二人で一人
ごく単純なこと。
ご飯を食べる。
夜に寝る。
息をする。
心臓が動く。
それを時々忘れてしまう私は、それを一回やめてみる。
大切なことだから、忘れたくないことだから。
そんな感覚を、目の前で友人である彼に感じた。
私は、彼の顔を引っ張った。
私の行動に驚いて、何をするんだと叫ぶ。
彼は、どうやら本物らしい。
私はにっこり笑って言う。
「どうやら私は雷蔵が好きみたい」
と。
私には大事な友だちがいる。不破雷蔵だ。
彼は私に人の大事な顔というものを貸してくれた唯一無二の友人だ。
その友人が今ずっと悩んでいる。
もともと悩みグセがあったけれど、A定食にするかB定食にするか、
隠れたほうがいいか、突っ込んだほうがいいかといったものではない。
優しい雷蔵は、友達だと思い続けていた から告白を受け、
愛の攻撃、いや、迷惑千万なるものをうけつづけている。
うーん、うーんと考えている。雷蔵。
私にはちゃんと分かっているからな雷蔵。
雷蔵は断りたいけど、断れないんだろう?その言葉を探しているんだろう?
だったら、雷蔵が悩むことはない。
「全部私にまかしとけ!!」
そう意気込んでいたものの、のしつこさは、酷い。
私と、雷蔵と間違えたことに羞恥のしゅの字もない。
それどころか、何度も愛の告白をしてくること。
それにイライラして、私の口調が強くなった。
「雷蔵と私を間違えるくらいだ。お前は顔しかみてないんだろう?」
これで諦めるかと彼女を見れば、強い眼差しで。
「そうだよ」
と言い切った。
「本物か、偽物かなんて、愚痴愚痴考えてもしょうがないじゃない。
三郎は、私の倍近く雷蔵の近くにいて、
天才的な観察眼でさ、雷蔵を見て、真似て、
時に自分を忘れるくらいなのに、
そんな三郎と雷蔵を見わけがつけれるはずないよ。
それに、私は雷蔵に雷蔵が、好きだって伝わればいいの。
二分の一の確立だし、100回言えば
50回は好きだって伝わるから、間違えまくったって、言い続けるし、
思いが偽物なわけじゃない」
呆気にとられるとはこのことだろう。私は目を見開いた。
彼女は、そんな私に太陽より強い笑みで。
「しょうがないよ。だって、好きなんだ」
別に、自分が言われたわけでもないのに、
なんでか心臓がドキリと動いた。
僕の数少ない女友達がいる。
は、僕を見ると、春の野にさくたんぽぽのような
素朴な笑顔で愛を囁く。
僕は最初は驚いて、なんの悪い冗談だと思っていたのだけれど、
彼女は本気らしい。
どうしようかと悩む僕に。
「雷蔵!!好き」
「はい、また間違えた私は三郎だ!!」
「雷蔵と私を間違えるくらいだ。お前は顔しかみてないんだろう?」
三郎がなら私が雷蔵を悩ませないようにしてやると僕の真似をし始めた。
いや、前から真似はしていたけれど。
僕は悩む。
悩んでいる間に時間は進んでいて、これでもう二週間になる。
彼女は言い続けるし、三郎は騙し続ける。
解決しようがない問題に頭を悩ませて
今日も終わるかと思ったいたのだけれど、違うようだ。
「そうだよ」
彼女は三郎を睨んだ目そのままに言う。
「本物か、偽物かなんて、愚痴愚痴考えてもしょうがないじゃない。
三郎は、私の倍近く雷蔵の近くにいて、
天才的な観察眼でさ、雷蔵を見て、真似て、
時に自分を忘れるくらいなのに、そんな三郎と雷蔵を見わけがつけれるはずないよ。
それに、私は雷蔵に雷蔵が、好きだって伝わればいいの。
二分の一の確立だし、100回言えば
50回は好きだって伝わるから、間違えまくったって、言い続けるし、
思いが偽物なわけじゃない」
彼女の言葉は率直で、ああ。と思う。
僕がごだごだ悩んでいる間に、物事は進んでしまった。
今、三郎が恋に落ちた。
あーあ、
どう三郎を説得して、彼女と付き合えるか考えていたのに。
毎度毎度、付き合った子にイタズラレベルじゃないことしてるの
知ってたから、三郎にどうにか彼女を認めてもらえばって思った容認してたけど、
ここまでは想像してなかったな。
は固まっている三郎を置いて、僕を見つけた。
「あ、雷蔵。好きだ」
その笑顔に、同等の笑みを浮かべて、「うん僕も好き」と返せば、
三郎がどうなるのか、それを考えて、迷うことなく口を開いた。
「 」と。
2011・3・15