不思議国のアリスは、夢で冒険をし、最悪な最後で夢から覚める。
彼女には、現実と夢の境目が分からなかった。
まるで、今の私だ。
ここが、現実なのか夢なのか分からない。
ずっと続く白い部屋の扉を、永遠に開き続けている。
不思議国のアリスは、夢で冒険をし、最悪な最後で夢から覚める。
だから、私も願った。
目が覚めて、ああ、良かったと思えるような現実を。





「こんにちは、僕が六道 骸です」



ツナの言葉により、フウ太を開放した。
ようやく彼らは骸を、じっくりみることができた。
そして、骸の膝にいる人物に気付く。
熟睡しているようで、顔は膝に隠れてあまり見えないが、
ふわふわとした髪が揺れている。
さぞかし触り心地がいいだろうと、不謹慎ながらにもツナは思った。
白い肌に、茶色の髪、
そして並盛中の制服が、骸の制服により際立って目立っていた。
その服を見て誘拐を考えたがツナの直感が告げる。
そうではないと。
彼女を見るたびに、ピントがあっていない気持ちになる。
どこかで、見覚えがあるのだ。
どこだったか。ツナが頭を悩ませている隣で、怜奈は、小さく何か呟いた。
それから骸の膝にいる人物を凄い形相でにらみつけ、叫んだ。

ちゃんは、うらぎったんだね」

「・・・えっ」

ツナは、怜奈の言葉に振り返り、骸の膝の人物を目を凝らしてみる。

「京洛さん?」

ツナの中のぼやけていたピントが、はっきり映っている。
そうだ、あの人は、京洛 だ、と。
そういえば、彼女が髪を下ろしたところは見たことがなかった。
だから、なかなか彼女だと分からなかったのだろう。

「・・・誘拐?」

ツナは、自分よりも小さな家庭教師に目をやる。
くりくりとした黒い瞳は、何もうつっていないように見える。
リボーンは、ただ沈黙を貫いた。
ツナが、リボーンに何かを言おうとするよりも先に、怜奈が口を開いた。


「ツナ君。ちゃんは、自分から行ったんだよ」

その言葉からは、憎悪しかなかった。
骸は、怜奈をみると笑い。

「おや、おや貴方は、・・・の妹でしたか?
実の姉だというのに酷いいい草ですね」

「うるさい、私はそんなやつ姉だなんて思ってない!!」

いつもと、違う怜奈にツナは唖然としながらも
どこかで合わないピースが徐々に埋まっていくのを感じていた。
日常から、ずっと思っていた姉妹の空気。
ことあるごとに、山本が、に怜奈を引き離す行動の意味をようやくツナは理解した。
憤りたっている怜奈を、骸は上から冷たい視線を浴びせた。
ずっと張り付いていた笑顔が一瞬消えた。
怜奈は、ビクリと体を震わせたが、ぐっとこらえて骸を睨み返した。
骸は笑顔を戻すと、の髪を撫でた。

「さっき、貴方が言った裏切りは違いますね」

「どういう」

は、最初っからボンゴレではないでしょう?」

スッと、細められた目は、リボーンに向けられている。
リボーンは、何も言わずじっとに見続けていた。

は、僕とずっと一緒ですから、彼女が君たちを選ぶはずがない
彼女が僕のそばにいるのは、当たり前なんです」

撫でられることにより、の顔が見えた。
ツナは、どうして彼女だと気付かなかったのか、顔をみて分かった。
彼女の空気が違う。
ツナは、どうして彼女が誘拐だと思えなかったのか分かった。
怜奈ととは違う。二人の間に信頼が見えたからだ。
現に、をなでる骸の瞳は、犯罪者というにはあまりにも優しい。

ツナはなぜだか、その二人の姿を見て唐突に思い描いた人がいる。
本当なら、山本だった。
彼は、を友人以上に思っていることにいくら鈍いツナですら気付いていたから。
しかし、ツナが思った人は・・・。

部屋の扉に、二人の男が支えあいながら入ってきた。
その一人の男。
すべてが黒ずくめで猫を連想される人物が、ギラギラと肉食獣の目で骸の前に現れた。

その男は、雲雀 恭弥







2008.11.20