無邪気に笑ってる彼女がとても嫌いだった。
昔、そんなことを思ってた自分をぶん殴ってやりたい。
コツコツ
ハイヒールの音が響く。
場所が夜の繁華街ならば似合ったであろう
その格好は、中学という場所にはふさわしくなかった。
太陽の日差しを嫌う、サンブラス
露出が激しい赤い服
赤い高いヒール
赤いルージュ
すべてが赤いからだろうか、肌の白さが際立った。
女性というには、あまりに大きくがっちりとしたその人は、
応接室と書かれた場所で止まった。
「ここね」
女の声にしては低い声が響く。
サングラスを取れば、真っ黒な目にマスカラがばっちりついた顔。
並盛生なら萎縮して音も立てず逃げだす、その扉を遠慮もなく開けた。
「え、なんであなたが」
二つに括った髪を揺らして心底驚いた顔の怜奈は、その人物をみた。
その人は、にこやかな笑顔で。
「あら、久しぶりねぇ怜奈ちゃんV」
ウインクまでつけた女装している男の仕草に怜奈は、様になっていると思った。
日常からやっているのだろうその仕草は流れるようだと。
そして、彼をここまで変えてしまった人物を思い怜奈の顔は自然と強張った。
「君、誰」
その様子を見ていた雲雀は、その人物を睨んだ。
ここ最近雲雀の機嫌は最高潮に悪かった。
並盛中生が襲われて、自分に喧嘩をふっかけてきているのだ。
しかも、そのなかで使えない雑用はどこかへいなくなった。
捕まっている。それを考えることも考えさせる原因もすべて雲雀には気に食わなかった。
その人物は、そんな雲雀をじっとみて。
「うぅーん、可愛い子ね」
「誰って聞いてるんだけど」
「私は、鏡よ」
鏡、雲雀はどこかで聞いたことのある名前に少し反応した。
彼は、京洛 の家族の作文で出てきた。
「鏡さん、あいつは」
怜奈が、鏡の横を睨んだ。誰もいない。しかし、怜奈には見えていた。
自分の目にそっくりな(嫌なことに)姉を。
「怜奈ちゃん」
鏡の声が変わった。低く鎮めるような怒気をはなっているような声だった。
怜奈は、悔しそうに顔を歪めて応接室を出て行った。
部屋の中には、鏡と雲雀だけだ。
静か過ぎる部屋の中。口を開いたのは雲雀だった。
「あの子は、どこにいるの」
鏡は、その言葉に反応するように雲雀の目をじっとみて、
「私もそれを聞きにきたのよ」
鏡の顔は、絶望とそしてどこかこうなることを理解しているような顔をしていた。
そして、これで話は終わりだとばかりに鏡は雲雀に背を向けた。
扉を開くと、鏡はとまり雲雀を見ていった。
「貴方も、私もあの子の傍には近づけなかったのね」
誰もいなくなった応接室で、破壊音が響いた。
2008.11.11