「一緒にバスケしよう」
火原先輩のにこやかな笑顔で言った、いきなりすぎる発言。
けれども、いいですよ。と答えたくなる。
決して後ろに犬の尻尾がみえているわけではない。
は、火原先輩の笑顔を
直視したからなおのことだろうとみれば、
これまたにこやかな笑顔では言った。
「いやです」
・・・はっきりと断りすぎだ。
しかも、一瞬目がマジだった。
あ、火原先輩が徐々に尻尾と耳が垂れて
こっちを向いた。
「つ、土浦〜」
泣きつかれた。
はっきり言って、犬みたいだけれど、男の人間に抱きつかれて
喜ぶ趣味はない。迷惑だ。
しかも、周りに人が集まってきて俺と火原先輩を指差して
何か言っている。
ち、違う。
俺はホモじゃないし泣かせてもいねぇ!!
離そうとするが、染み込んだ体育会系の血で、先輩に強く出れない。
「は、離れてください」
そう、いうのが精一杯だ。
しかも、は食い終わったらしく席を立とうとしている。
そもそも、おまえが原因だ。
俺は、の腕を掴んだ。
「・・・離してくれないかぃ?壁」
「土浦だ・・・ってそれより、お前出ろよ」
「イヤ、ケガヨクナイ」
目が、あからさまに違う方向を見ている。
ここまで、綺麗にウソをつかれるとすっきりする・・・わけない。
「面倒なだけだろうお前!俺に、お前はプリンをおごったぞ」
口元にプリン欠片をみて言う。
どうにか止めることに躍起な俺。
先輩は、なかなか離さないし、どうみても周りには円ができている。
「小さいな〜壁。いや、大きいけど。
そんくらい、いやいいですよ。
ぶつかってしまったお詫びですからくらい言って欲しいね」
確かに、あまりにも女々しい。
けど、そこまで追い込まれているということだ。
それに、そんな小馬鹿にされたら言い返したくもなる。
「お・ま・え・がぶつかったんだ!」
「お前ではなく、 という名前がある
脳まで小さいのか・・・いや、いや?」
「お前だって、俺の名前覚えないだろう」
「まぁ、二人で頑張って下さい」
いつのまにか、手から腕が消えては違う方向を向いた。
「ちょちょっと待て!プ、プリンもっと食わせてやる」
一か八かで言ってみた言葉で、はこっちをみた。
「え〜味飽きたなぁ」
お前、さっきまでバカバカ食ってただろう!
けど、これはチャンスだ。
「分かった。違う日に2個やる」
「・・・・・・さっきのよりもうまいのがいいな」
「分かった」
「ああ、あと4個で」
・・・お前、どんだけだよ。
それから、は俺のさっきまでの苦労がなんだったのかと
追い詰めたくなるほど至極簡単な動作、
俺に張り付いている火原先輩に嘘くさすぎる笑顔で一言。
「ウソですよ。・・・先輩。やりましょう」
「えっ、ヤッター」
すると、火原先輩は手を離した。
今までのやり取りを聞いていなかったのか?
この人は。
・・・・・・・・・・・・なんだ、この報われない感じ。
しかも、俺だけ、損してないか?
2008.12.22