今回の学園長が急に思いついた大女装大会。
女装して、色を使い、男をたぶらかして、
貢品をもらい、貰った量で、勝敗を決める。
年対抗の競技の本当の意味は違う。
私・鉢屋三郎が得意の変装を使い、情報を集めたのだから、裏は取れている。
私が学園からうけた依頼は、巷で噂になっている神かくしの話だった。
夕暮れの時、綺麗な女ばかり、目を離した隙にいなくなるという。
話は聞けば聞くほど、ただの山賊の仕業だろうと、
茶店で、聞いた男と雑談をしていた時だった。

「山賊なんてくだらねぇ奴らの集まりだ。あんなやつら、野垂れ死ねばいい」

「そんなこと!!」

男が言った言葉に反応したのは、茶店の少女だった。
髪で目を隠して、容姿があまり優れていない少女は、
自分の出した大声に驚いて、すいませんと、
蚊の鳴くような声で、謝ると、そのまま奥へ引っ込んだ。
なんだなんだと、誰かが言う前に、私は少女に声をかけた。
少女は警戒していたが、山賊に用事がある。もちろん、敵じゃないと
伝えると、塞いだ顔をあげて。

「あ、あの」

と、顔を真赤にして、真実を口にした。

それからの大女装大会。
学園長が何を狙ったか分かっている。
内部に、学園の誰かを忍び込ませるための大掛かりなもの。
教えなかったのは、度胸試しも兼ねている、
生死がかかっている内容な任務に、
私は、綺麗どころ、可愛いどころが揃っている4年を、見張っていた。
6年は、・・・綺麗と言えばあの人だ。
大丈夫だろう。というか、引っかかって死ねばいい。
そしたら、邪魔する奴もおらず、先輩ともっともっと仲良くなれるのに。
と思っている時だった。
噂すれば影とはこのことだろう。
隠れている私の横から、ぬっと白い顔が出た。

「鉢屋。これはどういうお遊びか教えてくれまいか?」

「優秀で天才であられるあなたなら、分かっているんでは?」

私の嫌味に、立花仙蔵は、美女と呼ばれる表情を変えることなく、

「そうだな。お遊びはこれまで。が攫われた。よく分かっていると
褒めてやりたいところだが、私のが、触られるのは殺したいほどムカつく」

「よく先輩が攫われたのに、冷静でいられましたね」

「冷静なわけがあるか。殺されかけたわ!!
鉢屋、急がないと、お前も半殺しになるぞ」

よく見れば、暴漢に襲われたような無残な恰好をした潮江先輩が横にいる。
化粧によって見れた顔は、哀れに、鼻から血が出ている。
彼等は、最初からこの内容の裏を知っていたようだ。
だから、冷静さを失った立花先輩が、
攫った相手を殺すのを、無理やり止め、ボロボロになった
潮江先輩から目を移して、さっきから無表情な立花先輩を見た。
いつも会えば、戦闘態勢で殺気を贈りあう私は違和感を覚える。
私と会っているのに、立花先輩は、殺気も嫌な顔も、何も無い。
どうやら、無我の境地にいたるほど、
ふつふつと煮えかえるほどの怒りを我慢しているようだ。
よく見れば、手のひらには、血が滲むほどの爪の跡があった。
はははと立花先輩の姿に、から笑いが出そうになる。
手を上げて、降参のポーズ。

「いいですよ。教えますよ。一大事ですから、休戦です。
私だって、先輩が誰かに触られるのは嫌ですし、それに」

それに、少女の話が本当なら、・・・・・・死にはしないけど、大問題だ。





今、俺、 は、選択を迫られている。
というか選択性のくせに、一択しか答えが無い。
目の前に、身長が低く、左の顔がやけに腫れている男が言う。

「お頭に抱かれるか、ここで死ぬか?」

「いやいや、なんで俺・・・私だけ?」

伊作、もとい。いさ子は、男の後ろで寝ている。
起きた途端、二つの選択肢を迫られている自分。
どちらも嫌だ。背中の汗がハンパない。

「いや、俺、この子だけ連れてこようとしたんだけど、
見つかったから、連れてきちゃっただけだし、綺麗じゃないし、需要がないし」

需要はない?どういうことだろう。と思うものの、
選択肢の答えを伸ばすために、俺は言葉を連ねる。

「乙女に綺麗じゃないって面と向かって言うなよ。悲しいじゃん」

「そうだよなぁ。女でそれはないよなぁ。俺、男で良かったて思う」

「うわー、グサってきた。グサッて、ってかお頭に抱かれるって何?
どういうこと?」

「あーそれはな、お頭、ブサイク好きだから」

一瞬。全ての時が止まった。
・・・伊作早く、目覚めて!!俺、童貞の前に、処女奪われそう。
本当は、色の授業で童貞を失うはずだったけど、
俺、その時に、任務入っていて、
帰ったら、童貞を失った仲間たちが、いい顔して笑っていたときには、
学園長を闇討ちしようかと思った。
と、昔の記憶を思い出していると、ぐいっと顔を上にあげられる。

「お、いい感じじゃねーか」

「あ、お頭」

男の声に驚く。だって。

「え、ちょっと、ブサイクめを考えてたんだけど、
え、ハンサムじゃん。どういうこと?」

「ハンサムだと、ありがとうよ」

にっと笑うワイルド系の男はどうみても、女が寄ってくるフェロモンを出している。

「あんたなら、女なんていくらでも来るでしょうが!!」

だから、俺とか勘弁。
てか、いいじゃねーか。何もしなくても、女とウハウハ出来るのに、
わざわざブサイクを食べなくてもよぉ。
ブサイクの根暗根性丸出しで、羨ましさ丸出しな俺に、
男は、ふっと大人の色気を出して言った。

「綺麗な女より、ちょっと劣っているほうが、心のほうも体のほうも綺麗で好きなんだ」

その意見は、どうみても、あらかた食い荒らした感たっぷりで、
こいつに抱かれるくらいなら、死ぬ方がマシだなと思ったが、
縛られていた体を俵のように持ち上げられる。

「ちょ、ちょっと、選択してない。まだしてない!!」

じたばたしたが、男の体は強靭でびくともしない。

「じゃぁ、俺は、この子収めてきますね」

「ああ」

「ぎゃぁー!!!誰か助けて!!」











2010・10・17