからって、おかしいよ。これなにもできないじゃないか」

「で、どういう仕組みだ」

「ちょ、ちょっとリボーン」

「内緒です」

柊の言葉にチッと舌打ちをしたもののこれがどういう状態か綱吉に言われなくても分かっている。
ナンバーワンのヒットマンだというのに、つい気をとられてしまった。
意識を、戦っていると宗主にあわせる。
白い着物をふわっと浮かせて舞うように宗主の男の急所をついている。
それをギリギリで交わす。二人の戦いは、床を壊し始めていた。
リボーンは、をみた。
異常で威圧的な彼女は、自分の思った以上の大物だった。
練習で強くなったとはいえここにいる誰もが敵うものはいないだろう。
そして、ここまでみせる試合はなかなかない。
戦う姿を見たとき空気が震え、心が震えた。そして、見惚れてしまった。
そのせいで、罠にかかってしまった自分を誰か非難できるだろう。
誰もが、見てしまえば心奪われる。
現に、ここにいるやつら全てと宗主の戦いに釘ずけだ。


だが、スイッチを切るかえる。自分達の立場がだれくらい危ういのか
そして、あの時が怒ったことから考えると・・・・・・やべぇなこれは。


息を吸うのが苦しい。それは体力ではない。
ぜぇぜぇと息をすれば、宗主も少しだけ息が切れていて、私よりも出血量が多い。
しかし、さすが宗主になった男だ。決定打はすべてかわされている。

「よう、。覚醒はしないのか?ああ、違うな。
お前は出来ないんだっけな。ハハハ」

私は、ちらりと綱吉たちをみた。怜奈と目があった気がした。

「見えるぜ。、俺には、お前の体に渦巻いている俺の毒が」

残念ながら、私にも見える。
大きなムカデのような虫が少しずつ自分を締め付けていっているのが。

「本当のお遊びはここまでだな」

そういって、私の前に手をかざした宗主。
くいっと何かを引っ張る指の動作一つで、私の口から大量の血が吹き出した。








2009.1.15