いなくなった。
あの子がいなくなった。
けど、世界は変わらずに動き続けて、
天気も変われば、
並盛狩りなんて始まって、
怜奈の機嫌はどんどん上がって、

そうだ、この前山本 武が来て、
京洛 の場所を聞きにきたよ。
僕は知らない。っていえば、そうか。って納得して帰っていった。
ごねるかと思ったのに、簡単に帰って行ったよ。

あの男は、あの子に対して執着心が強かったから。

変なの。

変といえば、
あの子んとこの鏡ちゃんとかいうオカマ?が来たよ。
怜奈はオカマと知り合いだったらしく、オカマの殺気に
機嫌を悪くして帰った。
なかなか強いオカマだ。
このごろ、イラついているから相手になった貰おうと、思ったけど
使えない奴のことを思い出して

「あの子は、どこにいるの」

そう聞けば、オカマはやっぱりという顔をした。


「私もそれを聞きにきたのよ」
「貴方も、私もあの子の傍には近づけなかったのね」


僕は、近くにあったものを壊した。
壊して壊して、すべてなくならせようとしたのに、
あの子の使っていたポットとかカップとか見て手を止めた。
いなくなって、清々している。
これで、僕はいつも通りの僕でいられる。
そう思ったのは、いなくなってから二日も持たなくて、
草壁の入れたお茶も、怜奈が入れたお茶も何か違くて、
自分でいれても違う。
いなくなったほうが、こんなにも僕を狂わせるんだ。



「委員長」


草壁から、このくだらないゲームの主犯者の場所を告げられる。
僕は、ボロボロになった応接室を直すように言うと、そのままその場所へと向かった。



主犯者は、黒耀中の生徒で、
クフフと笑う変な髪形のすべてが気に食わない奴だった。
それよりも、なんで君がそんな奴の膝に寝ているのかも分からない。

桜が舞って僕は倒れて、
そんなときにも君を想う。目をあけてこっちを見て欲しい。


白くてほこりくさい部屋で、
僕は目が覚めて、
あの子のへの気持ちが分かったんだ。

なんで、
なんで、あいつが僕じゃなかったのと考えたのか。
僕は、生まれ変わってもあの男にはなりたくない。

ただ、

僕は君に選ばれたくて、
僕は君の傍にいたくて、
君があまり人に見せない姿を、
他の男に見せたくないし触らせたくもなかった。


窓から、気配を感じれば黄色い鳥がいた。
黄色い鳥は、呼べば簡単に来て、僕は校歌を教えた。
僕の名前を、呼ぶ鳥の声で、

他の男の名前を言っている君を思い出して、
ムカついて、
他の男が君の名前を言っているのを思い出して
もっとムカついた。


いつのまにか、鳥は君の名前を勝手に覚えた。

僕は君の名前を言っていた。



呟くけど、届くはずもない。





何度も、呼んだ。

ああ、そうだね。僕は、君が
君が欲しいんだ。






2008.12.21