久々にきたこの場所は
やっぱりとっても綺麗で
なにもない真っ白
全てを受け入れて全てを否定している色

彼によくあうと口にしたら
あなたにもよく似合うといわれた

ここに自分一人立っていることはまずない
ふわりふわりとありえない無重力を楽しめば

目の前に彼がいる
驚かない私に
驚かないあなた

久しぶりと言えば

色々忙しくて

お互い様

そんな言葉を交わして
彼は私をジッと見ていう

そのうちあなたを驚かせてみせます
にっこりと笑うその笑顔に
一般人なら感じる悪寒を私は最大の笑顔で返す


そう 楽しみ

私はあなたになら殺されても別になんともない
いいえ殺されたい

もうこの世界で生きてるのは苦痛でしかない
そういえば彼は私を殺してくれるかもしれない
けど

遠くで私を呼ぶものがある
近くで私を縛る存在がある
だから

口をつぐんで私は笑うんだ

その姿をあなたが悲しむわけでもなく笑ってくれる
醜くて弱い私を受け入れてくれる
この場所が現実だったら
私は私でなく
私は私になる

この場所が虚像であるがゆえに
私は私でなく
私は私になれた


遠くから聞こえる
蝉の命を燃やしきる切ない声
生暖かい風の感触
遠くから私の名前をか細く呼ぶ音

ああ、帰るのか
帰らなくてはいけないのか

ここのところ、ずっといいえ、あの桜の日から
私は現実を恐れている

彼が手を伸ばす

さぁおかえりなさい

私は彼の手をしっかり握る

死神のような冷たい手だけど
私の手はもっと冷たいから

ここにいすぎてはならない
まだ

まだ

繰り返すつぶやく自分に
彼は黙ってただ手を握っていてくれた



ねぇ、どうしてかな。もう、だめなんだ
そんな予感がするの

こわれてしまう

私は私の手を握っている彼をジッとみつめる
浮上していく体
音が感触が感覚がリアルになる

ずんと一気に覚醒する
目は手を見ていた
手のなかには自分の汗だけしかなくて
そんなこと当たり前で、あの人がいないことも分かっているのに
でも願わずにいられない


こわれるくらいなら、いっそうこわして、と。







2008・8・10