「ああーつまんねぇなぁ」

「にゃーおん」

「おい、お里お前はいつから猫になった」

「うっさいねぇ、あたしゃ最初っから猫だよ」

猫又のお里は人語が喋れるくせに、猫の言葉を吐く。こいつは、猫を忘れられないのだろう。
忘れちぃまえば楽なのによ。と言えば、人のことも言えんくせにと笑われた。
どっこいどっこいの俺らは、飼い主と飼い猫で、友達で、親子だ。

「あーくーん、こんなとこにいた」

木の下で小さく見える4学年の紫。13歳ばかりのなかに、一つの異物。
下で大きく手を振って降りてきてよ。と言ってる彼・斉藤 タカ丸は、
ある日突然と学園に現れ、突然と俺についてまわった。

「なぁ、お里俺はなんで猫みたいな男に好かれたんだろうね」

「人は気まぐれ、気の向くままでしょう?」

「ちがいねぇや」


猫に好かれるなんて、俺も焼きが回ったか。と笑う俺。




くんの髪って変わってるねぇ」

赤い俺の髪をゆるく撫でる。不吉な色した髪を変わっているとどこか嬉しそうで、
目が猫で口も猫みたいになって、ほにゃと音が出てる。

「そーいうおまえは、存在すべてが変わってるよ。
俺さー初めて髪結い師ってみたんだけどみんなこんなんなの?」

「さぁ、僕お父さんくらいしか知らないし〜」

「ふ〜ん」

しばし、沈黙。こいつの手つきが気持ちよくて眠りそうになる前に、質問が来る。
その間は絶妙だといつも感心する。

くんのお父さんは何してる人?」

「妖怪」

「へっ?」

「今、妖怪やってるって聞いたけど、どうしてっかな、あの人も大概よくわかんない人だし」

「え、えとお、お母さんは」

「狂ってどっかいって死んだんだっけ?よく覚えてねぇが、かわいそうな人だったな」

「・・・・・・ごめん」

「なんで謝んの?」

「タカ丸は、俺に悪いことでもしたか?してねぇだろ、だったら謝る必要なんて髪一本もねぇな」

くんは噂と違って優しい人だよね」

「はははっ、俺はいつでもウソツキで優しいぞ」

お前も、大概だよなぁ。父親が妖怪してるってとこで、ウソつきだって言われてるのに、
てか俺もちゃんとウソツキだっていってるのに、こいつは俺のいうことを信じてる。
へーんなの。

まぁ、父親が、妖怪してるのも、母親が狂ったのも本当ですが。

「タカ丸は猫みたいだよな」

「そう?、くんのほうが猫っぽいけど」

どっかいっちゃうとことかね。とぎゅっと抱きつかれる。なーる。こいつは俺のことが好きなのか。
でも、残念。俺は、好きじゃないね。








2009・10・26