「こんにちは」
そういえば、雲雀先輩は振り返った。
「なんのようですか?」
嫌な予感を押し隠しながらも、私は聞いた。
目の前の人は、少しだけ沈黙して私に何かを投げつけた。
受け取ってみれば。
「・・・これは」
「それは、君のだろう」
私の手の中には、昨日怜奈に渡したはずの風紀という文字が入った
腕章があった。
信じられない。
これが、どうして自分の手のなかにあるかという答えを考えてぐるぐる回る。
信じられない。信じられない!!
きっとこれは夢だ。
いいや、違う。腕章を握れば布の感触。
頭に感じる突き刺さる視線。
夕方で、どこの部活も活動しているはずなのに
外から声が聞こえない。
ひどくしずかだ。
自分が、いつまでそうしていたか。分からない。
けど、雲雀先輩の声が響く。
「風紀委員長は、僕。だから、君を辞めさすことが出来るのは、僕だけだ」
だけど、この行為は怜奈を否定する行為、それを分かったうえで?
・・・雲雀先輩は馬鹿じゃない。
どうして?と問いかけてしまえば、もうきっと戻れない。
「そうですね。雲雀先輩」
真っ直ぐ前を見ろ。私。
どうせ、涙なんてでない。
「では、風紀委員を辞めさせていただきます」
赤い腕章を、ピインと伸びきった腕を雲雀先輩に向けた。
そして、お辞儀をしてドアをしめ、武くんの部活に間に合いそうだから足を動す予定だった。
けど、現実では一歩も足を動かせない。
視線で人を止まらすなんて、つくづくこの人は規格外だ。
つぅーと冷や汗が流れてないだろうか。
自分では、確認できない。
ああ、そろそろ行かせてくれないだろう。
こんな顔が整っている人物を、なんで見つめあわなくちぁいけない。
段々、気恥ずかしさも出てきた。
そんな時、雲雀先輩が発した声に一瞬すべてを忘れた。
「」
絶対、口が開いている。
あの唯我独尊。俺様何様?独裁学校!ヒバリサマ
とまでのイメージがある人が、え、もしや幻聴?
「、僕は君をそう呼ぶ。
だから、君も好きなように呼べばいい」
やっぱり言っている。けど、意味がよく分からない。
「言っていることが、繋がってません」
そういえば、雲雀先輩は呆れた顔で続けた。
「は、相変わらず馬鹿だね。
君は、僕の所有物だから。だれかに渡すなんてことしないし、
どこかへ勝手にいくことも許さない。
なんせ、君は僕のだから。分かった?
馬鹿だから、何度も言うけど君は僕のなんだよ。
さっさと、お茶淹れてきて」
「私は」
言葉を途切れさす。
「その受け入れは却下。さっきの聞いてた?
三回言わないとわかんないほど馬鹿なんだ」
「・・・・・・」
貴方は、完璧プリンス。
「返事は?」
顔を近く、返事を求めれる。
それと違う声が聞こえた。
「ヘンジ〜ヘンジ〜」
以前見かけた黄色い鳥が、無謀にも雲雀サマの頭の上に座った。
内心ひやひやとあせあせと和みが混ざり合ったが、
雲雀サマは、好きにさせている。
そうか、以前見かけたことがあると思えば応接室にこんなんいたよ。
「それ、雲雀先輩のペットだったんですか」
それにしても、鳥に鳥とは、可愛らしいですね。
との言葉を押し隠して言った。
「恭弥、君がいいたい名前はそうでしょう?
それと、返事。二回も言わすなんていい度胸だね」
ああ、そうか三回言わないと駄目なんだっけといいながら、
懐からトンファーをだす。
叩けば、少しはなおるかな?なんて小さく言いながら
チャキと音を鳴らした。
それと、同時に思い出す痛み。
いつの間にか、私は肯定の意味を口にしていた。
「・・・・・・はい」
雲雀先輩・・・もとい恭弥先輩は、なかなか見られない
笑顔を見せてそれから、
「じゃ、昨日の分も含めてそこにある書類とそれと
地獄の言葉を吐く。
どうみても二山ある。一日で増える量ではない。
どうやら、いささかお怒りのようだ。
お茶淹れて」
本当に、参ったね。
貴方にとって私は、所有物。
私に無理難題をいうそれを我が侭だと思わないプリンスは、恭弥先輩だけで・・・あって欲しい。
ねぇ、雲雀先輩。
私に、昔を思いだたせないで今を押し付けてきたのは、貴方だけでした。
2008.12.17