夢を見た。
横の部屋を真っ白な壁を叩いていた。
反応はない。

ああ、何をしているんだろう。
だって、もう彼はここに現れない。
それを理解したときによみがえる桜。

白い桜が紅く染まる。

そう、私の罪の証。




久しぶりに見た夢に、なんの感慨もなく、
ただ、朝だ、起きなくてはと思う。
外は、まだ朝日が昇ったばかりでうっすらとした夜明けだ。
は、何も言わずに窓を開けた。
風が頬を撫ぜる。
髪が飛ばされていく。
空気が新しく、自分の匂いを消していく。
昨日、シャマルと喋ったせいなのか。こんな夢を見たのは。
と、人のせいにしたくなる。
本当に、情けない自分。
だってあれは誰のせいでもない
あの夢は、私の過去だから。


前兆だって知るのは、いつだってそのことが起こってからなんだ。
未来をみることなんて出来ないから。
もし、手に入るとしてもそんな能力いらない。
回避できない事実を、残酷な現実を、二度みてどうするの?
私は弱いから、一回で良い。それ以上は壊れてしまう。
ああ、こんなセンチなのは、久しぶりに愚かな優しさに触れてしまったからか。
・・・また人のせいだ。
嫌になる。
世界よ、この性格を消して!
そしてできれば、目の前の現実も消していただきたい。


「聞いてるの、ちゃん」

そういって覗き込んでくる妹。
朝の仕事が終われば校舎につれてこられた。
怜奈らしくない行動に不思議に思いつつも、はついていった。
その間、思ったことといえば、怜奈が自分にやきでも入れるつもりか、という一点のみ。
怜奈は強い。
はっきり言って彼女の蹴りをくらってちゃんと授業に出れるかは怪しい。
彼女の蹴りの威力は、確か仕込みおもしがついているだろうから
・・・岩は簡単に壊れるだろう。粉砕とも言う。
今度こそ真面目に保健室のベットに横たわり続けるしかないかと覚悟していた。
だけど、本当は怜奈が自分に攻撃してくるときは終わりだと知っていた。
それは、すべての崩壊で、彼女はそれを嫌がるだろう。
怜奈は私を嫌っていても、どこかで唯一の家族
・・・血のつながりを信じているから。
彼女は、一人ぼっちを嫌う。
正反対の生き物だ。


ダン。
横の壁に穴があいた。足型に。
パラという音に冷や汗をかく。
いつの間にかどこかへいってたらしい。
怜奈を見れば、むくれていた。

ちゃん」

「え〜なんでしょうかちょっと・・・あれなんですよ。!お、女の子の日でして」
だから、何だというのだろう。
けど、これで大体は(男性)納得する。
あ、怜奈は女だ。

「だから、何?」
案の定言われた。


そっからは、まくしたてだ。滝のように言葉が流れる。


ちゃん、私は、真剣に話してるんだよ」

「お願いだから、もう応接室に来ないで、風紀委員を辞めて」

「私と恭弥さんを、二人っきりにして」

「ね、いいでしょう?」

「だって、ちゃんには武くんがいるんだから」

「いいでしょう?」


武くんがいるから、何がいいんだろう?
その疑問は投げかけられないまま私は袖に付いた腕章を渡していた。



校舎裏。私はまだ動けない。
なぜ、動けないんだろう。

「いいのか?」

急にでてきた声には驚いた。
けど、その人物をみては安心した。
黒い帽子にくりくりの目、カメレオンにスーツ。
一時は嫌になるほど見続けていたもの。

「リボーンくん、なにが、ですか?」

これが、他の人だったら違う受け取りをする。
雲雀がに取られるから心配した怜奈みたいな風に。

「いや、俺でもそうみえた」

「・・・読唇術ですか。いい趣味してますね」

「ふん、なかなか読ませないくせに、よく言う。
そんなに、さっきのはきいたのか?」

何を。と誤魔化そうとしたけど目の前の凶器に、負けた。

「・・・きくもきかないもありませんよ。
怜奈と雲雀先輩の仲を引き裂くわけないじゃないですか」

「そうだな、仕掛けた本人がそれをおしまいにするわけないな」

リボーンはにやりと音がつきそうな顔でをみた。
が、その顔からは笑みが消えることはない。
リボーンは気付く、彼女は、知っていることを知っていた。
舌打ちしたい気持ちを隠してに話しかける。
揺さぶりつもりだったが、が知っているのでは、意味がない。
今が、チャンスなのだ。
こんなにも、弱っているは珍しい。
揺さぶりが駄目なら、真正面から聞くしかない。
リボーンは銃口をの額に標準をあわせた。

「お前は、怜奈に何をしたんだ?
妹というには、怜奈はお前を嫌い。お前は怜奈を大事にしずぎる。
京洛家の前当主が死んだ前後の時間の空白
お前らの家族は本当の死んだ理由はなんだ?答えろ、

それでも、は笑ったままだった。
いっそ見事だ。

「全てを知ろうとすると、いい死に方をしませんよ」

「ちゃかすな」

「そうですね、一つだけならお答えできます。
私は怜奈の全てを奪った。
だから、それを補うだけ。だからこれは償いです」

それからチャオと下手糞なイタリア語を言って、は出て行った。

「チッ」

リボーンの舌打ちだけが校舎裏に響く。
口では、敵わない。
だといって、力でねじ伏せることも出来ない。
自由、一番彼女に与えてはいけないものだ。
だから、雲雀に鎖を握らせた。
骸戦でも分かったことだが、まだそれでも足りない。
は雲雀を捨てれる。
あの時は、どうにかギリギリラインで繋ぎとめられた。
もっと、捨てられないくらいにして欲しい。

リボーンは、携帯を取り出した。
かけるのはもちろん。

「雲雀、話したいことがある」


今、離れられたら困るんだ。
じゃないと、彼女は脅威でしかない。
口でも、力でも、屈せず、独りであり、死を怖がらないものを
脅威じゃなければ何というんだ。




2008・12・12