俺の幼馴染は変わっている。どれくらい変わっているかと言うと、
後輩である伊賀崎 孫兵のジュンコへの愛がレベル1で、奴はレベル100くらい。
つまり、彼女・は普通の世界に生きていけない変人だ。
入った理由も、両親が彼女がちょっとでも世界で生けていけるようにとのこと。
彼女のおかしな点を上げていったらキリがないが、
まず初めに両親の顔を忘れてしまうほどの顔と名前を覚えない。
時々自分の名前すら忘れそうになっている。
次に、睡眠量。二日に一日ずっと寝ていることがザラにある。
時々は三日眠り続けている。最初の時、善法寺先輩にものすごく心配されたが、
俺の説明のおかげで今は知る人ぞ知るな感じだ。
三つ目、その理由だけでなく奴は人との係わり合いが苦手だ。
孫平レベルは可愛いものだ。奴の場合。

『私は、動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・サル目(霊長目)・
真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト属・ヒト種の
一種の雌なわけだけど、雄と交尾することを放棄している
動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・サル目(霊長目)・
真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト属・ヒト種だと思う。
あと、同種嫌悪もしている』

うん、まだ孫兵は、人っていうし。同種嫌悪って。
男にも興味ないというだけではなくもはや種から興味がないらしい。

だが、彼らの両親の「世界で生きていけない」というのは違うと思う。
こいつはものすごく器用でものすごい運が強い。

こいつの頭は名前と人を覚えなくても他の事は覚えている。
例えば、図書室の本の位置。例えば、保健室の薬品棚の位置。
例えば、密書の内容。例えば、南蛮語。例えば事務所の書類の位置。
こいつは座学ナンバー1(起きているときのみ適用)
どうなってるんだお前の頭はと聞けば。
「?一回見れば忘れられないでしょう」ときた。
あの時、赤点まみれな俺は眠りこけているアイツに殺意を覚えた。
そんな大層なとても羨ましい頭を持ったこいつが、
寝ていても許されているのは、起きたときの便利のよさ。
先生からのあれはどこだとか、これの内容はなんだとか、ここぞとばかりに使われている。
彼女は好きなだけ寝ることを条件に生徒以上のことを受け持っている。
そして、最後の人との係わり合いの薄さとか恋愛面とか。

俺はしぶしぶ付き合っていることが前面に出ているこいつを連れて火薬室まで来る。
ここならば奴がいるだろう。

「おーい、兵助。連れて来たぞ」

ドンガラガッシャーン。と
物を落とした時のお約束の音が聞こえた。
後ろから斉藤の兵助くん大丈夫!?と聞こえるが、その前に聞こえる足音。
5年で足音が聞こえることはヤバイが、兵助にとっては一番重要なことなのでそんなこと
気にもしない様子だ。

「ひ、久しぶりです。さん!!!!」

睫毛が長く綺麗な肌をした俺から見ても整った顔をしていて、成績優秀。
火薬委員では委員長に代わり下級生を纏めていて責任感もあり、
頼りがいがある。性格は天然で、でも憎めない豆腐好きな俺の友人でもある
久々知 兵助は、なんの因果かにぞっこん片思いをしている。

「鼻血でてるぞ、兵助」

「え、ち、違います。これは久しぶりに会えたから興奮しているわけじゃないです!
ツボが降ってきたからです!」

どっちも変わらないから、鼻血をふかない限りは。
あまりな、彼の出来上がり具合に頭が痛くなってきた。

「これ」

と、そっと鼻に紙を当てている姿におっと思ったのもつかの間。

さんが俺に触った」

とどこぞの乙女?と言える発言を残して兵助は倒れた。大量に鼻血を噴出して。









2009・11・2