私は弱い。だからこそ絶対なる力に憧れる。





「雲雀先輩待ってください」


「うるさい黙れ」


もはや並盛中の名物となっている光景に周りの誰もが微笑ましそうに見ている。
今日も彼女の悲痛な声が響いている。




「先輩 はい」

「なにこれ」

「調理実習で作ったカップケーキです」


は、にんまりと笑って雲雀の前に出した。
綺麗にラッピングされている中身は形が崩れることもなく
色もちょうど良いキツネ色で見るからに美味しそうなものだ。
雲雀はそれを一瞥するとまた書類に目を戻し一言。


「いらない」


は大したダメージも受けずに、雲雀の前にカップを置いた。


「そんなこと言わずに、はいコレ先輩の好きな紅茶と共に」


カップからはいい香りがふんわりと香っている。
常日頃使えないの最大の賞賛出来る点は彼女のいれるお茶が自分好みということだろう。
雲雀は、書類を置くと紅茶に手を伸ばした。
言うとおりになるのはしゃくだがそれよりものどの渇きを潤すことのほうが優先的に勝った。
必然的にの作ったカップケーキも食べるとほのかに甘く紅茶によくあった。
雲雀の食べる姿ににこにことは微笑むだけで、
言葉一つかけない雲雀に何を聞いてくるわけでもなく
手元に置かれている書類を黙々とやり続けていた。
そんな姿にいつもなら怒りがこみ上げてくるのに
今日は口の中に広がるほんのりとした甘みがそれを和らげた。
夕日がガラスを照らし、どこかで部活している声と消したり書いたりしている音だけが響いている。
彼女は何時までたってもなれない書類に悪戦苦闘しているんだろう。


「キミは僕のどこがいいの」

ぼうっとした自分の口から信じられない問いかけがでてきた。
なかったことにするのもなんとなく居心地の悪いものを感じた。
止まった音がやけに静かに感じる。

「強いところです」

いつの間にか再開した音が彼女が言った言葉だと伝わる。


「そう」

「先輩はなかなか私のことを好きになってくれませんね」


「嫌いだからね」


「そうですか。じゃもっと頑張ります」

えへへと音が出そうなほど馬鹿面で笑った。
馬鹿だよね。君は。


ゆったりとした時間を壊すのは忍びなくてトンファーを出すにはめんどくさくて







今日はなぜだか機嫌がいい
やはり男はなんだかんだいって食べ物に弱いのか?雲雀先輩は例外だと思っていたけど。
よし。


「そうだ初めの一歩に雲雀先輩から恭弥先輩に変えてもいいですか?」


「・・・・・・咬み殺されたい?」

やはり例外だった。先輩の目はいつもどおり肉食獣の目をしていた。


「ダメですか。うぅ〜やっぱ目標は遠い」


「馬鹿でしょ」


呆れたように切れ長の目が私を見る。


「はい 恋は盲目 馬鹿にでもなんにでも」

「キミみたいな馬鹿は死んでも治らない」



その通りです。
死んでも生きても変わらない。
神様はしっているんですよ。

神様助けて。と救いを求めることしか出来ない私がいかに醜く哀れかを
神様を信じてないのにその言葉を言う私がいかに卑劣で惨めかを

そんな私に
誰が愛を、救いを、くれるでしょうか?


だから

死んでもなおりはしない。







2008.5.11