京洛 は、嘘つきだ。
僕に、嘘をついた。
きっと殴っても、何しても彼女は、そうだと認めないだろう。
京洛 怜奈は、素直だ。
僕に、嘘だと分からせてくれる。
彼女の「好き」とあの子の「好き」の差を。
「ねぇ、雲雀先輩、私と付き合いませんか?」
絶対お得です。と言ってくる彼女は、真っ直ぐで、僕のイライラを落ち着かせてくれた。
だから、
僕は答えた。
別に、苦しめばいいと、思ったわけではない。
僕は、そこまであの子のことなんて少しも考えちゃいない。
京洛 怜奈は、使える人間で、
頭も、喧嘩も、そして顔も性格も悪くなかった。
だから、
僕は答えた。
僕が、名前を呼ぶのも名前を呼ぶことを許したのも、
別に、あてつけじゃない。
したいといっていたあの子の事なんて思い出したりなんかしない。
あの子が来なくなった応接室に、変わりに怜奈がいて
うるさいのがいなくなって使えないのが、いなくなって清々してたんだよ。
思う存分、僕と怜奈は好きあえた。
ねぇ、それなのに。
どうして?
なんで、君は今。
僕の名前を呼ぶことを辞めて、違う男の名前を呼んでいるのか分からない。
なんで、君の名前をその男が呼んでいるのか分からない。
僕は、移り気はやいねとか、頭が軽いと尻も軽いのかい?とか言おうと思ったのに・・・。
僕を見ないで、僕には見せないような柔らかな笑顔を見せたから。
「京洛 」
「君ってよくさぼるよね」
「君は風紀委員でしょ?」
君を、引き止めるようなことを言ったのは、赤ん坊とのやり取りを思い出しただけ。
ただ、それだけ。
だって、僕には怜奈がいる。
僕は、彼女が好きなんだから。
2008・12・3