「もういいでしょう!終わりにしなさい」
鏡さんが怒鳴った。
この人と過ごした時間は少ないけれど、
こんな風になる人だと思わなかった。
綺麗な顔が、すごむとここまで怖いとも思わなかった。
言われていないのに体の芯がすくむような心地がする。
チェルベッロは、少々押されぎみだがそれでも負けず言い返す。
「いいえまだです」
「怜奈ちゃんはもう戦えないわ!終わりよ!」
「駄目ですよ。鏡、ルールを忘れたのですか?
片方が『参った』か死亡がこのルールの勝敗です」
シャンと音を立てて柊が鏡の前に立つ。
鏡は唇をかみ締めて柊を見ると、ふいっと顔を横にやった。
柊はその仕草をとても満足そうに目をゆがめた。
「フフフ、鏡がそこまで慌ててる姿は大変おかしいですね。
そんなに、あのお方がお大事ですか?」
「・・・・・・怜奈ちゃんも大事よ」
鏡がドームに目を移す、それにつられて柊がドームを見る。
そこには、倒れて動かない怜奈と
それをじっと見つめたまま動かない。
急に、がふっと力ない笑みを零したと思えば、
の周りに白い光が集まってきた。
「こ、これは」
「なんだこれ!!」
みなが驚いているなか、
シャマルと鏡だけが、苦悶した表情をした。
柊はその光を見て喜ぶ。
「フフフフフフハァハハハハ、最高です。こんないい気分なのは久しぶりですよ。
本当に、面白い。フフフ。
気分がいいので、皆さんに良いことを教えてあげましょう。
『至宝の珠』とはね、京洛家では隠語なんですよ」
光が大きく膨らみドームを光らせる。
「その意味はね、何かを封じるものということなんですよ」
光が、圧縮されの元へもどる。
「彼女が倒されれば、それが開放される。私はそれを見にきたんです」
シャン、シャン、シャン柊の錫杖が鳴った。
柊は白い布の下で大きな輪をつくり誰にも聞こえない声で言った。
様、あなた様がすべてをかけるのか、見にきたんです。
ドームの中では、異常な事態からすぐに頭を切り替えて
煉と燐はをみた。前となんら変わりはない。
しかし、煉は嫌な胸騒ぎが止まらずそれ以上足を動かせない。
燐が、一歩踏み出しに近づく。
とめようとしたが燐の行動のほうがはやい。
「ギャハ、何今の?なんかの手品ですかぁ?」
は、何も答えない。
燐はムッとして怜奈の元に来ると
「さっさとよぉ、降参してくれないとあんたもこんなのになっちゃうよ
こんなジャンクにぃ」
怜奈の体を蹴った。
刹那、彼女の姿が見えなくなった。
瞬きをとめても見えないスピード。
何があったのか。燐すらわかっていないだろう。
ただ、そのまま体が地面に崩れ落ちた。
煉がその光景を目で見ると同時に叫んだ。
自分の片割れの名前を。よろよろと燐に近づく。
そして、を睨みつければ目を大きく見開いた。
「な、んで、あなたがここに」
「死んではいませんよ。けど、貴方は分かるでしょう?」
煉は燐をみてをみた。
そして、なにか諦めるような、ふっきれたような顔をして、
ゴソゴソと懐から、瓶を取り出しに渡すと言った。
「『参りました』」
は、煉の頭を撫でて、なにかいうと、怜奈を担いでドームからでてきた。
皆が、何がおこったのか分からずにポカーンとしている。
は、怜奈と解毒剤の瓶をディーノに渡し、
そのまま、誰とも目を合わさずにどこかへ行く。
鏡はその後ろを追いかけるようについていく。
パチパチという音が響いて見れば、柊が拍手している。
その音でみんな我に帰ると、
ディーノは怜奈を病院に連れて行こうとし。
シャマルと雲雀はいなくなっていた。
周りのものはみな一同に今あったことを話している。
そのなかで、コロネロがリボーンに近づいて話しかける。
「おいコラ。今のは」
「ああ、そうみたいだな」
二人は頷くと柊に近いた。
「柊といったな。お前」
「はいそうです。なんでしょうか?おちびさんがた」
「お前が持っている情報を教えろ」
銃を二人で突きつけるが、柊に変化はなく、むしろ嬉しそうに答えた。
「私は記録係であって語り部ではありません。
でも、今回はとてもいい記録になりそうで、フフフ・・・おや失礼。
これがすべてすみましたらお教え差し上げましょう」
そういって頭を上品にさげさっていく。シャンシャンと音を鳴らして。
二人の抱いた柊の印象は、食えない奴それにつきた。
2009.1.6