だれか助けてください。
僕はただ女装大会に参加していただけなんです。
その後、なんでか捕まり、変な姫様に合格をいただき、
さっきと違う、もっと広くて綺麗な部屋
(ただし牢獄のように、囲いがあり、鍵もついている)
に連れて行かれ、そこには数人の着飾った綺麗、可愛いな女の子だらけ。
ここどこ?と連れてきた仮面に聞く前に、
あんたと声がかけられて、振り向けば、
美人なお姉さまに、口づけが出来そうな距離まで、迫られた。
それだけ聞いたらハーレムうはうはないい話に聞こえるけど、
それで助けてって、お前、男としてどうなんだってことも重々分かるけど、
僕・善法寺 伊作は、女装しているので、
男性として性的な意味ではない。
顔をがっと首からもげるほど掴まれて、じーっと迫力美人に睨まれる。
こ、怖い。
「ふーん、悪くないちゃ悪くないけどね」
眉をひそめて、不機嫌な顔をしながら美人は言う。
「姫様の審査甘くなったんじゃないの?」
「椿。新入りいじめはやめろ」
仮面は僕の傍にいて、美人に言う。
仮面に椿と呼ばれた美人は、僕の顔から手を離して、視線を仮面に変えた。
「おや、仮面。あんたこの子にご執着かい?」
「みな平等に扱っている。お前のときもそうだった」
「・・・ふん、面白みのない奴」
そういって、椿さんは、
僕から離れて、立ち上がり上で束ねてある髪を乱雑に、かきあげた。
「あ、あの」
「気にするな、椿なりの歓迎ということだ。
さて、私は仕事に戻るが、何か聞きたいことがあるか」
正直聞きたいことだらけだ。
だけれど、後ろからの視線が痛くて、僕は。
「・・・・・・ないです」
そういって仮面を見送った。
仮面が部屋から出ていって、ガッチャンと鍵をかけて、いなくなるまで、
静寂が部屋をつつんだ。
それを壊したのは、
「あんた」
ハスキーな声だった。誰か分かってる。
さっきまで、凄い近くで聞いていた。
椿さんは、腕を組みながら、僕を見ている。
「え、え僕?」
「自己紹介は?」
言われて振り返れば数えて、7人の美人・可愛いな女の子が
僕に視線をよこしていた。
「えーえと、僕は、善法寺伊・・・・子です」
危ない。間違えて、男の名前を言うところだった。
椿はうんと一回頷き。
「そう、伊子。私は椿。この第4牢のリーダだ。なんでも聞いておくれ、
私はあんたの味方だからね」
そういった椿さんの顔はさっきと打って変わって優しい表情をともした。
それは、頼れる姉のようで、僕はほけっとした顔のまま、はいと頷いていた。
それから、各々の女の子の紹介が始まった。
その紹介に、加えて色々な質問をしてくる。
もはや何を言っているのか聞き取れない。
えーと、えーとと困惑している僕に、椿さんが苦笑して。
「みんな、それくらいにしなさい。
伊子は、まだ来たばっかで、意味も分かってないのに、詰め寄っちゃ可哀想だ」
「「「「「「はーい」」」」」」
女の子は、みな良い返事で、僕から離れた。
「久しぶりの仲間だからね、外のことがみな知りたいのさ」
「久しぶりって」
「新入りは、一ヶ月ぶりさ」
「えーと、椿さんはいつから」
「そうさね。今、この牢で、一番古株なのは私だからね、半年前かね」
「は、半年?」
「そう長くもったほうさね」
「え」
「伊子。ここはね、あの姫様のおもちゃ箱なんだよ。
私ら消耗品なおもちゃ。飽きたら捨てられる。ここを出る方法はたった一つ。
姫様に飽きられることだけ」
「あ、じゃぁ、変なメイクとかすれば、出れるってことですか」
仮面に言われた脅しは言い過ぎで、
出ることは、簡単じゃないかとタカをくくれば、
椿さんは一回黙って、ふっと息を吐き出す。
「伊子。あんた、見ただろう?不合格者の姿。出るときはあれ」
「・・・・・・・」
「あれは、マシになったんだよ。男前のおかげでさ」
椿さんは、仮面と同じことを言う。
「でも、女の子の顔に烙印とか」
「そう、女には耐えれない恥辱。
ここにるのは、みんな婚期間近な子ばかりだからね、
ほれ、あの子なんて二日後に結婚だったんだ。
帰っても、顔に傷がある嫁を、元のように愛してくれるかねぇ。
そういうことさ、不合格は、人生の問題にもなってくる。
だから、みんな姫様を飽かせないように、美しさを失わないように頑張っているのさ」
「なにか、ここを出る方法は他にないんですか?」
「方法ねぇ」
椿さんは遠い目をした。
「あることにゃあ、あるよ」
「それは」
「鍵を持ってるあの仮面を誘惑するのさ。
・・・ほら、無理だろう?いくら美しくても、誰も無理だった」
たしかに、仮面は、何を考えているのかも分からない。
仮面の言葉で、男だと見破られずにすんだものの、
なぜ、仮面があんなことを言ったかも分からないし、
そもそも男とばれているかも分からない。
そう思うと、仮面の正体が気になってしょうがなくなって、椿さんに問う。
「あの、仮面の人はなんなんですか?」
「・・・・・・監視役、そして・・・いや、伊子。
あいつは、駄目なんだよ」
椿さんは、ばさりと、髪を落とした。
「やってみなくちゃわからないじゃないですか」
そう食いつく僕に、椿さんは、
長く美しく手入れのゆき届いてる黒髪を、手に取り、まとめあげる。
「あいつが監視役に決まった決定打を、教えてあげる」
髪を結い直す間に終わると、彼女は話し始めた。
「最初はあの通り、仮面をつけて、性別不明なもんだから、
姫様だって、疑わしそうな顔をしていたさ。
だけれど、監視役の男は、みんなここの女と逃げてしまったし、
だからといって、女を監視役にしても、絆されてしまう。
だから、変なものにしようとした。
だけど、来たのは、変すぎたし、なにより、仮面を被っているっていうことは、
その顔の下をいくらでも偽れるってこと。
だから、姫様は仮面を外すように言ったのさ。
だけど、仮面は頑なに断った。
人生が狂うとか、色々なことを言って。
だから、姫様は女の子を助けに来た男を、犠牲にした。
その男の言葉でね、監視役に、確定したのさ」
「それは」
なんなのだと聞く前に、僕らの間に違う声が響いた。
「化物でしょう?」
僕達の間には、いつの間にか、一人の女の子。
7人が8人になっていて、他の子も騒ぎ出す。
誰かと呼びにいく子を静止して、
椿さんはその女の子をすごい眼力で睨んでいた。
「あんた、なにもの?」
「そこの先輩の後輩でーす」
そういってその女の子は、僕を指す。
ん?僕?
後輩と言われたけれど、全然覚えがない。
頭を傾けて、あんた知ってるの?と椿さんに囁かれて、僕は首を横にふった。
「いや、知らないなぁ」
「ひどぃ。私を忘れましたか?天才で、変装名人な鉢屋三郎です!!」
2011・1・25