夢を見る。
また、この夢。
なんでこんな夢をたて続けでみなきゃいけないのか?
建物が炎に包まれる、手は真っ赤だ。
炎じゃないそれを女の子が笑っている。
あれは、小さい頃の私。
振り向いて私に言う。
・・・・・・
分かったよ。分かってるよ。私が全て悪いんだ。
フィードバックしていく画像。女の子が最後まで言い続ける。
耳を手で塞いでも無駄なのに、私は必死に塞いだ。
小さくなる女の子。赤から黒へと変化する。
そして、
「、!」
私の頭の上で叫んでいる武くん。
それでやっと夢であったことに気付き安心する。
「、さっきから呼んでも返事ねぇーし・・・まだ体調悪いじゃねぇか?
ほら、こんなに汗もでてるし保健室いくか?」
そういって、触れてくるゴツゴツとした武くんの手。
武くんの手は、野球のせいか何回も豆がつぶれて硬くなっていて
おせじにでも気持ちいとは言いがたい感触だ。
けど、温かくて生きているものの手だ。武くんらしい手だ。
私は、その感触に浸り瞳を閉じかけそうになったが、
これ以上心配はかけられないので、根性で目を開いて
笑って 「大丈夫」という。
この言葉は、いつも大体の人を納得させる言葉だが、
彼はお気に召さないようで
むすっと拗ねた顔をして、とうとう私を教室から連れ出した。
大きな手が私の手首を掴んで、保健室のベットに無理やり座らす。
重い沈黙が続いて、武くんらしからぬ行動に慌てていたが、
どう喋りかけていいかわからない。
そう苦悩していると、武くんが私の手を両手で包み込んで真っ直ぐ私をみた。
「、俺じゃ頼りにならねぇか?・・・俺じゃ駄目なのか?」
彼が普段しない必死の顔に私はどれだけ彼に心配をかけていたか知った。
彼のその姿に、心ときめかないわけもない。
けど、頭の中に夢がちらついた。
本当は、すべて言ってしまいたい。
自分のしてしまった過去や今の自分のことや全てのことを言ってしまいたい。
言っても彼なら受け入れてくれる。
そう、感じた。感じてしまった。
あの日から数年間ずっと独りで、もういいじゃないかともう一人の私が叫んでいる。
けど、小さな私が笑う。
『今度は・・・この人?』
びくっと反射的に手を振り下ろす。
そのときの彼の顔に、しまったと感じた。
そして、すぐに、戻っていく顔をみて・・・ああ、傷つけてしまった。
彼はいつも通りの声で雰囲気で
「なぁんてな!でもな、ちゃんと具合が悪かったら俺には教えてくれよ」
ごめんなさい
「ん、と汗かいてったってことは、熱か?ほれ体温計」
ごめんなさい ごめんなさい
「俺さ、怪我ばっかしてっから、こういうの詳しいんだぜ?」
ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
「知らなかったろ」
ごめんなさい どこまでも酷く優しい人
私は、笑う。
「ええ、知りませんでした」
そういって、笑う。
笑いあう二人は、両方とも泣きたいのを堪えて
それでも周りから見れば、仲良く笑いあっているようにしかみえなかった。
熱がなかったものの、体調を考えて山本はに寝ているように
布団をかけた。
無理やりで、彼の優しさには笑うと
出て行く山本に声をかけた。
「私、風紀委員クビになったんです」
山本の大きな背中が、そのまま止まった。
2008・12・16