シャマルは、と鏡のあとを追っていた。
遠くから聞こえる声。

!」

シャマルは、二人がいるであろう場所に駆け出した。
行けば、血をながして白い顔を青くしてぐったりしていると、
一生懸命に声をかけ抱きかかえて同じく青い顔をした鏡がいた。
自分の中に抱いていた不安が、現実のものとなった。

「おい、そんなことしてねぇでさっさと運べ」

シャマルは、鏡にを保健室に連れて行かせた。

消毒液くさい保健室で、は包帯を巻かれ診察も終わった所だった。
青白かった顔も安定して白い顔に戻っている。
閉じていた目は開かれていて、鏡に大丈夫だと話しかけていた。
シャマルは、二人にお茶をだすと、静かにコーヒーを飲んだ。
タバコを吸う気分じゃない。酒を飲む気分でもない。
頭の中をすっきりさせたかった。
鏡は相変わらず、心配そうにをみていた。
は、苦笑をしながら鏡を見てそれから、シャマルをみると、微笑んだ。

「ありがとうございます」

「いいや、なんてこたぁねぇよ。俺はただ傷を手当しただけで
原因が取り除けねぇ」

シャマルはくしゃりと顔をゆがめた。
自分にかかっている病気も未知なる病気も治せる自信がある。
それで生きている自分もいる。
だからこそ、今回のの病気は初めてのもので歯がゆくて仕方がない。
医者なのに治すことが出来ないなんて。
シャマルの目の前にいるのは小さな少女。これからの成長がたのしみでもある。
けれど、このままでは彼女は成長すら見れずに消えていってしまう。
どんなに自分がちっぽけなのか思い知らされる。


「いいえ、ここまでしてくれたのは貴方ぐらいです。普通の医者ならさじを投げています」


こんなことを言わせているのは自分で、気を使われていることにむず痒さを覚える。
シャマルは鼻の項をかいた。

ちゃんは、後悔しねぇのか?」

「後悔?いいえ、その逆です。シャマルさん」

何を、言うつもりだとシャマルはをみた。
見れば、目をギラギラと輝かせて、いつもみたいな儚さよりも
鮮烈に残る存在感。

「私はようやく人になれました。生きている人に。
ちゃんと根を張った立派な雑草になれたのです」


それを至極嬉しそうに話す。シャマルは目を細めた。
本当に、彼女はいい女だ。
以前しゃれでいった言葉を思い出す。そう、彼女はもう立派なレディで、
余計、余計に生かせたいと思いたくなる。
ゴホゴホと咳をしだした彼女にシャマルは頭を撫でて眠るようにうながす。
彼女は、ベットに横たわると視点のあわない目で話しかけた。

「も、し私が起きなかったら叩き起こして・・・・・・下さ、い、ね」

そういえば、すーと目を閉じて眠りについた。
彼女の言葉と静かすぎる眠りに永遠の眠りについてしまったのかと
心臓を確かめる。
ドクン、ドクン、と音がした。
良かった。脈はある。

鏡は、黙ってをみていた。
シャマルはこっちが重症だといわれれば信じそうなくらいの
鏡の姿に、頭を叩いた。

「いっつぅー何するのよ!」

と、叫んだ言葉を慌てて自分の手で隠す。
シャマルはそんな鏡の姿に呆れながらも、

「おい、おまえさん。気付いてないのか?」


鏡は、はっとして扉をみればそこからガクランを肩に被せた雲雀がいた。
雲雀は、の近くの椅子に座ると、鏡のほうを見ずに聞く。



「ねぇ、この子はどうしたら治るの?」








2009.1.7