煉とは、向かい合っていた。
少し離れた場所では怜奈と燐が戦っている。
怜奈が思い描いていた戦略になったわけだが、ちらりとは煉をみた。
にこっと笑うその姿は戦場に似合わない。
けど、自分の姿もそうだ。並盛中の制服が、揺れた。
隣の戦いでおきた風のせいだろう。
それにくらべてこちらは静かだ。
まるで嵐の前の静けさのようだ。
「さん、僕は理解できないことがある」
びしっと人差し指を1本たてながら煉は笑う。
「それが分からなければ、あなたを倒した後もすっきりしない。だから、聞こう」
そういえば、煉の顔から似非くさい笑みが消えた。
攻撃をしかけるわけでもなく、質問とは。
「余裕ありますね」
「フフ、燐はそう簡単にはやられないから」
「それはたいそうな自信で」
近くから地響きが聞こえた。ドーム全体がビリビリと震えている。
「さん、あなたはなぜ京洛家から逃げたの?」
「それはまた当たり前のことを」
「当たり前?」
「簡単なことです。私が弱いから破門したそれだけですね。
なぜ貴方はそこまで京洛家にこだわるのですか?」
「ウソだ。破門?じゃあなぜ破門した人間が京洛を名乗っているんだ?
破門したなら、京洛は消える。なぜ?」
激情し、顔を歪ませてに問いかける煉。
は顔色を変えず微笑みながら煉に切り返した。
「私の質問に、答えられたら答えましょう。ギブ&テイクです。」
の笑顔に、毒気を抜かれた煉は静かに言葉を零した。
「・・・・・・京洛の名前を持っているものには分からない。
京洛を持たない分家の扱われ方なんて・・・・・・」
「だったら、抜ければいい」
「抜ける?出来るわけない。僕たちは、あの人に」
そこまで言うと急に黙った。
はっとしての顔をみている。
言わなくていいところまでを喋ってしまったようで、煉は焦りだした。
「あなたは、口の上手い人だね」
「それはどうも」
「フフ、どこかあなたはあの人に似てる、けど」
煉が懐から取り出したものが、パチン、パチンといって組み立てられていく。
は、それをみて顔が青くなっていく。
「残念だけど、ここでさよならだ」
煉は黒い笑みを浮かべて、黒い身の程の丈がある鎌を構えた。
それはさながら漆黒の死神のようで。
は、自分の命の危険を感じていた。
「ちょ、ちょっとそれはないんじゃあない。
貴方が弱いほうっていうのは嘘ですか!!」
卑怯だ。と叫びながらブンブン音のなる鎌から背を向けて逃げた。
「僕のほうが弱いだなんて、僕は言ってないよ」
それより逃げないでくれる?
そういってちょこまかと逃げるに鎌を振っている。
ブゥンと鳴った鎌の一振りをは避けたものの横の髪がはらりと落ちた。
の叫び声がドームに響いた。
2008.1.4