初めてあったときの感動を俺は忘れない。
「世界は斜め四十六度で見れば大体のことは解消できる」って言われてドキューンと来た。
「・・・・・・兵助くん。ごめん。どこにドキューンってきたのか分からない」
俺はこの日、恐る恐る大丈夫?と言ってきた斉藤さんに、さんの素晴らしさを説いていた。
斉藤さんは、あの日会ったさんが誰か知らなかったらしく、
くのいちは全員知っているはずなのにと頭を捻らしていたので、
斉藤さんは全員の髪を結ったことがあるらしい。それで気になったというのだ。
なんてことだ。あんな素晴らしい人の存在を髪だけだとは!!
「当たり前だ。さんを見つけたらその日は幸せデーと言われるほど、まったく姿を現さないのだから、
しかも、髪の毛とか自分の容姿に無頓着だ。それなのに、あんなに可愛いのはもはや
神のいたずら!!」
「神と髪をかけたんだー上手いといえば元の兵助くんに戻ってくれる?」
どうどうとなぜか落ち着いてと言われた俺は少しばかし熱く語ってしまったかもしれない。
お茶を渡され。フーと一息吐く。
「さんは、変わり者だ」
変わり者で有名で、ハチの幼馴染じゃなければ係わり合いもなかっただろう。
ハチと喋る姿で最初は幼馴染としか認識していなかった。
あのときまでは。
忍び舐めてんのか?毎日眠りまくっている彼女への言葉は正当なもので、
やる気がないなら学園を辞めろ。言いすぎな気もするが正しかった。
実は、座学のテストの点での嫉妬とかそんなのもあったらしいけど
「忍び舐めてる、うん。舐めてるよ」
「私は全部全てを舐めきっている。いけない?
全部左じゃつまらない、時々右がいるから面白いんじゃないの」
「学園を辞めるかどうかは私の問題で学園の問題。
どーやら、私は今年も進級できるようで。心配してくださって悪いけど。
私の心配は私以外の誰かがしてくれているので大丈夫。
それは貴方達ではないけれど。」
「私は、世界を真っ直ぐには見れないので歪んでる。
正しいことは正しいけど、正しいには色々種類が必要だと思う。
なので、あえて悪いサンプルになろう!
私は、四十六度の方向から攻めてみるので、
あなたがたは九十度から攻めてみて!!世界が直角に見えるよ」
最後の言葉は幼馴染であるハチによって消された。
こんな奴でも本当は裏で頑張ってんです。ええ、すいません。本当。
舐めきってるのは性格です。すいません。こいつは舐めきった性格直すために入ったんで、
ええ。本当にすいません。
「そこにズキューンと」
「だから、どこ!!」
と、兵助くん変、といいながら去った斉藤さんに俺は茶をすする。
言えるかよ。言ったら斉藤さん好きになっちゃうじゃん。
「世界はみんな違う風に見えているのに、どうして同じふうに生きなくちゃいけないのか。
ねぇ、ハチ。みんなが正しいことを私は一生かけて疑いぬく自信はあるので、
ハチは真っ直ぐ前だけ見ていてね。そしたら安心して四十六度見続けていられるから」
「は?」
「そうだね。そこで見ている君も真っ直ぐ見ていてよ」
と、初めて見た笑顔で惚れましたとか。
近くにいてハチの友人だとかそんだけの存在に、
言ってることが理解できてしまったので、
そんな言葉と笑顔をくれてしまったあなたが悪いのです。
みんなが正しいといったことでも、
真っ直ぐ進んでいる私たちを四十六度の歪んだ世界で信じて見せます。
イコール
『誰が何を言おうが、何をしようが貴方がちゃんと真っ直ぐ生きていると思えるなら
私は一人でも貴方を一生信じています』
凄い愛の告白だったわけです。
そして、ハチが凄く鈍くて助かっているわけです。
2009・11・2