キラキラした星の下で、彼が言った。

「俺、やっぱり、三郎に嫌われてるらしいな」

「・・・・・・」

「再確認って最悪だ。しかもさ、俺から離したくせに、忘れられないなんて最悪で、
最も最悪なのは、お前にこんなこといっている俺だ」

「哀れまないで。そっちのほうが、最悪」

自分が思った以上に、きつい言葉が出た。
さんが鳩が豆鉄砲を食らったような顔してる。

「構わないって言ったでしょう?
私は、三郎くんが好きでも、好きなんだから。
こんなことを、何度も言わせない!!」

怒った私に、彼は眉毛をハの字にして、謝った。

「ごめん・・・ごめんなさい」

そっぽ向いていた私は、頭まで下げている姿をみて、
すぐに向きを変える。

「まぁ、よし。私は、馬鹿みたいに三郎くんを好きな人を、
馬鹿みたいに好きな同類ですから、許してあげる」

「本当に、男前だなお前は」

「あははは、それぐらいじゃなきゃ、さんを落とせませんから。
私、乙女だけど、戦乙女!!恋は戦いでしょう?」

「・・・・・・俺さ」

「うん」

「怖いんだ。俺、まだ三郎が好きだって思うのに。
なのに、時間は残酷で、ちょっとずつ忘れてきている。
今日だって、偶然ぶつかって、そういえば三郎の体を、匂いを、思い出した。
他にも三郎の何かを忘れてきてる。そして、偽物の三郎を作り上げてる。
怖いな。好きであり続けることが俺は怖い。全部忘れて、違う偽物を愛しそうで。
俺さ、なんで三郎好きなのかも、忘れてきてる」

馬鹿みたいな恋わずらいに、忘れていいんじゃないかな。なんて言えなかった。
忘れて、全部私で埋め尽くしてよ。なんて言えなかった。
元から理由なんてなかったんじゃないかな。
私だって、さんを好きになったの理由ないし、なんて言えなかった。
ちなみ、最後のは、私にはちゃんとさんを
好きになった理由があったりするからだ。
無言が思ったよりも長かったから、立ち上がって、天を仰ぎ見る。
空には、落ちそうなほどの満天の星。

「ここは、綺麗だね」

「綺麗ってたかが星だろう」

何いっているって顔をしているさんに、私は小さな頃に習った
下手くそな踊りを踊る。

「私の世界では、星はこんなに綺麗じゃなくてね、もっと光るものが満ちていたよ。
人が作った偽物の光。それが、バァーっとね。ある人は、それが醜いという。
星がなくなったて嘆いてる。だけど、私、それも一種の綺麗さだと思うんだ。
星は星、あれは、あれで良かった」

急に、手をぐいと引かれる。
見ると、捨てられた子犬のような顔をしているさん。

「・・・帰りたいのか?」

「帰りたいかぁ、それがゼロなのは、さすがに嘘になるね」

「そうか」

安堵しているさん。それくらいには、私は愛されていると思っていいみたい。
きっとこの学園で、私がいなくなって一番悲しむ人だろう。

「でも、私、この世界で色々なものさんに見せてもらったから、
あの世界を、さんに見せたいかなぁ」

踊りは疲れたら、横に座る。

「ここと違って、綺麗じゃなくて、温かくもないかも知れないけど、
あの世界は、あの世界で、誇れるところ結構あった。ここにきて、そう思うよ」

「なんだ。お前は俺も連れて帰るきか?」

横で、苦笑している彼に、私は、満天の星にも負けてないほどの笑みで笑う。

「そうだよ。決まってるでしょう?さんは、私がいれば大丈夫。
私だって、さんがいれば大丈夫。こんな凄いことってないよ。
神様は、私を無理やりここに落としたんだもん。
それくらい、許してくれるはずだよ」

「そうか。それもいいかもしれないな」



そんな二人の会話に、木の上から誰かが呟いた。

「・・・やばいよなぁ」














2010・09・05