とうとう首です。と苦笑ともつかない笑い方と
首付近を指で横に一本線を入れるジェスチャーをして、
私は今フェンス越しで彼の背中を見る。
言ったときと同じ背中。
でも、何か違う。
白く服が汚れた数だけ頑張っていた証拠。
いつもいる隣の背中が、誰かと共に頑張っている。
私は、捻くれているから武くんが一人でないことを、喜ばしく
そして・・・遠くにいる君ならば、私はいなくても大丈夫だと考える。
私を守りたいといってくれた人に、私はつばをはくんだ。
そして、誤射して真上に吐いて自分の顔にかかる。
それも、すべて知っている。
目を逸らしたくなるけど、武くんはちらりとこっちをみて笑うから
目を逸らすことはできない。
時々、フェイントをかける。
うかうか、していられないのだ。
私の醜い感情を知られてはいけないから。知られてはいけない人だから。
私を守りたいといったのは、君だけでした。
私の傍にいてくれたのは、あの人だけでした。
私に絶対の忠誠を誓ったのは、あの人だけでした。
私を憎んだ人は、なんと、とても大勢います。
なら、貴方は私にとってなんなんでしょうね。
ねぇ、雲雀先輩。
私は、次の日携帯が光っているを発見した。
白い機体が、一部青く淡く光っている。
いつもと同じ時間に起きてしまったから、もう一度寝たのがいけない。
頭が働かずにのろのろとそれを開いた。
二通。
カチっとボタンを押して開く。
一通は、武くんから、
もう一通は、貴方からだった。
武くんは、昨日の話とそれと今日もこれないかというメールだった。
彼らしく、軽快で少しだけ長めのメールだ。
あとのは、
貴方らしい。一文。
『応接室に夕方、来て』
パタンと携帯を閉じれば、すべて忘れそうな気がした。
けど、残っているから始末が悪い。
また開いてフォルダをあければ、元通り。
じっと、眺めて。
私はため息を吐いて、メールを送信した。
『行けません。ごめんなさい』
ゆっくり届くように、枕で携帯を隠してから送信ボタンを押した。
その姿に、久しぶりに朝ごはんを作っていた鏡ちゃんに目撃された。
「・・・・・・」
「・・・・・・おはよ」
化粧もしてない鏡ちゃんは、自前の長い髪を後ろに括って
いつもの赤い服は、白いシャツとジーンズだ。
髪は、漆黒の黒でこういうのを、夜空のとばりというのか、と納得できる。
目も同じ色。大きさは、顔にあってちょうどいい大きさで
唇の薄さも、鼻の高さも、日本人男子として美形に入れられる。
その上に高い身長に、手足は長い。
うん、いい男だ。
たとえ
「・・・ちゃん、それで、遅くなるとか思っているようだけど
そうね、前も言ったわね。
高くしても早く届かないし、低くしても遅くには届かないのよ!!」
たとえ、女口調でも。
枕の下で、送信しましたの画面が映る。
2008.12.17