!!」

遠くのほうから、自分の名前が聞こえるそんなわけないない。自意識過剰だ俺と、
のんびりくつろいでいるとき名前を叫んだと思われる人物がいきなり人の部屋に侵入してきた。
なにやら紙を握り締めながら、プルプルしている。

「いいか、ちょっと正座しろ」

俺は何をしたんだろう。食満先輩は、ありあとあらゆる汁を出して、
イケメンなのに、見れたものではない。
食満先輩は、そんなことを気にせず、だいすきなもの。と全部ひらがな表記でありそうな
出だしで、握り締めた紙を読み上げ始めた。

だいすきなもの、だいすきなもの。うーんとなめくじと先輩。
だいすきなもの、だいすきなもの。えーと、食べ物と先輩。
だいすきなもの、だいすきなもの。んーと、かくれんぼうと先輩。

「満点だな。これは」

うんうんと笑顔で、鼻血出している人を先輩だと呼びたくない。
しかも、それは宿題に見える。奪ってきたのだろうか。

「だがな!!ここから問題だ!!」

くわっと目に力を入れて睨まれる。
先輩の目つきは殺人的に悪く見る人が見れば怖がるが、涙と鼻血をだしている男を
誰か怖いと思うだろうか。それよりも、この人は大丈夫だろうかと本気に心配した。




10・食べたら、美味しい、だーいすき。




一年は組 山村 喜三太

だいすきなもの、だいすきなもの。うーんとなめくじと先輩。
先輩の中でも、一番5年は組の 先輩!!
とても優しくてかっこいい先輩なんだ。
僕のなめちゃんを見ても嫌わないで、このしめっと感が友人のサンちゃんに似ていると
可愛がってくれる。僕以外でなめちゃんたちを愛してくれる人なんて初めてで、うれしい。だいすき。
しかも、僕としんべいと平太、三人丸ごと運べちゃう力持ちさんで、
僕らが疲れたとき美味しくて甘いお菓子をくれる。どこのですかって、しんべいが聞いたら、
自分で作ったんだって凄い!!僕はそんな先輩がだいすきです。


一年は組 福富 しんべヱ

だいすきなもの、だいすきなもの。えーと、食べ物と先輩。
先輩がくれた、栗饅頭、酒饅頭、練りきり、あんみつ、くずもち、わらびもち、
特にお団子は絶品。今まで一番。僕はみたらしが大好き。喜三太はあんこが好きって言ってた。
僕が全部食べて悲しそうな顔してたら、秘密でもっとくれる。おいしい幸せ。
次は何が出てくるのかな。っていつも楽しみ。前、喜三太と僕と平太で遊びました。
とても楽しかったです。先輩がお兄ちゃんだったら、最高なのにねって、喜三太と言いあいました。
お仕事もちゃんとできなくても頑張ったら、褒めてくれるし、優しい顔も好きです。
えーとだから、先輩だいすき!!!



「・・・・・・もので釣ったか、


うん、だって、俺は用具委員でいうなら落ちこぼれ、
しかも近づくと壊れた用具が飛び散り怪我をさせてしまう危ない人なので、
やることといったら、重いものを運ぶか、こうして1年生と戯れることしかない。
思春期に入った富松はこのごろ近寄らず、近づくと真っ赤な顔して逃げる始末だしね。
だから、懐いたんだろうよ。餌付けな感覚がぬぐえ切れないが、後輩にだいすきと言われるのは嬉しい。
嬉しいけど、食満先輩の俺のこと書いてくれてもいいのにと本格的にしょげ始めた姿に、
素直に喜べない。先輩、後輩大好きだものね。いつかその思い届くよ。
別に食満先輩の眼光に時々富松ですら勘違いして怖がっているわけではないと思うよ。


「そして、俺がきた理由がこれだ」


一年ろ組 下坂部 平太

「だいすきなもの、だいすきなもの。んーと、かくれんぼうと先輩。
先輩は、甘くてかっこいい人です。僕が隠れてもどこかすぐ当てちゃう凄い人。
夜中までかくれんぼしてたら、先輩は僕を見つけて、暗くなったら帰ろうなと、頭を撫でてて、
おぶってくれました。そのとき先輩からは甘い匂いがしました。
先輩は甘いものをよくくれるから、先輩も甘いのかなと首を舐めたけど、普通の味でした。
それよりも、ビクリと先輩は一時停止をして、それから急にスピードが上げました。
後ろには、お化けとかいない、大丈夫、大丈夫と長屋駆け込んでいきました。
先輩はお化けはあんまり好きじゃないようです」


あの夜、練りきり案を考えてたら、木下にお化けを見かけて、
いやそんなことない目の錯覚!!と力んでいけば後輩で、知り合いでよかった、と安心したところに、首にぬめっと触られた感触。、お化けかーこんちくしょう。お前、狙いどころよすぎだろう。
何、フェイント!!!最高だよ。くそー。後輩いなけりゃ泣いてるー。と走った覚えあったけど、
お前か。下坂部。
ちょっと、その夜あんまり怖くて、イケメンの巣窟、2人より1人のほうがマシと思って、
久々知くんとこ泊まったんだぞ。次の日は、増えて狭い部屋の中大の男5人とかなってたけど。
・・・・・・そっか、よかった。お化けはいない。



「用具委員の皆で、お風呂にはいったら、先輩の体は、食満先輩よりと同じかそれ以上に背が高いのに、富松先輩よりもがっしりとしてません。細いな、もっと食えよ。と凄い力で食満先輩に叩かれていたけれど、びくともしない。先輩の体のつくりがよく分かりませんが、
「あんまり、体に筋肉がつかない体」らしいです。
体を洗っているときに、6年生の食満先輩の体を見れば、
無数の怪我があって、僕も将来そうなるのかなと、不安とがっしりした体に期待を感じていました。
ちらりと先輩を見れば、細かい傷ぐらいしかありません。
・・・・・・先輩はどうやら食満先輩より凄いようです。
気になって触ってみると、絹ごし豆腐のようにもっちりしっとりと滑らかな肌でした」


「と、いうわけだ」

なにがと、いうわけだ?
俺の肌はちょっと特殊であんまり怪我しても傷つかないだけだよ。
豆腐食べ過ぎのせいだし、久々知くんのお肌のほうが綺麗だよ。
というか、俺の組忍び目指している奴いないから、危険な実習ないだけだよとか、
色々言う前に。

「後輩をとりこにする肌。ちょっと見せて、触らせろ!!」

そして俺も、後輩に懐かれるとよく分からない思考と怪しい発言のまま、食満先輩は
俺の上にのしかかり、服を剥き始めた。

「え、け、食満先輩!!!ぎゃぁーーー」


叫び声から2.3秒もしないうちにおもいっきり開いた襖。
スパーン

「何してるんですか?食満先輩」

5年イケメンズ。このごろ彼らとつるむことが多いよ、俺。
ようやく俺たちの体制、食満先輩俺に馬乗り&服を無理やり剥いでいる。
どう見ても襲われている俺!の体制に気付いた食満先輩は顔を青くさせて、
違う、誤解だ!!と叫んでいたが・・・・・・うん。
後ろで伸されている先輩をずるずる引きずる鉢屋くんの姿なんて見ていない。

「大丈夫か?

この前のでなんか懐かれた竹谷くんに
怖かっただろう。安心しろ俺らが守ってやるとぎゅーと抱きしめられた。
竹谷くん、俺は女ではない。が、今回は助かった。ありがとう。だが、女ではないので、
次回からその台詞は君が好きな子に言っておいたほうがいいよ。とか。
後ろで、久々知くんと不破くんがひそひそと、仕掛けとか罠とかいいながら
俺の部屋の間取りを見ていることとか、全部忘れて寝たくなった。


平太の宿題の紙は、遠くのほうまで飛んでいった。
最後に、

「きっと、先輩は食べたら、とても美味しい先輩だと思います」










2009・10・22