俺ってば、三郎が愛しくってしょうがないから、
これ以上嫌われたくないから、別れたぜ。
もう、近づけない。抱きしめれない。声も聞けない。
あー俺好みの体の大きさ、匂いも、唇の感触も、
とても近くで声を聞くことも、ご飯を一緒に食べることも、
休日に手を握って外へ行くことも、全部全部もう許されないんだぜ。
泣きそうになるけど、恋ってすげーんだぜ。
相手の方が好きで、嫌な気分になってほしくないってほうが勝つんだぜ。
俺は、三郎に、幸せになってほしい。
「じゃぁ、私はさんを、幸せにしてみせるよ」
と、隣にいる少女は真顔で言う。
少女は、俺と属性が似ていて、俺にそっくり。
嫉妬しいの、一人に依存しやすくて、好きって言葉が大好き。
ぎゅっと小さな細い腕を俺の腕に巻きつけて、離さないとばかりに俺にくっついた。
似たもの同士ちょうどいいかもしれない。
両親に少女のこと言えば、きっと泣いて喜ぶだろう。
俺ってば、男好きだから。
子孫を残すことはできないからって、理解してくれてたけれど、
どこか納得言ってない顔してたから。
「俺、正常になれたかな?」
「何言ってるの、最初からさんは、正常だよ。
周りが、正常じゃないっていうなら、私も正常じゃないじゃん。
あ、お揃いだね。じゃぁ、一緒に異常でいようよ。
他と同じよりさんと一緒のほうがいい」
でも、俺と全く違うのは、俺は女々しい。彼女は雄々しい。
ああ、やっぱり。最初から間違っていたんだろう。
男好きが、ノーマルを愛したこと。好きじゃないのに無理やり好きにさせていたこと。
そりゃ、女を抱くよ。女を愛すよ。それが普通だ。
それなのに、そのたびに束縛して、うざいなんて当たり前のことに傷ついて。
それにも気づけない俺は、性癖以外にも異常だったみたいだ。
そんな俺を愛してくれるなんて、同じ異常でいいって言ってくれたのは、
この世界の住人ではなかったけど、俺は徐々に何かが埋まっていく感触を覚えてる。
でも。
俺ってば、馬鹿だから、まだ三郎大好きなんだ。
「それでも、構わないよ。それを知っていて、私はさんが好きなんだから」
少女は俺よりも強くて、恰好いい。
【嫉妬する男アゲイン 1】
「。好きだ」
「・・・・・・何かに変装して鏡に言ってるの三郎」
後ろを向けば、あきれ顔の雷蔵の姿。
見られたことに赤くなった顔は、素顔じゃないからばれてないはず。
「好きって言葉がお望みなら、会うたびに何十回も言ってやる。
だから、帰って来い。いいや、帰ってこらす。覚悟しとけ。
お前の行動のほうが可愛いもんだったと思わせてやるは、どうした?」
まさか、最後の心の叫びを一言一句間違えずに言われると思わなかった。
もうゆでダコだ。
というか、は、よくこんな恥ずかしい、す、好きって言葉を
照れずに毎日、私に言えたものだ。恥ずかしくて死ねる。
「早くしなくちゃ、もう戻れないよ?」
雷蔵の言葉で熱かった体温が急降下。
私だって、急がなくてはいけないのは分かっている。
だけど、あの後、意気込んで走り出して、そしたらとあの女がいて、
まずあの女殴ってやると思ってたのに、
「さん。私、さんのこと大好き」
なんて言ってるものだから、殴るから殺ってやるに変更して、クナイを投げようとしたけど、
「うん。俺は三郎が好き。大好きだ」
の場違いの言葉で、やめた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔で、彼は私に愛を呟いた。
それだけのことで、私のしたかったこと、私がしなくちゃいけないこと全部できなくなくなった。
と私は恋人同士だった。だけど、色々すれ違って絡まって、別れた。
だけど、私はが思っている以上にが好きだ。
好きだから、別れたくない。もう一度愛し合いたい。
だけど。
私はに対して、素直でいなかった時期は長すぎたようだ。
なかなか思いを言葉にできずに、今日も練習で終わった。
そしてそれ以上に問題なのは、あれからは私に近寄らない。
少女が来てから離れてきていたけれど、それ以上に、
私と目も合わさないし、口もきいてくれない、避けられている。
そのことに、心臓がぎゅっと締め付けあげられるように痛くて、どうしようもない。
私が今に出来ることは、に片思いしたときのように、
遠くから彼を見るだけだ。
は、今日も馬鹿正直にまっすぐで単純なのに、一つ一つの動作に目が追ってしまう。
見えなくなるたびに、もっと見たい。傍にいたい。抱きしめられたい。
色々なことしたいって思っているのに。何一つ、伝わらない。
私が悪いのは分かっているんだ。拗ねた顔が愛おしくて、嫉妬させた。
嫉妬してくれることで、自分が好かれていることを確認してた。
好きって言葉を以上を行動で示してほしかった。
「さーん」
甲高い声が聞こえて、私は握りしめていた筆を一本折った。
これで、何本目か分からない。あーもう、イライラする。
あの女、さっさと元いた場所に戻ればいいのに。
そうすれば、そうすれば・・・・・・なんだというんだ。
結局、私は何もできやしない。
2010・2・22