「ところで、侵入したはいいが、これから、どうするんだ?」

潮江の言葉でみんながとまった。

「まさか、まさかの」
「無計画」

しーんと沈黙した俺達は、まず、集まった。
うんと、山賊の頭が頷く。

「俺は、よく出入りしてるから、大丈夫だ。
そして、お姫さんも大丈夫だ!!俺の嫁ってことにするから。
安心しろ。冥福は祈っとく」

凄いいい笑顔で言われた。

「いや、何も大丈夫じゃない」

そう、何も大丈夫じゃない。潮江の言葉に、重ねる。

「あんたそろそろお姫さんってやめてくれない?
俺、 って言うんだ」

さっきから、ここの姫様とかぶってて、なんか嫌だ。
てか、俺は男だ。そこを忘れないで欲しい。
そう訴えれば、、突込みどころが違うだろうと、潮江が言っていたが、
山賊の頭が、遮り、あーそうだったと、俺に近寄り、ニカリと笑った。

「自己紹介もまだだったな。俺は、アキトだ。ほら、言ってみ」
「えーと、アキト?」
「ん?なんだ。
「え、だって呼べって」
「俺が、の名前呼びたかったんだ」

なんだそれ、と名前を呼ばれて、
なんでくすぐったさを感じるのか分からないが、
さっきから、大人というよりも、ちょっと子供っぽくなったアキトに、
これが素なのかもと思っていれば、
俺とアキトの間にクナイが飛んだ。

「ぐわっぁぁぁぁ!!!」

クナイは、一人の兵を倒して。
もう一人を鉢屋が昏睡させていた。

「今、そんなことしてる場合じゃないですよ。マジで」
「そうだな。仙蔵、半殺しに止めとけ」

潮江が、もう一人をしとめている。
はい、はこっちと、アキトが後ろを見せないが、ぐちゃぐちゃって音が聞こえる。
いや、俺、6年だし、殺したりとか、怪我人とか一杯みてるし、
見せなくさせなくても大丈夫。
てか俺だけ、なにもしないとか、忍び失格じゃね?と焦っていた。





と、あの山賊の男、アキトとかいうやつが、
話している間に、俺は、仙蔵を止めに来た。

「私は、の名前呼ぶのに、すごく苦労したんだ。
でも、は私のこと、立花とか苗字よびなのに。
それなのに、なんだ、お互い名前呼びとか。
名前しか教えないとか、そんなのズルくないか?なぁ」

凄いくだらない内容で、死にかけている奴を仙蔵から離しておく。
鉢屋は、まぁ。と仙蔵ほど怒りが出ていないが、
面白くないのは、同じだろう。不破の顔に眉間が寄っている。

「ずるいってのは分かりますが、このままアキトとかいう男と、
先輩がいる時間が長いほど、嫌な予感しかしないんで、
早く終わらせて、バイバイにしたほうがいいんじゃないですか?」

鉢屋の正論に、チッと舌打ちをしたかと思うと、仙蔵はいつものような
涼し気な顔をして、鉢屋を睨んだ。

「・・・・・・で、計画はあるんだろうな。鉢屋」
「ま、私ってば、素敵に無敵なんで、じゃーん、地図です」
「早く出せ。そしたら、はあいつの名前を呼ばずにすんだ」

仙蔵は、鉢屋からひっぱると、地図を眺める。

「・・・・・・ふむ」

「お、何か進んだのか?」
「・・・・・・・・・・・・・ふ、ふむ」

が近寄ってから、仙蔵の顔がみるみる赤くなる。
はぁーとため息をかくして、俺は、に願う。

「すまんが、。ちょっとあそこにいててくれ」
「?分かった」

よく分からない顔をしていたが、は空気を読んで、山賊の方へ行った。
あ、今、抱きつかれた。

「時間差で間に合ったな」

だけど、仙蔵は、鼻血を流しているので、どうにか気づかれていないようだ。
ふーと、ちり紙を渡すと、仙蔵はきゅきゅと血を拭った。
こいつ、あまりにのそばにいなかったせいで、免疫ができてなくて、
あの距離だと、鼻血をすぐ出すくらいになってやがる。
ちょっとずつ、慣らさないとと思っている俺に、
鉢屋がにまぁと嫌な笑顔をみせた。

「潮江先輩と立花先輩って本当、分かりあってますよね。
噂通りに付き合えばいいのに」
「あぁぁん?」
「あははは、すごい顔。先輩見てください。立花先ぱ
「からかってる場合じゃない。鉢屋」・・・はぁーい」

鉢屋も、チラチラと、山賊とを気にばかりしているし、
二人の仲がよくなっていく怒りを、こっちに持ち込み始めた。
これは、早く解決して、あいつらを離せねば!!と、
何も関係のない俺の胃がしくしくなき始めた。





「と、いうわけで」

と、決まった計画を言えば、はーいとが、手を上げた。


「えーと、俺と立花とアキトが姫様突撃隊で?
鉢屋と潮江が囚われた人たちの救出ってこと?」

俺が答える前に、鉢屋が、どこから出したのか、
黒板に、地図を貼って、説明し始めた。

「そう、ここからは、私、鉢屋 三郎から、お送りします。
ここ」

鉢屋が、指差す場所には、?と書かれている。

「まったく不明な場所があるんですけど、ここに、女が捕まっている確率が高い。
そして、ここに侵入できるのは一箇所。
私は、変装して、そこに侵入します。
地図が入ってるのは、私ですし。運がよければ、善法寺先輩もいるでしょう。
で、潮江先輩は姫様にあてがわれた屋敷と、他の屋敷の間を
監視する兵になりかわり、監獄の鍵を持っている奴を騙して、
鍵を奪い、外から開けてもらいます。そして、逃がす。
その間、ばれないように、ちょっとした小芝居をしてもらいます」
「小芝居?」

が頭をかしげて、仙蔵が嫌そうな顔をしている。

「はい、三角関係で行きましょう」
「・・・・・・なにそれ」
「それは」

と、鉢屋が内容を言う前に、じっと沈黙して、
地図と内容を聞いていた山賊が口を挟んだ。

「その前にだ」
「なに?」
「ここの姫様を警護する奴しか鍵を持っていないけど、騙せるのか?」
「私たち、忍びの卵ですよ?」

鉢屋が、自信たっぷりにいう。
いや、お前たちが腕がたつのは知ってるが、と、山賊の頭は、
今までの態度らしくなく、言いよどんでいる。

「いや、多分最初会ってビックリするだろうから言っとくな」

と、俺達の視線を、集めて、山賊は言った。

「ここの監視役。仮面をかぶった化物らしいぞ?」









2011・1・26