から、から、から、から、から、から、から、から、から、から。
何かが回る音がした。
それが、何なのか、俺は分からない。




10

昔から、俺の横には、俺の裾を離さず、泣いている女の子がいた。
少女の名前は、
呉服屋の娘で、彼らの両親は、なかなか子どもができなかった人で、
ようやっとできたを、それはそれは、いたく可愛がった。
だからだろうか、は、甘えたで、泣き虫で、
なんだって自分の思い通りにならないと、癇癪を起こす奴だった。
それでは、いけないと思った両親が、
どこにも出さないと言っていた両親が、くノ一教室にを出した。
「お願いします」と、年端もいかない俺なんか頭を下げるものだから、
俺は、彼女の面倒を、見ないわけにはいかなくなった。

彼女は、俺に会えば、必ずと言っていいほど、
「好き。大好き。愛してる」と、笑顔で言う。
何十回も言われたら、慣れてきて、頭を撫でて、はい、はい、と
そのまま、俺の名前を呼ぶ方へ行ってきた。
目を離せば、彼女は自分の容姿を利用して、
あっちへ、ふらふら。こっちへ、ふらふら。
そのたびに、俺が説教しても、「兵助。好き。大好き。愛してる」
そんなもんで、俺は騙されやしない。
俺は、彼女の保護者に頭を下げられたのだ。
だから、彼女を正しい道へ導くべきなのだ。
だけど、どうしたことだろう。

青空の下、軒下で、仲の良い5年生と
下らない話に花を咲かせて、美味しいお茶菓子と、お茶を飲んでいれば。

「あ」

と、三郎が一声言って、消えた。

「どうしたんだ」

ハチが聞けば、雷蔵が困った顔をして答える。

「三郎の病気」

病気?勘ちゃんと顔をあわせて、頭をかしげる。
ハチは、あーと、頷いているから、聞こうと思えば、

「来るな。寄るな。鉢屋三郎!!
お前なんぞ、地獄の底へ這いつくばって、蟻のように生きろ」

凄い罵詈雑言が聞こえてきた。
気になったから、そこへ行けば、三郎が、一人の女の子に
足蹴にされている。その横には。



と、俺がいうよりも先に、雷蔵が出て行った。

「もう、三郎ってば、いい加減、弓月ちゃんをイジメないでよ」

「ど、どこを見れば、イジメているように、私の方が、イジメられているだろう!!
ちゃんと見ろ。ほら、頭の上に弓月の足がある!!」

「最初に、何かしたのは、三郎でしょう」

そう言う雷蔵に、は答えた。

「そうね。弓月の胸を揉んだわ。きっと、欲求不満なのね。可哀想に」

「ちょ、ちょっと、そんな目で見るな。私を見るなぁ!!」

「なんだぁ、なんだぁ?」

と、俺の後ろから皆が来た。
弓月と言われた女の子は、三郎に制裁を加えていて、
は、それを雷蔵と和やかに話しながら、見ている。
三郎の姿が、ボロボロになってから、ようやく終わった現場に拍手が起こった。

「ナイス。ファイテン!素晴らしい回し蹴りだったわ」

、それってどうなの?褒める点」

「あら、雷蔵先輩。
だって胸を揉んだのよ。弓月のひそやかな胸を、成長させる責任もないくせに、
悪戯だなんて、だったら、○○を、半分に〇〇○にして」

「うん、、それ以上言わなくていいよ」

雷蔵が止めると、あら、そうですか?と笑う。
自分じゃないのに、うすら寒い。

雷蔵が、俺たちを見つけると、と横にいる女の子を誘った。

「一緒にお茶飲まない?」

と女の子はお互いの顔を見合った。




11

「な、の友人だと?」

真剣に驚けば、が睨む。

「なにかしら。その出来るなんてありえないみたいな感じは、
私だってやればできるのよ」

と、言いながらも、ちろり、ちろりと弓月を気にしている。
もしかして、友人だと思ってるのは自分だけなんじゃないか?と
思っていることは、きっと彼女以外の誰にも分かって、
弓月は、胸を張っていった。

「私だけが、友人だけどね。
まぁ、あいつらが、の面白さを分かっていないだけ。
前、「今日は、5月30日・・・弓月、今日って、何日?」
って、きっと、曜日を聞こうと思ったんだろうけど、
真面目な顔で言っていただけに、笑えたわ。それと」

「ちょ、ちょっと」

顔を赤くさせて止めようとしているに、笑うみんな。
違う話題になって、落ち着いたは、湯のみを取って、
ふーと息を吐き出すと、久しぶりに、意味を含ませず、無邪気に笑った。
つい、出てしまった。そんな笑顔。友達の確認ができて、嬉しかったのだろう。
ちらりと、横に座っている勘ちゃんを見れば、
そんなの姿を、微笑ましそうに、見ていて、俺は茶をすすった。



「好きなんだ」

同室の彼は、布団に入る前に、呟いた。
急に言われた言葉に、考えが停止した。

「他のみんなもきっと、彼女を好きだけど、俺も好き」

「なんで急にそんなこと・・・協力しろってことか?」

「いや。兵助には、知って欲しかっただけ」

とても清い笑顔だった。
こういう奴と一緒になれば、は、幸せなんだろう。
勘ちゃんは、どこかスッキリした顔で、今日という日の終りに、俺に言った。

「俺ね、のこと好き。昔からね。
だから、きっと片想いだって分かってる。ねぇ、兵助」

布団に入って、布団をかぶって、
なんだ?とゆっくり言えるほどの沈黙に、
彼は、真剣な顔でいった。丸い目が俺をとらえる。

「後ろぐらい見てあげなよ」

なんのことか分からなかった。
でも、寝る前のことだったから、その日は実習があって疲れていたから、
寝てしまえば、考えることを忘れてしまって、
俺は、何に対しても変わらずあった。


だけど、勘ちゃんが、を見て微笑んでいる。
好き。なんだと伝わってくる。
他の方からもちらほらと破片が感じれて、
何も気付かずいるこいつが、無性にむかついて、

「なんで、お前、好きな奴つくらないんだよ」

と声が出えていた。



そういえば、頭を撫でてやると喜ぶけど、
好き。大好き。愛してる。と言ってきた彼女にそれをして、
笑っていただろうか。
一度だって確認したことはなかった。
なんで、急に、そんなこと、気になるのか。

変なの。












2010・5・30