私の今の格好は、小直衣 という陰陽師のような服で白一色だ。
昔から試合があるときは着ていた服で、奥のダンボールのなかにしまってあった。
二度と着まいようにダンボールに何重にもガムテープがはられていて
さながら、封印のようであった。
ダンボールには、それだけではなく昔よく使っていた武器の二枚組みの鉄扇と、
鏡ちゃんの着物と、武器も入っていた。
鏡ちゃんの着物は、真っ黒で忍びようの服、ずらっと並んだいくつもの武器を
その着物に収めていた。
仕込みをする姿は、とてもカマ言葉を喋り女物の服を着るようには見えず
似合っていたけれど、私はいつもの格好のほうが好きだった。
長い髪を高く結う。そうさせてしまっているのが、自分だ。
目が合うと、にっこり微笑んで頭に手をポンと置かれた。
私達の間に言葉はなかった。
最後に、お茶をすすって、家に向かってお辞儀をすれば、
もうそこは自分達の慣れ親しんだ場所ではなくなっていた。
足を止めて上を見た。
忌まわしくも懐かしいその場所は、出て行ったときと同じ風貌で、
眉をひそめた。ここは、変わらない。
いつまでも古臭く、血なまぐさく、大きい。
その普遍さは、私が死んでも何も変わらないと笑っているようで、胸がむしゃくしゃする。
昔と変わったと思ったけれど、負けず嫌いな所はかわっていないみたいだ。
挑んで見せよう。私の全てをかけて変わらないこの場所を変えてみせる。
足を進めて、クソ長い階段を登る。
一歩。二歩。三歩。
石段の周りに茂る植物が揺れた。
白い着物も揺れ、それがピタリと止まれば、私は鉄扇を鏡ちゃんがくないを出した。
そして扇で空を切り、鏡ちゃんがどこかに投げれば、人のうめき声。
その瞬間どこに隠れていたのか分からないほど石段を多いつくす人。
皆、屈強で武器をかかえてこっちを睨んでいる。
鏡ちゃんが目線でつたえる。そうだね。ここは強行突破でしょう。
鉄扇がキラリと光り自分の顔を映し出した。
次々と、男達は倒れていく。
自分達がいる場所以外に人が倒れ山道ができたようになる。
段々と振っていく扇に昔を思い返しながら、横にいて同じく手加減をしている鏡ちゃんに話しかけた。
「鏡ちゃん。後悔してる?」
「後悔?ここにいる時点で答えは分かる出しょう。それよりも置いてかれるほうが後悔するわ」
「そっか、ねぇ鏡ちゃん」
「なに?」
「生きてかえれたら、花火見に行かない?
凄く綺麗で大きくてうるさくて・・・武くんと一緒にみるっていったんだ」
「武くんって、あのナイスガイね。ちゃんのまわりってハンサムだらけよね」
「・・・・・・自分も美形だと自慢?」
「ウフフ、褒めるんなら美女といいなさい」
「ねぇ」
「なぁに」
一瞬間をあける、ずっと聞きたかった鏡ちゃんの本音を。私は呼んだ。
「鏡、したいことあった?」
「・・・・・・いきなりだな。おい」
「久しぶりに聞いた。その口調」
「お前が、昔みたく呼ぶからだろう」
「で、あるの?」
「まぁな。俺ってもてるけどさ。一度も恋愛しなかったし、お前のおもりで大変だったし」
「それ、私関係ないよ」
そういえば、拗ねたようでそっぽを向いた。それなのに、器用に人をなぎ倒していく。
倒すことが一段落すると、仕返しとばかりに鏡は私に言った。
「お前こそ、ないのかくだんねぇけど大切なこと」
「・・・・・・私は鏡と違って恋愛したし」
一瞬、時が止まりくないを落としかけたが、もちこたえそれを襲い掛かってきている男に投げた。
「なぁんだと、相手誰だ?」
「アハハ、おとんとおかんだ」
「はぐらかさずに言えこら」
「意地悪だね、鏡。誰だか分かってるでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・因果なもんだ」
「ちゃんと叶わなかったし」
良かったよ。と笑えば、鏡が苦しそうな表情をする。
私は、それをみないようにわざと大きな声をあげて最後の階段を登り終えた。
下から見たよりも大きな建物そして。
「鏡ちゃん。どうやらお迎えつきみたい」
見たくもない顔達。
「本当に、因果よねぇ」
そういって、私達は戦闘態勢をとる。
その姿をみて、男、宗主いいや、一己は腕を構え豪快に笑った。
そして、嘘くさいポーズをとると。
「ようこそ。京洛家へ。歓迎するぜ。我が婚約者様?」
本当に、こいつには反吐が出る。
2009.1.13