「へ?マジで」

「うん、そうみたい」

三郎のほうが、にベタボレで、実は数年前から片思いしていて、
うざい?いいえ、むしろドントコイだったことを、
みんなに伝えればハチと、兵助は驚いた顔をしていた。
そうだろう。僕だって、ずっと、三郎は、
に無理やり付き合ってるだけだと思っていたから。

「だから、殴られたんだ俺ら」

と、ハチが、悪いこと言っちまったなと、後悔していたけれど、
謝らなくていいと思う。第一、アレで好きでいれれるのは、ぐらいだ。
好きだって言わない。むしろウザイと言う。
女との浮気は、年がら年中。逢引の途中で、勝手にいなくなる。
態度も、言葉も酷すぎる。どこで好きって、分かれって言うの?
はー、とため息を吐けば、勘ちゃんが一人だけ不思議そうな顔をしていた。

「え?三郎が、のこと好きじゃないと思ってたの?」

「え、勘ちゃん。あれで分かったの?」

「うーん、だって三郎、に好きって言われると、ちょっと柔和な顔になるし、
いつものこと見てるし、女の人だって、わざとに分かるように浮気してるから、
嫉妬させたいだけなのかな、って思ってたんだけど」

「勘ちゃんすげー」

え、そう?とハチや兵助に言われて、ちょっと照れている勘ちゃんの言葉に、
言われてみれば、そうだったかもしれない、と一瞬、思ったけれど、
抱きしめられた後に、嫌そうな顔とか、・・・本人は照れていたらしい。
好きだー、と言われた時の「だから?」っていう冷たい顔とか、やっぱりこれもそうらしい。
浮気して、が、泣いて、泣いて、もうやめてよ。っていうときに返した
「じゃぁ、別れる?」の言葉とか、今、現在、別れているけど、三郎、あんなに困ってるのに、
あの時別れるって言われたら、どうなってたんだろう?
きっとに好かれている自信があったんだろうな。
うん。勘ちゃん、やっぱり分からないよ。
というか、振り返ってみると、が嫉妬深くなったのって、三郎が原因だよね。
しかも、好きでこれなら、三郎、酷い男すぎじゃない?
あ、やばい、なんか急に怒りが込み上げてきた。
三郎には告白が言えるかどうか関係なしに、一回真剣に土下座させてほうがいい。


さん。あのね、これが「文明開化の音がする新商品」だよ」

と、考えていれば噂をすれば影、遠くから聞こえてきたあの子の声。


「凄いな。よくこんな複雑怪奇なものを」

「私図工5で裁縫5だからね」

「5?」

「段階ってのを付けられるの。成績みたいなものだよ」

「へー、他は?」

「・・・・・・・・・・・・親子アヒルってとこ」

「??」

と少女の笑い声が聞こえて、は和やかに笑う。
言っちゃ悪いけど、前よりもはまともになった。
というか、自然体だ。
僕は三郎が変わらないのであれば、こっちのほうがのためな気がする。
だけど。
僕は、三郎の親友なんだ。ごめんね。


「でね、みんなに手伝ってほしいんだ」

僕の言葉に、みんな顔を見合わせて、




「・・・・・・それって、俺たちが何もしなくても、
三郎が一言、好きだって言えば、終わるんじゃないか?」

と、兵助が言った。
そう。その通り。正論。だけど、兵助。それだからこそ、凄く難しいんだ。














2010・5・14