性転換してみたものの。





転生した。そのついでに、憧れの性転換。
ですが、残念なお知らせ。
私は女の時に、男同士の恋愛に憧れていた。
つまり、腐女子。女同士もいけたけど、それは全部二次。
自分が男になってみて分かったことだけど、男同士はないなって思う。
実際、私の周りも普通の人だし。
まぁ、つまり自分が被害者にならない上での憧れであって、
自分自身がなりたいわけではなかった。
だから、私はちゃんと性別にそって、女を好きになった。
元女だからか、結構な確率でうまくいく。
そんな私に友人からアドバイスを求められた。
それが、今までの世界を崩すこととも知らずに。

「どうしたらいいと思う?」

そういって、私にアドバイスを求める黒い腰まで
ある豊かな髪と大きな黒目がちの目と、それを覆う長いまつげ、
美少年な同室者で、友人でもある、男の久々知 兵助。
頬を赤く染めて、言った言葉を、頭の中で、何回もリピートして、
そして、もう一度彼のつま先から、頭までじっくり見て、
寒くもないのに、汗がとまらない。
いや、こんな窮屈な場所に男だらけだから、
当たり前と言っちゃ当たり前だし、
そういう情報もあったけど、まさか、友人で、同室者で、
女の子にモテモテな兵助くんがなるとは思わなかった。
それにしても、なぜ私に相談を?
私なら大丈夫だと思ってるの?
嬉しいけど、違う。
いや、最初はそう思ってた。
男と禁断のムフフを経験してみせるって、だけど、女の子のほうが
やわらかしい可愛いし、いい匂いするしそっちのほうが断然いい。
もはや、男といたすときは、全人類の女がいなくなっても考えると思う。


だが、今凄い真面目な顔で、解答を求めてくる兵助に
そういうの、受け入れない。と言えるわけもなく。

「が、頑張れ!!」

「良かった。なら、応援してくれると思っていた」

手を握り締められて、嬉しそうに笑う友人の言った応援が、
後方支援ではなく前方支援だということに気づいた私は、
酒を片手に、夜の訓練をしている三郎の元へ行く。
下弦の月を肴に、屋根の上で、酒を酌み交わす。
三郎は、賢いし、余計なことをするけど、言いはしないからいい。
気兼ね無い友人だと思う。それと、女が好き。これが一番。

「兵助は、意外とやり手だな」

「何いってんのお前」

「三郎。私は女が好きだ」

「私だって女が好きだ」

「だよな。このところ、それが間違えなのかと疑っていた」

「あー、兵助の恋路を手伝って・・・・・ってかいいのか?」

「は?なにが」

「・・・・・・気づいてないなら、いいや」

妙に濁す三郎に、私は意図を汲み取れなかった。





久々知兵助私の同室者にして、同学年して、同組者にして、友人であり、
同性な彼は、なんでか同じ男を好きになった。
昔は、それに悶えていたのだけれど、今は違う。
凄く遠慮したい。なのに、友人だから手伝っている自分は、確実に巻き込まれている。
ちなみに、今、火薬倉庫にて、二人きりだと変なこといいそうという
乙女な兵助のような、漢な兵助なようなそんな感じな兵助のために、
間にいる自分。

さん。重くないですか?」

「いや、重くないって、いい加減私の腕の細さを侮るなよ」

と、言いながら、金髪の彼で、後輩であり、年上な彼は、
私から荷物を奪うと、私の身長では届かない場所に、簡単に荷物を入れた。

「今のは、重くないではなく、身長のことオブラートに隠したんなら、
君はいい子だ」

「あははは、一応僕のが一個年上だからね」

そういいながら、頭を撫でられた。嫌いじゃないけれど、私は先輩だ。
それと、兵助の視線が痛いので、ヤメテ欲しいので、
体を移動させて彼の手から離れる。

「オブラートに隠せるのは、言葉だけか?」

さんってば、オープンな方がいいの?」

「・・・・・・・」

と、ウインクしてきたこの男。正直、私はこの一個上で後輩な
齊藤 タカ丸が苦手だ。なんか、BL臭がする。元腐女子の感だ。
だから、兵助が落ちたのなら、こいつは、凄い攻めだ。
俺は、ノンケだって構わないんだぜという有名な言葉を思い出しながら、
仕事終わりで軒下でお菓子とお茶を見て、

「ここは、三人じゃなくてもいいんじゃないかな?」

と、呟いた言葉は、分かって無視されているのか、
いい天気だね。そうだな。の言葉にかき消された。
正直、二人でも大丈夫だ。
もう、私の視界に入らない世界で、頑張ってほしいと、
ガーと暴れたい気持ちを、抑えつけ、
今夜も三郎と酒を呑むかと、思っていた私は、
私たちを、見ている少年にも気づかなかった。





先輩。抱かせてください」

その言葉に、くらりとめまいがした。
なんだろうか。兵助の言葉から、私の周りは変わったと思う。
あの二人に挟まれてていて、私に、BL臭が移ったんではないだろうか。

「却下する」

「凄いこの恰好で、そんなこと言えるなんて」

感心しているのか、頭がコクコク動いている。
表情にでないぶん、行動が大げさだ。

「そうだね。自分でもこの格好されて寝ていたのが、先輩としてどうだろうと思うよ。
綾部 喜八郎くんよ」

灰色のくねくねとした柔らかな髪質を持った、女の子と間違えそうなくらい
美少年なアイドル学年を象徴する人物は、目を細めた。猫みたい。

「喜八郎でもいいですよ」

「なに、その上から目線」

「いえ、だって今、上から目線なんで」

たしかに、今、私の恰好は、手は上で縛られて、
その縄は、少しだけ伸ばされて、足首に繋がれ、
足首も縛られ、体が折られている。その間にいる綾部喜八郎。
たしかに、私の足の間から体を入れている綾部が、
上目線じゃないわけがない。

「だったら、外せこれ。どういったつもり?」

「だから、抱かせてください」

その台詞に、その綺麗な顔に吐いてやろうかと思った。

「は?君との接点ってあんまりないでしょう?なに。私ってそんなにBL臭するの?」

「違いますよ。前々から興味ありまくりですー」

「棒読みしないでくれる。ってかさっさと、これ外して、こっから出ていってくれない?
暑苦しい」

「今から、もっと熱くなるのに、大丈夫ですか?」

「お前、いい加減にしないと、マジで、殺すぞ?」

「・・・・・・だって、私、好きでもない人を抱けって、そんなこと出来ない」

と、無表情なのに、涙を流し始めた目の前の人物に、
ああ、そういえば、そろそろ4年は、色の授業が始まるんだっけと、
思い始めた。正直、顔にかかる涙は、不快だったけれど、
あの時、もうすでに経験があった私と三郎以外の彼等を、思い出し、
子供だものしょうがないと、転生して、精神年齢が高い私は思ったのだ。

「だから、抱かせてください」

そういって、覆いかぶさってこようとした後輩に

「いやいや、それでも、女とだから、男とではないから。
だから、違う好きな女の子にして」

「先輩は、女みたいなので大丈夫です」

なにが大丈夫?私は大丈夫じゃないし、君のが女みたいだよ。

「先輩のこと、気に入ってるんです」

そういって、泣きながら私を襲う少年に、抵抗することをやめた。


前は、BLを追いかけてたのに、BLが逃げていた。
今は、BLから逃げてきたのに、BLが追っかけてくる。
なんてことだ。








2010・09・28