二人の言ったあと、黒石はひらひらと降っていた手を下ろした。
ようやくかな。
地面を見れば蟻がいる、空を見れば雲がある。
そんな当たり前なことを久しぶりに思い出せた気がする。
――あなたの望みは叶った?――
その声と共に、いた場所が変わった。
僕の周りには、一斉に散っていく桜。
僕は過去である未来を思い出した。
この桜の名前をなんていうんだっけな。
知っているは、何を問いかけても、微笑んでいるだけで、
ふわりふわりと、宙を舞い、触ろうと手を伸ばす。
意味はないけど、君がいう幸せというものを掴んでみようと思った。
君の小さな手に捕まらないとする花弁は、
捕まえる前から、手のひらの上に落ちた。
幸せだ。
君も幸せだといってくれる。
だから、僕はね。未来を変えたいんだ。
僕がなんで過去を渡れるのか。いわれのある社の力か化学の力か
それはよく分からない。
僕は数億分の奇跡の可能性を何度も味わっていた。
研究者としてあ解明解析が本分なんだけど、
その前に人だからね。
ただの男だからね。
僕がしたのは凄い発明を奪うことでも、
その力を操縦できるようにするようなものでもなく些細でとてつもなく大きなもの。
でも、何度過去をかえてもは僕のお嫁さんだった。
そして、彼女は何度も何度も目の前で時には知らぬ場所で、
僕のために死ぬ。
多いのは、僕の偶然できた産物の大量破壊生物薬品を奪いに来た敵に
自らそれを飲むことで奪わなくさせるというもので、
僕は研究者を捨てた時もある。でも、には会う。
そして僕のお嫁さんになって、僕をかばい死ぬ。
お嫁さんにしなくても、は僕を愛して、僕もを愛す。
死をわかりながらそばに居続けた時もある。
は頑なで一途だ。
でも、もう死んでほしくなかった。
狂うような回数それだけが僕の精神を正常にさせた。
いやもう異常かも知れない。
僕の最後のそれに対する答えは、
を自分以外の男に嫁がせようと思った
が自分以外の男を愛したのは、たった一人。
土井半助。
彼女が酔ったときに語った片思い話。
正直、が誰かになるのは嫌だ。
でも、
が好き、自分より好き。
好きだから、
幸せになってほしいから、
兵器なんていらないから、
太陽の下で笑っていて欲しいから、
僕は一人でもう平気だから、君に愛されたそれだけで幸せだから。
だから、手を離すよ。
何度も僕を愛してくれたね。
何度も自分よりも僕を愛してくれたね。
だから、一回だけ、僕より君を愛そうとおもうんだ。
もし、これが駄目なら、僕は、もう君とともに一緒に行こうとそう決めていた。
二人の姿を思い出す。
きっとうまくいく。寂しいけど、嬉しい。
君は幸せになれる。
さようならと小さく呟き微笑むと、僕の掌にあった桜の花びらは消えた。
2011・9・24