本当はね。
ちゃんと分かってたの。
だけど
心と体は違くて、声を張り上げて君を求めた。
その思いが、恋でも愛でもなく、ただの我が侭。
彼がいなくなってしまえば、私は一人ぼっちで孤独になってしまう。
私が君を求めたのは、自分のため。
君のためなんてすっこしもないんだよ。
だって、君のためを思っていたなら、私はなんとしてでも君を諦めさせただろう。
太陽が眩しくて、空気を吸うことすら億劫で
それが私に生きていること実感させる。
ここは、真っ白だ。
あの場所か、と望んだんだけど違うことなんて分かっていた。
手をかざせば、自分の血管が透けた見えた。
赤いのに青く見える血に、吐き気を覚える。
なんで、自分がここにいるのか。
その原因が、立っていた。
いつからそこにいたんですか。と軽口を聞けるほど今の私に余裕はない。
笑えないんだよ。
そう思っていても、常にやっていることは脳から、指令が来る。
笑え、笑え!
その結果。私は笑った。
とても、見られたもんじゃない。けど、もうどうでもよかった。
先輩は、その姿に肩を動かして、いつもの格好から見える包帯の跡。
私には、なにもつけられていないのにどうしてだろう、えぐられた様な気がする。
先輩は、肩に学ランを引っ掛けているのに、落とさないという芸当をする人だから。
歩き方は、人よりも静かだ。
そういえば、骸も静かにと言うより、わざと気配を消して驚かすのが好きだった。
目の前に、いるのは先輩なのに。
いなくなってしまった人を望む。それは、人の性だろう。
急に、温かいものを感じた。
なんだろうと、思えば視界は白と黒だ。
これは、一体なんだろう?脳に指令を送ってみる。
脳は、命令はしてくるくせに返答をよこさない。
備わっていた鏡を見て、
なんだ、私は先輩に抱きしめれているのかと理解した。
意味を知らず、ただ理解だけをした。
「・・・僕を恨むかい?」
普段傍若無人な先輩が、小さな声で私に聞いた。
何で恨めというのか。
貴方は、正しいことをしたのに。
私は、ただ逃げていただけなのに。
すべて、ぐちゃぐちゃにしてどっちつかずな自分は、
この世界が地獄で、そこに居続けていたからいきなり来た幸福を恐れたんだ。
私は、まだあのときのまま。
自分の中の時間は止まったまま。
ふわりと、カーテンが揺れる音がした。
そこから、風の匂い、食べ物の匂い、人の匂い、鳥の声、木々の声
すべて溢れていた。
現実の時計は、秒を刻むたびに音を出している。
は、答えた。
雲雀の胸の中で、目も閉じず、目蓋さえ動かさずに。
「・・・いいえ」
逃げてはいけなかった。
もう向き合って生きなければならなかった。
カチリと、自分の秒針が現実の秒針と重なった。
「ありがとうございます」
ああ、けど本当は、骸と共に堕ちていきたかった。
とうとう私は、世界で独りになってしまった。
ねぇ、先輩。知ってますか?
人は、とても弱くてそしてどうしようもないから、自分を知ってくれる人を求めるんです。
理解者が一人でもいれば地獄だろうが・・・生きていけるんです。
手は、もう冷たい。
握っていた手はいなくなった。
そのかわりに、今はやけに体が温かい。
2008・11・30