しゅるりと巻きついてくる蛇。俺は爬虫類に関して詳しくないので、ぬるりとして
舌を出し入れするものは大概蛇ですます。
俺の実家に、というか近くの沼に大きなトカゲ、いやサンショウウオが生息していた。
彼は沼の主だった。そして俺のよき友人だった。別に、根暗で他に友人がいなかったわけではない。
昔から親の仕事を手伝っていたので、夕暮れしか遊べず、その時間帯にいたのが奴だっただけだ。
そんなわけで、爬虫類は嫌いではない。
サンショウウオにはサンちゃんという愛らしい名前をつけた。ちなみにサンちゃんは雌だ。
そんな話はさておき、その代わりと言っちゃなんだが、
俺は手足が一杯ある昆虫は一切駄目だったりもする。
特に、蜘蛛だ。
やつらは、なぜか俺が好きで俺の部屋にばかり住み着き、
寝るときは共に顔の上で寝むられて以来俺は駄目になった。ああ、今思い出しても寒気がする。
そしてこの忍術学園に来て、
俺は、蜘蛛とサンショウウオ以外に蛇に好かれると言うスキルを手に入れた。
それは努力ではなく、神様が放りなげてくれたもの。きっと神的に微妙すぎてくれたんだと思う。
それより、恋人を一人くらいくれても良いと思う。神様はドSだ。
と、いうわけでそんな目で俺を睨んでもしょうがないと思う。
イケメンな後輩。彼はかれこれ何十回も俺の所へきて
泣いて、怒鳴って、怒って、泣いてを繰り返す稀有なイケメンだ。
元々俺は、あんまり同学年と委員会以外では話すタイプの人間ではないので、
一重にイケメンへの嫉妬ではなく、俺がシャイだと言っておきたい。
まぁ、そんな俺に2年生で知り合いと言えば一人しかおらず、彼について教えてもらった所、
「かなりの人間嫌い」で「ジュンコを飼ってる」だった。
一番初め、ジュンコ?もうそんな年で女囲ってんの羨ましい!!とか思っていたが、
俺の腕に付いている蛇のことらしい。彼女を抱きしめながら泣く姿に、
昔の自分の姿が投影される。友達がいないわけではない、けど、
彼のように愛せる存在は、俺もサンちゃんくらいしかいないのであろう。
感傷に浸り俺は、つい口にする。
「君は俺のこと嫌いだろう」
彼は何も返さない。しかし、こちらを見る目には肯定を示すもの。
「お前は俺によく似ている。今まで会った中で誰よりも、
だから、俺はお前がいると安心するんだ」
目の前にいる少年はまったく表情を変えることなく俺を見てる。
少し悔しくなり、人間嫌いへの小さな嫌味を言ってやった。
「孫兵」
嫌いな人間から名前を呼ばれるのは、俺だったら耐えれない。
けど、誤算だったのは、
彼はなぜか俺に抱きついて来て、小さなお返しをした。
「大好きですよ。先輩」
俺は、嫌われることも無関心さにも慣れているけど、好かれることには一等弱い。
なんてことだ。
こいつは、俺を嫌うことに関してかなりのやり手だ。
俺は、次からコイツに睨まれたらちょっと悲しくなるだろうから。
4・僕の本気みせてあげる。
僕はこの先輩が苦手だ。甘い匂いを年中させえて、頭まで甘い先輩が大嫌いだ。
甘いものは嫌いではないが甘すぎれば話は別。気持ち悪い。
先輩は、遠くからでも授業中でも身長のでかさとやはり甘い匂いですぐ見つけられる。
・・・・・・見たくもないのに。
僕はこの先輩が、嫌いだというのに、一週間に2・3回は逢わなくてはいけない。
だって、ジュンコはいつもそこにいるからだ。
初めて会ったとき、先輩は、そこにいるのにそこにいない雰囲気をかもし出して、
僕とジュンコをみると、とても優しくジュンコを撫でて、「君の大切なものなんだろう」
と言って僕に渡してくれた。
大きな手が僕に少し触れただけで、気持ち悪くなる。
例え彼が、毒を持っている僕のジュンコを初めて優しく撫でて、
僕がジュンコを愛している異常な行為を否定しないでいてくれた人だとしても。
上から見れば、彼はやはりすぐ分かる。
「!!」
そう、呼んだのは僕の知らない彼の友人。
彼の友人は4・5人程度で、けれど付かず離れずの友人なので、
彼に抱きついたりする行為はしない。
長い黒髪の、目が大きくて睫毛が長い、あれは誰だ?
なんで、彼は、そんな彼を優しく抱き寄せるんだ?
あれは、誰だ?あれは、なんだ?
ああ、気持ち悪い。気持ち悪い。ぐらりと視界が揺れればブラックアウト。
パチっと目を開けば、僕はいつの間にか、先輩の所にいました。
ブラックアウトしたのは、意識だけで、体は動いていたようです。
怒鳴って怒って睨んでも、先輩は僕を叱るでもなく怒るでもなく悲しむでもなく
苦笑してました。それがなお僕をイラつかせるのです。
「君は俺のことが嫌いか」
「俺はお前はとてもよく似ている。今まで会った中で誰よりも、
だから、俺はお前がいると安心するんだ」
「孫兵」
ジュンコを触れさせたくない。甘いから。
僕に触れて欲しくない。甘いから。
誰かを触って欲しくない。甘いから。
アレは誰ですか?友達いたんですね。貴方みたいな人でもの嫌味は、
『出会った中で誰よりも』で消えた。
『安心するで』甘すぎる味が調度良いになった。
先輩は、人の名前を呼ばない。良くて苗字で呼ぶぐらいしかしない。
名前で呼ばれたのを聞いたのは今が初めてで、
『孫兵』その言葉で、世界が逆転した。
先輩。先輩。
「大好きです。先輩」
貴方は大概鈍くて、女の子が好きだから、良くて後輩から初めて好かれた程度でしょうけど、
それか、好かれることに慣れてない貴方は報復とすら思ってるかもしれないけど、
違いますから、今はジュンコですらライバルで、いい口実ですから。
先輩、初めにしかけたのは先輩でしょう?僕は離しませんよ。
待っていてください。僕の本気みせてあげる。
2009・10・10