あー媚薬作れん。
こんなことするよりも、フィギュアつくったほうが早い。
と、何個目か分からないフィギュアを作っていたときだった。
とうとう私は、原寸大を作っていたようだ。
ぼやけて、横に文次郎が見えた。

「文次郎、見ろ。私の腕もここまで来たぞ」

ふはははと、文次郎さながらの隈を作った私に、文次郎が顔を青くして何か言っている。
いつも声がでかくてギンギンうるさいくせに、なんでこのときは声が小さかったのか。

「あのさ、立花。くすぐったいんだけど」

聞こえた言葉に、私は欲望のままフィギュアの尻を触り、うんうんと頷いていた。
私のフィギュアはなかなかの出来だ。
小さいのもいいけど、大きいのもいい。
役得、誰得、俺得。
あ、あのさ。と二度目に聞こえた声、頬を染めている。
ヤッベ、モえる。と思っていたのも束の間、

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ」

フィギュアが、喋った。もとより動いているし、何より暖かい。
そして、自らの手を見て、頬を染める。
の柔らかい尻の感触。これは永久保存版だ。






【ブサメン5】






私の部屋に、 が座っている。
それだけで、いつもの部屋が違って見えた。きょろきょろと見渡して、

「へー綺麗な部屋だな」

というは久しぶりに近くて、心臓がバクバクいっている。
そわそわ、気分は落ち着かなくて、文次郎と目を合わせて、
「これはチャンスではないか。お茶菓子を出して、謝り、お茶に睡眠薬をいれる
そして、そっとお前は出ていく、完璧なプランでは?」
「・・・・・・すまん。仙蔵」
「?どうした文次郎」
と、目で言えば。

「立花」

と目の前にがいた。か、顔が近い。
「舐めたい」「抱きたい」「口づけしたい」「手繋ぎたい」「寝顔見たい」「逢引したい」
と、色々現れる私の欲望を、理性総動員で押さえた。

「まず、俺は謝る。ごめんな」

なぜが私に謝るのか分からないが、伊作に
「常識がない男は、嫌われたままだろうね。さっさと土下座して、ぶち当たって砕けろ」
と言われた言葉を思い出して、

「こ、こっちゅこそ・・・・・・悪かったな」

思いっきり噛んだ。もうだめだ。私のクールで知的なイメージが、崩れた。
と心の中で思いっきり泣き叫んでいれば。

「立花でも噛むことあんだな。なんか親近感」

とふにゃりと笑う。ああ、もう、抱きしめたい。
と、手を広げたら、横からチョップが飛んできた。

「すまない。文次郎」

「任せろ」

と、私たち二人の会話を聞いていたは、眼をキラキラ輝かせていた。
ぶ、文次郎。もう一度頼むと開きかけた口は。

「おまえら二人って信頼しあってるんだな。
なんだ、俺が応援することなんてなにもないじゃん。よかったな。潮江」

ど、どういうことだ。と、バッと横にいる文次郎を見れば、片手を額を覆っている。

「さっきも、アイコントしてたし、うん。立花。おまえは気づいていないだけだよ」

言わんとしていることに、薄々分かってきて、体から体温が抜け落ちる気分だ。
立ち上がるの姿はやっぱり胸がきゅーんとなって苦しいし、
帰る姿を引きとめようとする私の手は。

「いなくなったときには、気付いたときには、終わっているんだぞ。
立花。だから、遊びはほどほどにしてかないと、本命に遊びだって思われるから気をつけろよ」

そう言われて、掴むことはできなかった。

「じゃぁ、俺は帰るな」

しめられた襖に、じわりと涙が浮かぶ。
「仙蔵、あいつは勘違いしている。
伊作に言って、勘違いだって言ってもらおう、な?」

「言ってどうなる。さっきの言葉そのままだ」

「仙蔵」

は、私を好きじゃない。それだけだ。誰でも落とせる男と言われた私が、
落とせない相手が、本命だなんて、笑えると思わないか?ふ、ふふふふ」

大声で笑った。泣きながら笑う私の頬に、一瞬風を感じたかと、思うと、
私は吹っ飛んでいた。文次郎が、握りこぶしを作って立っている。
どうやら、私は殴られたようだ。

「バカモン!!おまえはまだ、になにもしていないだろう?
勝手に脅して、恋人になったにすぎん。
もう一度恋人になりたければ、努力あるのみだ。仙蔵。
おまえは、一回の失敗で諦めてしまう、腑抜けな男ではなかったはずだ」

呆然と聞いていることしかできなかったが、徐々にムカついてきて、
仁王立ちしている文次郎の足元を払い、お返しに鳩尾に、一発入れておく。

「うるさい。おまえに言われんでも分かっている。いくぞ。文次郎」

「どこにだ?」

「もちろん、伊作のところだ。あいつには何が何でも協力してもらうぞ」

。私たちはまだ始まっていない。
だから、終わってもいない。私が好きじゃないなら、好きにさせるまでだ。
















2010・2・11