誰もいない音楽室で練習するのは、とても楽。窓をきっちり閉め切って自分の音だけを堪能する。
今はユメはなかなのかそれとも起きているのかそんなこと分からない。
昔どっかのじいさんが言ったように、私が見ている夢なのかそれとも蝶が見ている夢なのかとね。
随分綺麗なことをいいじいさんだと本を読んだときは思った。
意味を知ってからは、すげえ人もいたもんだと素直に感心した。
それにしても本当に今が現実なのか。夢なのか。
よく分からない頭で私はのどの調子からそろそろと切り上げることにした。
扉を開けば新鮮な空気。どうやら今は現実らしい。
夢のなかでまで少し肌寒さを感じたことは無いから。
そういえば、昨日・・・え〜と昨日だっけ。
・・・まぁいいか時間なんて。
私は何かしらのことで呼ばれて先生の元を訪れたような気がする。
そして今。
目の前でなんだか助けを求められているような気がする少女もその時いた気がするんだけど。
「さん」
なにやら気性の激しそうな少女が、面倒だから少女1とする。
「貴方も、コンクールにふさわしくないわ」
「はぁ、コンクール・・・?コンクールなんてあったっけ?」
「えっとさん学内コンクールに選ばれてるよ」
「ふ〜ん?」
思い出した。そんなこともあったけ。ああ、なんだか眠い。
は、あくびを隠そうともせずそのまま少女らの傍を通ろうとした。
が、
「待ちなさいよ」
「え〜私は用がないので失礼しますよ」
にへらとした笑顔のまま通り過ぎようとするに少女らはカッと顔を赤らめ手をあげた。
はただぼうっとそれを見ていた。
「何をしているの?」
「ゆ、柚木様」
「柚木様?」
日野だけが、リアクションをしている。
柚木の後ろには火原もいて少女らは急に大人しくなった。
「喧嘩?叩くほうも叩かれるほうも痛いよね」
「で、でも、すいません」
そう言葉を発したかとおもうとすぐさま少女たちはいなくなった。
今日の食堂のおばちゃんのおすすめデザート買ったままだったような。
外で食べよう。
「さんも、大丈夫?」
「?はぁ」
誰だっけこの人。思い出せないなぁ。
私が変な顔をしたというかこの人の顔が整っているのが問題だ。
そういえば逆におぼえている人間の顔のほうが少ないことを思い出した。
だから私が知らないのは仕方ないということだ。
は、いつものようにへらりとした笑顔を貼りつけた。
一瞬だが、柚木は眉をひそめたがその姿はすぐに笑顔に変わる。
「僕のファンたちなんだ」
「はぁ」
プリンだっけ、ゼリーだっけ?柚木の言った言葉をほとんど聴いていないで
は、足を進めようとした。
「あ、あのさん」
はなんで呼ばれたか分からず、日野方へ顔を向けた。
日野は少し困った顔をしながら
「ありがとうね。助けてくれて」
意味が分からないが、一応好意をならば受け取っておく性格なので
いつもの笑顔を貼り付けてそのまま目的の場所へ行った。
「やりにくい女も居たもんだ」
「ん?柚木なんか言った?」
火原が不思議そうに顔を向けた、柚木はいつもの笑顔を貼り付けてにこやかに
「いや、さんはいい人だなって」
「そうだよね〜。俺コンクール始まるまで知らなかったけど、優しい子だよね。ちょっと天然はいってるけど」
友達になれたらいいよね。と裏表のない顔で喋る火原に柚木は相槌を打ちながらも
裏では違うことを考えていた。
本当に彼女が天然かどうかは分からないが、自分の笑顔にちっとも反応しない。
だからといって他の男に気があるわけでもない。今の所無害だが・・・・・・要注意人物だな。