きれい、きれい
とても綺麗なお話しましょう。私、汚いものは見たくないの。
今日まで使われた234回の言葉。ようやく終わるんですね。
良かった。
私と貴方は確かに好きあってます、もうねっちょねっちょです。
糸だって赤いって信じてます。
今も貴方が違う方を好きじゃないかと思うとキリリと痛むし、
泣きたくもなります。好きですからね。
ですけど、もういいです。死ぬほど疲れたんで、もう解放してください。
私、次を見つけますから貴方以上かもしれない、貴方以下かもしれない人を探しますから。
くだらない三文芝居は、上手い役者にやらせてください。
私は脚本家になりますから。ここで
「すまない、他に好きな奴ができた。私と別れてくれ」でお願いします。
「糞豚が、私ごときがお前なんぞ好きなわけなかろう」だとちょっときついというか、
綺麗じゃありませんもの。女の子は綺麗な物語が好きなんですよ。
それは、あまりにもむごい。そうでしょう?
「天女さんも綺麗なほうがよろしいですよね」
「なにを」
真っ青になった貴方、綺麗だよね。天女様も綺麗。綺麗綺麗で大好物。
二人でいれば幸せ。そうでしょう。
私もそう思うもの。腕がなるわ。綺麗なもの同士の綺麗な恋愛ごっこ。大好きよ。
「私、このごろ作家として生きてけるようになりました。褒めてください」
「ちがうの、私たちはそんなんじゃないの」
「三流の言葉は望みません。却下、不可、論外。もっといい言葉でお願いします」
「。私はお前が
「その言葉も、飽きちゃいましたね。ああ、私が言わなくてはならないとは
斬新なこと思い浮かびますね。愛してますよ。さようなら。大好きです。
バイバイ。悲しい、辛い、痛いでもそれよりも貴方の愛しているはウソ臭すぎてもううんざりです。
私じゃない誰かにその言葉はお願いいたします。ここから私と貴方達は、脚本家と役者というほど
違う立ち位置、つまり他人です。終わり」
去っていけば、やっぱり貴方は追いかけに来ないじゃないですか。
ああ、スッキリした。
空は快晴。土は湿り気。
そうだね、1回の本当があったから233回耐えれたけどね。
235回目はもうぺちゃんこ。疲れた疲れた。もう寝よう。
私、ようやく寝れるんだ。同室の目の隈に気付いても私の目の下の隈に気付かなかった人、
愛しているよ。おやすみなさい。
私には、絶対のものがあった。
絶対なにがあっても私を信じ絶対なにがあっても私についてくる。
絶対私を愛してくれる可愛い、私の恋人。
は、私が浮気していても、愛しているといえば、うれしい私もと言って許してくれるような女だった。
傍にいればぬくいぬくい女だった。
何があっても愛しているで片付けられるそう思っていた。
「もう、やめてあげなよ。可哀想だよ。離してあげようよ」
何を言っている伊作、勘違いも甚だしい。
「が私を好きだから離せないのはのほうだ」
私はが好きだが、以上に私はを愛していない。
だから、今回の天から降ってきた美女はどんな味かなんていつもと同じことだった。
が現場を見る以外は。
が、壊れて別れると言ったことは前にもあった。
次の日に愛していると言えば、は笑って、やっぱり仙蔵大好きと言う。
だから、次の日に行けば、それで元通りだと思っていたのだ。
部屋に行けば、は寝ていた。すぅーと息を吐いて静かに寝ていた。
近づこうとすれば、殺気。
「何しに来たの、立花」
「みーたん。きっとこいつおばかだから、現実理解してないんだよ」
「本鳥の双子姉妹か」
「ちゃんと別れたんでしょ?ちゃんに近づかないでよ」
「別れてなどいない」
本鳥姉妹は顔を見合して、呆れ顔。
「本当にばかねぇ、本気に、本当に終わりなのよ」
「あなたはもうここに来れないし、近寄ることも私たちは許さないわ」
「「じゃあさようならぁ、糞ばか男」」
ドンと音がすれば、穴に落ちて忍たまの長屋。
あっちが逢えなくなることを耐えれるわけないと思っていたが、
一日、三日、一週間、一ヶ月。
なんで来ないんだ。イライライライライラ。
なんで私がこんな気持ちにならなければいけない。
あいつは私が好きなんだ。絶対なんだ。
「あ、仙蔵」
「なんだ」
「ようやく、ちゃんを離してくれたんだね。良かった」
「どういうことだ」
「えっ、うん。あのね、僕、ちゃんが好きなんだ」
ずっと、好きだったんだ。でも、仙蔵好きじゃないのに離さないし、
ちゃんが離さないから仙蔵はちゃんを捨てれないんでしょう。
じゃぁ、いいよね。好きじゃないんだから、いいよね。
僕がちゃんを貰ってもいいよね。
馬鹿な奴。は私以外の男を愛さないのに。
「好きにしたらいい」
まさか、愛している彼女が柱の影に聞いていたとも知らずに。
あーあ。
私・はとても馬鹿で阿呆でどうしようもなく、そして諦めが悪い子でした。
それにみかねた優しい友達が、私を正しい生き方を教えてくれたのです。
あやうく、また阿呆の子に戻る所でしたが、すんでの所で私を引き戻してくれた人が
優しく笑顔を保ち続けながら、お茶を入れてくれました。
「伊作くん、私は愛している言葉は一等嫌いです」
「うん」
「伊作くん、私は、仙蔵が好きです。いやでした」
「うん」
「仙蔵にしたら、私など好きにしたらいいぐらいの女なんですね。
やっぱり、私は仙蔵に愛されてなどいなかった」
「ちゃん」
「人の愛を確かめる方法アリガトウございます。私は約束どおり、伊作くん。
貴方の彼女になります。いえ、ならせてください。私は、もう愛しているとウソばかり
つかれることに飽き飽きしてるんです。
ねぇ、伊作くん。私を愛していますか?」
「ううん、愛してないよ。ちゃん。僕は君が恋しいんだ」
「それは、とても素敵な台詞ですね。フフ」
私はどうやら、一回目のどでかい愛のおかげで疑心暗鬼になっているようです。
彼の言葉はとてもじゃないけど、信じられませんでした。
綺麗な言葉なんて所詮うわっつらでしかないのです。
拒否した心に、伊作くんはずっと語り掛けました。
ちゃん、隈どうしたの?ちゃん、怪我してるでしょう?
ちゃん、はいお土産のお団子。ちゃんご飯ちゃんと食べてる?
ちゃん、ちゃん。ちゃん。
泣きじゃくりながら、私を抱きしめる彼。
「僕を好きにならなくてもいいから、僕を好きになって」
矛盾している言葉を吐いて、抱きしめられました。
伊作くんに抱きしめられたとき、久しぶりの人の温もりを感じたとき。
パラリと私の頭のページが戻り始めました。
そういえば、初めて会ったときから、彼は私にそうでありました。
不運なのに、人に恵まれ、強くないのに、優しい。
ちぐはぐでおかしな存在。まったく違う歪さ。まったく綺麗じゃない、
でも本物で本当で、ずっと欲しかったもの。
なんて、なんてことだ。
仙蔵に愛していると言われました。彼は私に離さない母親の情を求めました。
伊作くんに恋していると言われました。彼は、私の些細な変化にも気付いてくれて
私のために泣き私のために笑う私は、この感情を何か知っています。
ふわり、ぎゅっとしてぎゅーと締め付けられるような感情が何か知ってます。
私は、本当にバイバイしなきゃいけない感情を知っています。
「伊作さん。どうしよう。私は」
間違っていたみたいです。仙蔵との赤い糸は、母子をつなぐヘソの尾でした。
私は、運命の相手を間違っていたのです。
「私は、伊作くんが好きです」
愛してるなんて言葉は使わない。だって、嘘くさいんですもの。
だって、悲しいんですもの。だって、貴方は、愛なんて欲しがってないでしょう。
私を欲しがってるのでしょ。
王子様には偽者と本物がいたのです。
本当にさようなら、偽者の王子様。
「」と「ちゃん」
違うだろう。お前を呼んだらいく相手を間違えているだろう?
天女とかいう女が横に座った。今やもはや興味もない。
「仙蔵さん。私は、伊作くんが好きでした」
そうか。
「なのに、全部壊れてしまいました。貴方のせいで」
ああ、私もだ。
「どうしてくれるんですか」
どうしようもない。が傍にいないなんて、ありえない。
なぜ、この女がいるのに、がいないのか。
「そうだ。一緒にリセットしましょう。目を開けたらまた元に戻ってますよ」
そう言った女の目は狂っていた。
だが、そのときの私は、世界が狂ってしまっているかに思えたのだ。
だから、彼女は正常。
がそばにいないことが異常。
が、伊作の彼女になったのも、ウソ。
だって、は私を愛しているのだから。
「ありがとうね、いっさくん」
「善法寺、あなたのおかげでは大丈夫そうよ」
にこやかに保健室でお茶をしているのは、本鳥の双子姉妹。
「立花くんが本当はちゃんのこと好きだって知ってるよ」
「でも、は幸せにはなれない。好きあっていても、駄目。
私たちはちゃんの幸せを願ってる」
そんな彼女と。
「僕、仙蔵大嫌いなんだ。だって、仙蔵我が侭で、どうしようもなく馬鹿なんだもん」
そんな僕が手を組んだ。
僕あの天女とか言われている可愛くもなくて甘すぎる子って嫌いなんだ。
あの子のおかげで、傷つくる人増えたんだよ?なんで人を殺すのってさ、
聞かれたんだった。馬鹿だよね。忍びだからじゃないか。
しかもその大嫌いで触りたくもないあの子僕のこと好きでしょう?
最悪だよね。
けど、好機に転じることもある。
仙蔵にあの子が仙蔵に気があるよって言っておけば、大丈夫。仙蔵はゲテモノ食いだから。
ねぇ、君たちのほうは、逢引とかなんとか言っといてよ。
ええ、綺麗な二人お似合いとかなんか噂も流しとくわ。
今度は本気で本当だよ。とか言っとけば可哀想だけどちゃん凄く傷つけど、
目が覚めるものね。
「でもさ、僕ら。ちゃーんと前もって宣戦布告して仙蔵に選択肢あげたのにね」
「無理だな。立花は気付かない馬鹿で、「プライドが高いもの」」
「まぁ、僕としては、長年欲しかったものは手に入れられたけれど」
「うん。いっさくんほどちゃん見ているのはいないよ。ストーカー並み」
「善法寺なら、もうを離すことをしないだろう時々薄ら寒いが」
まぁ、
「「対極には対極で」」
愛しているっていってウソをつく。ってウソをささやいて、
本物はウソになって、ウソが本物になって、
ウソと本当の境界線分かんなくなって、だって、
ウソと本当を混ぜて愛し合ってるから、傷つけあってる。
本当はどっちも不器用なだけの愛だったんだけど。
どちらも正しく愛だったんだけど、痛々しくて見ていられなかったってウソを吐いて、
本当は
単純にただ奪いたかった。
あっかんべー、ざまーみろ。バーカ。
、愛しているぞ。
235回目の愛しているは、本当なのかウソなのかさっぱり分からないけれど、
愛し合っていた二人を引き離したとてもハッピーエンドのお話。
「はい、私も仙蔵を愛していますよ」
最後に聞こえたのもウソだったか本当だったかそんなことはどうでもいい、
いらないものはいなくなって、本物だけが存在するそんなきれいなきれいな物語。
2009・10・21