俺の中で大切なものは少ない。
真っ暗な俺に差し伸べてて家族になろうと言ってくれた人。
馬鹿みたいなこと言える友達と人が死ぬことを守ってくれる場所。
最後に、俺が馬鹿みたいに焦って生きていたときに何も言わず優しく撫でていてくれた手。
俺と土井先生は出会ってほんのちょっとしか経っていなかった頃。
この人があまり裕福ではなく馬鹿みたいなお人よしなのは分かっていたけれど、
俺はいつ捨てられるのかビクビクしていた。
今が戦乱な世界だってことはよく知っている俺は、とても運が良くてでも、
人はすぐ変わってしまうし、ちょっとした幸せは簡単に壊れてしまうんだと思い込んでいた。
お金を入れてくれる子供だと利益がある子供だと思えば手放せなくなるなんて考えで、
裕福じゃないから、お金が好きだからそんな理由で働きまくる俺に土井先生の
なにか言いたげな目に気づかないふりしていた。
女装のほうが町にでれば儲かる。しかし支払わられる代償がある。
それを上回るほど俺は金が欲しかった。
「いらっしゃーい。いらっしゃーい」
子供だと甘い顔をしてくれる人は比較的裕福な人。
大変だねと言われるけれど、彼らに求めるのは言葉ではなく金なのだ。
そんな嫌な考えを持っているのがばれたのかもしれない。
帰り道に伸びた手、薄暗い路地裏に連れ込まれた俺は俺よりも大きな男に体を触られた。
止めてくれとの言葉は小さくて、あちこち骨ばった手で触られ俺は女ではないことがばれて、
良かった。止めてくれると思ったのもつかの間。
「やはり男か丁度いい」
とじじいはにやりと笑った。俺は気持ち悪くて手を払いのれば、小銭がちゃりん。
「やろう。次もこの時間に触らしてくれたらもっとやろう」
そういって去っていく姿に腰を抜かして、それなのに小銭を握り締めている自分が無性にやるせない。
ふぐぅうぅう。ううう。と声を殺して泣く方法を身につけた日。
小銭は、俺が2.3日働いた分あった。
いかない。そう決めたのに足がそちらに行ってしまったのを誰も止めやしなかった。
段々増えてくる小銭、触られる場所も徐々に際どくなっていく。
俺、このままこの人に犯られんのかな。
だとしても、誰もこの人が責めようとは思わないだろう。
ただえさえ、女の格好をしているし、俺は金を貰っている。
なんてぼうっとした頭で、たまった小銭の数を頭の中で数えていた。
こうすればこの行為もすぐ終わると分かったからだ。
小銭の中に紛れ込んだ、大きな優しい手。困ったよう顔。
俺、そのうちあの人の手を握り締めれられなくなるのかな。
嫌だなぁ。でも。
ドガーン。と壁をも壊して横から現れた大きな木材。
もくもくと煙がなくなると、そこにいた青年は、俺とじじいを一瞥し言葉をかけた。
「大丈夫か?」
なんの表情もない青年は人が集まる前に俺をつれてそのままその場を後にした。
あまりにも突然のことで唖然となっていたけれど、
青年が河原に付近に来たときに俺は暴れた。
「離せ!離せよ」
青年は、トンと俺をおろしやはりなんの感情もない顔で俺を見ていた。
これでも、あちらこちらで接客業をしているのだ。
彼が俺をどう思っているのかは勘で分かるが、青年からは何もなかった。
侮蔑も、哀れみも。なにも。
なぜ、かっとなったのか。よく分からない。気づかないうちに俺は叫んでいた。
「あれは、俺が同意の上でやってんだよ。邪魔すんなよ!!」
男は、その言葉を聴いてようやく表情をうつす。
せいぜい俺を罵って侮蔑し冷たい目で見てくれよとどこか、
俺は責められたかったのかもしれない。
しかし、男は、俺に当然の言葉も行為も表情もその一切をくれなかった。
「俺はお前にはこちらのほうが似合っていると思うぞ」
と剥がされかけていた女物の服の代わりに大きな男物服と手に載せられた柏餅。
頭には、男の癖にやけに細く綺麗な大きな手がのせられた。優しく撫ぜられる。
理由もなにも追及しない沈黙しかないのに、どこか温かくて、苦しくて
俺は前のように声を出して泣くことが出来るようになった。
目が覚めたら、土井先生がいた。
キリ丸と私は家族だろう。お金もそんなにいらないから、
もっと子供らしく生きてくれと何かあったら頼ってくれと、大人なのに涙をためて俺を抱きしめていた。
俺はようやく暗闇の中、温かい人を抱きしめることが出来た。
二人して鍋を囲んでうまいとかいって笑えば、全部、全部夢だったのかと思ったけれど、
部屋の隅には土井先生のものではない服と、柏餅。
「先生。俺を連れてきてくれたのって」
「ごほぐぅぅううぅうう」
と咽た。
11・小銭と柏餅と時々は組
俺・ とは組は今任務中でございます。
人数少ないから全員で任務中って言っても俺、別行動でお菓子を作ってるけど。
なんかどっかのじじいがこれまたどっかの情報を流して金を手に入れているみたいよ。
どっかというのは、藤野の情報で、は知らなくていいからと峰に笑顔で言われた。
峰って一年のときは普通の喋り方だったのに、いつの間にか丁寧な喋り方と
笑顔で人を黙らす方法を身につけている。絶対篠神のせいだ。
しかもそいつのせいで、任務だっていうのに篠神専用に甘味屋に働かすと言うのが
は組クオリティー。
任務よりも先生の生命の源確保らしい。
あいつらかなり篠神に甘いと思うけど、
「だって、技盗めるからいいじゃん。木籐なんて野菜売りとかしてるし」
「ははっ、この頃安くて美味しい野菜売りってお前か」
「ってかあそこの野菜の市場がおかしくなってるだけだし木籐は普通に仕入れてるもん」
うん。俺らはなにしているんだろう?
別に木籐が値切って値切って有名になりつつある野菜売りとして生きていくのが目的だろうか。
店の店主に店を任せると言われるのが任務だっけ?
というか篠神毎日来るなよ。意味なくない?任務の意味なくない?
いいんだよ。だって僕らは組じゃない。なんて峰の電波を受信しながら、
久しぶりに会った藤野に、ここでコレ持っていてと渡された巨大木材。
「?」
「そんでなんとなく落とせばいいから。じゃ俺、お前が落とした男の集計じゃなくて、
他の事で忙しいから」
といなくなった。なんとなくってなに?
そんなこんなで2・3時間。俺ってば耐久力あるよなとか、どこまで耐えれるか一人大会を
やってたのだが、隣の物音にびっくりして、やべ、手が滑ってそのまま壁壊した。ああー。
ま、大丈夫だろ。藤野がどうにかするから。と思いながらも、被害者を探せば。
女の子がいる。あ、じじいも・・・・・・・ってかこいつ俺らが探してた奴じゃん。
さすが、藤野。理屈と理論とかまったくないこのミラクルな仕掛けをつくれる男。
ちらりと後ろを見れば、峰の姿。ここはまかせて、そこの男の子よろしくねと、
目で訴える。羽音じゃなくて目だけでコンタクトできるお前も凄いよ。
てかこの子男の子か。
じゃ、なんで女物?なんで脱げてんの?とずっと考え事していれば、邪魔と言われました。
うーん、でもこの年で裏取引きはやばいよな。
ここは優しく諭してやろう。
というか、じじいはこれからちょっとあれなことになるだろうし、
俺も子供が拷問する皆を見たくないっていうか、私情ですいません。
だから俺は忍びになれないし、ならない。
それと、男の子は男物を着たほうがいいぞ。と、結構イケメンになりそうだけどな。と
子供は泣くから甘いものという変な頭の方程式から導き去れた篠神の土産の柏餅をやった。
やったら、泣かれた。なんだ。篠神のだからか?そんなに嫌われてんの?とか焦る前に、
見知った顔が現れた。
「、その子。白だから。大丈夫」
「ってか、逃がす気だったでしょ」
「アハハ、いいんじゃね。甘くて結構。それが だろう?」
「まぁ、そうだね。で、藤野それ誰の子?」
「おー、それは」
「キリ丸!!キリ丸!!」
「忍者を教えている先生だと思えないほどの声を出している土井先生のとこの子」
「じゃぁ、声でもかけときますか」
2009・10・28