カーンカーンと規則正しいリズムを刻み、釘を打っていくあら、不思議。

「・・・・・・先輩。桶が木屑になりました」

「またか、

俺の馬鹿力で、はっきり言って役にはたたない。
力をセーブすることは出来るのが、こう、なんだろう、トンカチで手を打ったら痛いな
と考えているかもしれない。将来の団子屋では手が命。
つまり、自分勝手な理由でこの用具委員会で俺は桶(初心者用)すらできない役立たずなのだ。
なんで入ったって?そりゃ、くじびきだ。入った当初俺の怪力を知る先生は、適当なこと言っておいたから大丈夫といってたが、体育委員のほうが向いてないか俺?とそんあことを考えていれば、
ポスリと頭に置かれた手。

「気にするな」

と笑顔の食満先輩。すいません。俺は

「先輩、そろそろお疲れでしょうから、どうぞ」

お菓子で先輩の機嫌をそこねないようにするしかない。最初は目つき怖かったけど、
実はこの人は後輩にもの凄く甘いので何があっても大丈夫だが、なんかのときのためだ。
別に、毒見と言う名の新作の味見をさせているわけではない。

「こういうことはできるのにどうしてか」

・・・・・・・先輩。和菓子って繊細な心持って言うけど、ようは努力だし、
どうやったら、簡単に出来るかを思考錯誤ってか、貴方の作った砂と石を分ける道具で
こうにゅっと押すと綺麗になるんです。時々拝借してます。というか私物化してます。
なくなってる道具は大概俺の所にあります。と真相を告白しようとしたが、

「ホントにどうしてでしょう」

俺は目が泳ぐのを防ぐために空をみた、あ、空が青い。

ダン。

ばれたか、と思ってビクビクしてると。
「お前さ4年だよな。なんか王子様みたいな奴ってわかるか?」

「いいえ、いませんけど、探しているんですか?」

おいおい、俺イケメン嫌いだから、わかんないよ。ってか王子って人だって知ってるけど
あれだろう。卵の王ってことだろう。・・・・・・・分からない。キングオブ卵。って人
なんだろう、卵料理が得意そうとしか分からない。

オタオタしている先輩を尻目に俺は。

「そうですか、じゃぁ、探してみますね」
絶対、探してやる。卵の王。そんでその味を盗んで俺の店の繁栄させるのじゃ!!!
アハハハハ。

先輩はそんな俺のやる気を買ってくれたらしく、女の子を紹介してくれらしいです。
よく分からないけど嬉しい。こ、これで、彼女がもてるかも。
イケメンな先輩だが、俺は先輩が好きだ。例外で許す。と気分よくかえろうとすれば。

、怪我してるかもしてないから保健室言ってこいよ」

「あ、大丈夫です。俺、この方一度も、怪我とか病気とかなったことないんで」


だから、一度も保健委員のお世話になってない、すっごくない?この忍術学園で。



5・ガラスの靴は粉砕してる。



あの日から、伊作は変わった。先輩のリンチあって倒れたっていうから急いでいけば、

「なんで留さんなんだろう」
とむくれられた。
それから伊作の悪癖、女とっかえひっかえもなくなり、安心したが

が、

が、、

前のほうがマシだったかもしれない。


「で、王子様がね」

毎夜語られる伊作による、伊作のための、伊作のためだけの王子様ストーリー。
目をキラキラ輝かせて頬をピンク色に染めているまさしく乙女。
しかし言っているのはヤローだ。気持ちわるい・・・こともないのがやばい。
似合っているのもどうかと思うし、女ではなく男に走ってしまった親友が滲んで見えない。
涙じゃない、けっして汗だと思う。

「・・・・・・先輩。桶が木屑になりました」

「またか、

昨日のことを思い出しすぎていて、今が用具委員会だと忘れていた。
俺の唯一心の休まる時間だ。
そして目の前にいる長身の4年、 
普通顔、普通頭、普通な成績だと本人は言っているが、かなりの怪力である。
力をセーブするために用具委員に入ったが・・・・・・俺は大破している桶を見る。
もはや木片だ。
ああ、悲しそうな顔をするな。
大きな秋田犬を思いだ出せるしょげ方をしている可愛い後輩に、

「気にするな」

といえば、彼はおずおずと本日のお菓子を出す。
せめてものお詫びと出されたとき女々しい奴だなと思ったものの、
彼のはそんじょそこらのよりも美味しい。今日のは練りきりだ。
綺麗に彩られた細かい細工。こういうことはできるのにどうしてかなどいえば、苦笑する。
俺は、怪力であるが故に彼があまり人と交流術が少ないことを知っている。
人が触れ合う方法をお菓子で表しているのだと分かっている。普通のことが上手くできない、
そのための術、そのための努力がどんなものか俺には想像できないけど、
今度からはいっちゃいけねぇ言葉だ。と「ホントにどうしてでしょう」とどこか遠くに目をやる
彼をみてお茶をすすった。
自らを普通と言うことで普通じゃないことを隠したがる彼は、俺の初めて出来た愛しい後輩で、
そんな顔させたくないから、お茶をダンと強めに置いて、

「留さーん、王子様はさ何時になったらくるんだろう?
だって、彼4年生でさ、保健室使わない子なんていないから、僕できる限りいるのに」

と言った友人を思い出し。

「お前さ4年だよな。なんか王子様みたいな奴ってわかるか?」

言って後悔した。俺は慣れているが、何も知らない奴が聞いたらおかしすぎる。
話題を変えようとしたものが悪かった。

「いいえ、いませんけど、探しているんですか?」

「お、俺の親友がだぞ。俺じゃないからな」

これは、どう考えても俺だって言ってるようなもんだ。

「そうですか、じゃぁ、探してみますね」

にっこりと笑っている後輩に俺は感激した。頭おかしいとか、頭が痛んでるとか、
俺は伊作のときに思った。のに関わらず、言葉を信じて探してくれるなんて。
ジーンと感動している。

「よし、。彼女欲しいって言ってたよな。今度可愛い茶店の女の子、紹介してやるよ」

言ったら、凄く喜んでくれた。そうだよな。そんなお年頃だしな。と、
ふと粉砕している元桶に俺はに声をかけた。

、怪我してるかもしてないから保健室言ってこいよ」

「あ、大丈夫です。俺、この方一度も、怪我とか病気とかなったことないんで」

俺はこのとき自ら、王子と姫を裂こうとしている魔女なんて気付きもしなかった。
だって、彼は王子じゃなくて、普通で、怪力で、優しくていい子で俺の可愛い後輩だから。







2009・10・11