本当は・・・の続きを言えるほど強くもなかったので沈黙した。
違うことを理解していたので、周りに合わせた。
ずっとこのままで生きようとしていた。
時に花のように時に鳥のように時に風のように時に月のように
不自然なほどの自然を創りだすことが得意だったから。
――ぴょぴょぴょぴょ――
嘲笑するような鳴き声の鳥が空を舞う。
関わる気はなかった。興味がなかった・・・というわけではなかったけど。

一目で分かる。あの人は、渦の中心だと。







「おまえのせいで」

今日も空が青くて綺麗です。
ああ、あのくもは少しソフトクリームに似ている。
と、現実逃避はさておき、事のあらましを話そう。
なぜ私は縄でぐるぐる巻になって、
1人以外知らない連中に囲まれているのか。
それは私がのんびり廊下を渡っている時だった、
いつものように作法委員のからくりスキーズの罠を避けながら、
金持ちになったらどうしようか考えながらにやにやしていたら、
目の前のバナナに気づかず足を滑らせ、
廊下はピカピカに磨かれていたらしく、そのまま廊下一直線に滑る滑る。
バナナの滑り具合が楽しくて笑っていたら穴があって、
そして急降下がジェットコースター!!と笑っていたら、こんなことになった。

「急に拉致ってきて何勝手に切れてるのか分からない。理由はなんだ」
「喜八郎が変になったのもなにか幻術でもかけているんだろう?」
「いやいやいや、私どっちかというと逃げてるの知ってるよね?ナルシー眉毛」

ナルシー眉毛もとい平 滝夜叉丸は顔を赤く染めて、眉毛を隠した。
他の3人が吹き出す。

「「「ぶっ」」」

「誰がナルシー眉毛だ」
「あ、じゃあファンシー眉毛」
「眉毛から離れろ」

ぎゃあぎゃあと突っかかってくるファンシー眉毛に私は気分をよくした。
からかいがいのあるやつは嫌いじゃない。
顔を真赤にして騒いでから、眉毛を隠してしょげて、
1年に慰められているいいおもちゃにニヤリと笑っていれば、
ちょいちょいと袖を引っ張られた。
みるとなんとも愛くるしい顔をした青の服を来た少年。
2年生か。ホワホワした気持ちで毒気を抜かれていれば。

「委員長が、委員会をしないのはあなたのせいなんです」

と、毒のあることを言われて少々時間が止まった。
いや、その前にだ。と私は止まった時間を動かす。

「私おまえらの委員長が誰か知らないんだけど」
「七松小平太先輩です」
「なるほど、え、あいつ委員長なの?・・・お疲れ様」

と、近くにいた平の肩を叩くと頭を下げられる。

「ありがとうございます」

近くにいた前髪だけ色が違う3年生の服をきた
背の高い飄々とした雰囲気をもつ青年が呆れたように言う。

「滝夜叉丸飲まれてんな」
「はっ、そうだ。この美しく優秀な私はお前が嫌いだ!!」
「「・・・僕も」」

と1・2年生が密やかに賛同し、さっきの3年が頭を掻きながら
面倒くさそうに言う。

「まぁどちらかというと」

私は彼らの答えを、今日の3分間クッキングが
3分間かどうかストップウォッチ片手に測かり本当に3分だった
ぐらいどうでもいい雰囲気で返した。

「へー」
「なんだその態度は、もっと傷つけ!!というか私に興味を持て」

平滝夜叉丸のかまってちゃん発言に立花と同類だなと感じながら、
いやーだってね。としみじみ語る。

「嫌いって言われなれちゃって」
「・・・お、おまえ一体どんな人生送ってんだ」
「え?聞きたいの?」


そういえば、平滝夜叉丸だけでなく、他の3人も知りたいようだ。
逆にそっちが興味津々とか笑える。と苦笑を隠して
私のまだ若く青いはずの人生を語った。

「・・・・えーあーその・・・なんだ。私も少し言い過ぎた。
そんなには嫌いじゃないかもしれないし、嫌いかもしれない」
「「ごめんなさい。もういいません」」

平滝夜叉丸はゴニョゴニョと言葉を濁し、
1・2年生は半泣きで頭を下げて謝った。
私は笑う。

「同情とかいらないし。嫌いなら嫌いでいいんじゃない?
ただし、私も嫌いになるだけで」
「「「「・・・・」」」」

私の発言に体育委員が驚いた顔をする。
馬鹿だね。

「なに、私は嫌われても好きとか言える聖人君子だとでも思った?
生憎様。ただの人なんで、嫌いなら嫌い。好きなら好き。
好きでも嫌い。だいたいそんな感じ」

ぐっと腹に力をいれて立ち上がる。
彼らが私のその姿に慌てている。

「じゃあ、お前らは私が嫌い、私のお前らが嫌い。
これで終り。じゃーね」

と、大分前から取れていた縄をばらばらと地面に落として
すたすたと彼らから離れようとすると、
平滝夜叉丸に腕を掴まれた。

「いや待て、それじゃあ終わらない」
「いやいや終りましたとも、天才秀才眉毛ードーン」

と、眉毛を押したら、距離をとって赤くなった。
うん。平滝夜叉丸は例外で嫌いにならないでいてやる。
クククと彼の過剰な反応に笑えばもっと顔を赤くさせた。

「笑うな!!眉毛のことはもう言うな!!普通だ普通」

からかう私とからかわれる平滝夜叉丸の間に、3年の少年が邪魔をした。

「それでいいからもう七松先輩に近づくな」

彼の言い分にふむと頷く。

「別にいいよ」
「「「「え」」」」

簡単に頷くとは思っていなかったようで、目が点だ。
失礼なやつらだ。私が七松が好きみたいではないか。

「七松に近づかなきゃいいなんて簡単だね。
だって、私近づいたことなんてないからね」
「は?」
「七松から来る。そういう場合はなに?シッシとかすればいいわけ?」
「それは」

言いよどんだ3年の彼にこんどこそ私は背を向ける。

「今度こそ、バイバーイ」


というか、七松は私のせいで委員会をしないのではなく、
天女さまにお熱だからしないのだろう。
が、彼らも彼女に夢中だから彼女を攻撃などしない。
でも、いらいらが募る。
そんなときに、
簡単に嫌いと言えて、
嫌っても攻撃しても誰からも咎められない人間がいた。
つまり私に八つ当たりということか、はぁ、やれやれ子供は嫌だと、
部屋に戻ると、コンが一番いい座布団の上に座っていた。

「ミッションスタートだ」












2011・6・23