【ミッションコンプリート】








「あー、ダル。疲れた」

服がしわくちゃになるのも構わず、ベットの海にダイブした。
今日は、大変だった。
お客様からいわれのないクレーム。
使えない上司に、「君は本当にダメだね」って上から目線で言われた。
クレームには、
「お客様。そのような要望は聞き入れることが出来ません。
もっと理論的に要点を詳しくおっしゃってください。出来れば100文字以内で、
出来ませんのでしたら、こちらも、出来ません」と言い、
上司は、「あー、5号線沿いのクレオパトラ秘宝館」と、どこぞの浮気現場を言っておいた。
今までよく首にならずにすんだものだ。
きっと上司への脅しが効いているのかも知れない。
私は、明日もこんな風に生きていくのかと思うと、
絶望の海にいる・・・・・・気がした。
枕に顔をうずくめていると、ブブブと、携帯が鳴った。
そのままの体制で、携帯をとる。
画面を見るためにちょっとだけ首をあげる。

【おめでたい(爆)】

件名だけで、捨ててやろと思った。
このところのイタズラメールは、手が込んでいると友人が言っていたが、
これは、なんて低レベル。
人をどう見てもおちょくっている。
これで、誰が開けるというんだ。
そんな馬鹿いるはずない・・・・・・・いるはずは。

ポチ。

逆に、気になった。
やっぱり、手が込んでいるは正しい。
あの一文のインパクトは大きい。

「えーと」

【こんにちわ。今メールが届いた方は、とてもHappyです。
あなたは、2◯年間、3人の彼氏がいたのに、
イメージと違うんだと言われ、いつも一週間程度で振られ、
仕事もおざなりで、大雑把。
人からはあの人って変わっているよねと言われ続け、孤独。
掃除が苦手で、家事は普通以下。その姿に、女じゃないと影で言われ続けましたね。】

「・・・・・・消そう」

【でも、そんなあなたは、なんて最適な人物でしょう。
大概の男は苦手でしょう?
大概の女も苦手でしょう?
というか、人が苦手でしょう?
そんでもって、幸せになりたいでしょう?
あなたの自慢は、体力、気力、鋼すぎる精神力!!
さぁ、ボタンを押してください。あなたの夢を叶えましょう。
私の希望を叶えてくれれば、あなたは誰よりも幸せになれます。

【押してください】 【押してください】【押さないでもいいです】【・・・押せ】】

「な、なんて、カルト的な内容・・・消そう」

そして、私は削除のボタンを押した。
が、

私のベットは消えて、私は、白い空間にふわふわと浮いている。
目の前には、真っ白な狐。人が言うような声でコンと言っている。
もう、ここにいる時点で色々おかしいのは分かった私は、
本来ならしゃべるはずない狐に喋りかけた。

「・・・・・・おい、似非臭い狐、どうしてこうなった?」

「えっ?だって、押しただろう。ボタン。ほら、削除のボ・タ・ン

「・・・・・・なるほど。下じゃなくて、ボタン全域か。
やっぱり、カルトだった。最悪だ」

「いや、幸せな人。これからこの私がナビゲーションだ。
君にやってもらうことは、たった一つ!!神様のお手伝い」

「お前がしろ!!巻き込むな」

「神様って意外と大雑把だから、間違えちゃって、全員消しちゃったりするだろう?
それって隠蔽、面ど・・・可哀想!!そこで、人のことは人に頼むことにした」

「帰る。さっさと帰せ」

「ダメ・・・ってちょっとシェイクするな、吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐くっっぅうううううう」

「帰せ」

「あー、ちゃんと特典あるぞ。なんでも叶えてやる」

「それは、税金払わなくてよくて、一生遊んでも金が減らない生活とかもか?」

「もち」

「よし!!私は、何をすればいい?」

「さすが、私が選んだ幸せな人!!
簡潔に言えば、神様の加護ある人のフォローだ」

「は?」

「まぁ、ミッションをクリアしてくれればいいんだ。じゃ行こうか?」

「どこに?」

「忍術学園さ。そこのお前は、違う里からの留学生。
それと死なれたら困るから、色々能力いじくって、強くしたから、
じゃぁ、説明は終了。行こうか」

「ま、待て、今、不吉な言葉が」

「はい、契約終了。じゃぁ、ドーン」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」


と、いうわけで、私は今、忍術学園と看板が出ているよく分からん世界に落とされた。
肩には、白い狐。通称「結構ナルシスト」がいる。
この名前は、ここまで来る道中で掴んだ彼の特徴をよく表していると思う。

「では、このたびみんなの仲間になる・・・自己紹介して」

時代がよく分からないが、あからさまに、忍者!!みたいな恰好をしている
やつらを見渡せる壇上に立ち、彼等の視線を一身に集め、
すぅと息を吸って名前を言おうとしたときだった。

「私の名前は「凄く貧乳だァァ!!!!」・・・あぁぁ?」

自己紹介の途中に入った大声に、顔をしかめる。
というか、なんて言った?ゴラァ!!

「学園長が凄い人っていうから、凄いナイスバディかと思ったら、
凄い貧乳だ」

「ああ、まさしく貧乳という言葉を如実に表している」

「貧乳だな」

ひそひそと言いながら、会話の音量で、何度も言われた。
私は肩を震わせて、スピーカを掴み、最初は猫かぶろうと思っていた作戦も
全て捨てて、叫んだ。

「お、お前ら、初対面で、それはあんまりの言葉じゃないか!!
というか、最初にでかい声で貧乳言った奴でてこい。
お前は徹底的に潰してやる!!」

その後、私の名前は「貧乳」になった。
あいつらは思春期すぎるということで、
いちいち撤回することに疲れた私は、その名前を受け入れた。








「おい、貧乳」

言われた名前がムカつくから数回無視したが、
とうとう歩いている私よりも前に出てくるという
忍びの技を使った目の下に隈がひどい男。

「なんだ、こいつ最悪なんだけど」

嫌そうな顔に臆することもなく、その男は高らかに言った。

「俺と戦え、小平太だけずるいぞ」

ちなみに、小平太というのは、私の不名誉な名前をつけてくださった奴だ。
あの後、言葉の通り潰したら、言うことを聞くようになった。
この世界は、負けた奴は、勝った奴の配下に下るのだろうか、
と思いながら、奴が捧げた饅頭を口にしたものだ。
下僕を増やすことは、ドントコイなのだけれど、
ちらりと、目の前の男を見る。暑苦しい、それに、なんだか。

「お前、どMだろう。私、そういうプレイ好きじゃないから、じゃぁ」

別に面倒とかそんなことは思っていない。
非常に面倒なことになりそうと思ってはいる。
同じ意味だが、微妙に違う。
と、そのまま進もうとしたが、男は私の腕をとった。

「誰がMだ」

Mと言われたのが心外と顔に書いてある男に、
パァンと一発、頬に張り手を食らわした。

「く、なかなかだな。よし、こい!!」

ちょっと紅潮させている頬に、息が荒くなり、目がギラギラしている。

「お前、隠れどMだよ。分かってよかったね」


と、まぁ忍術学園に入ってこんな日々を過ごしていた
私だが、ことのあらましをよく分かっていない。
部屋に戻り、白い狐「結構ナルシスト」を

「私の名前は、コンだ。変な名前を付けるな」

「貧乳よりはマシだろうが、それくらい八つ当たりさせろ」

「お前、この世界にきてから、もっと女らしさがなくなったぞ。
だから、乳に養分がいかないんじゃないか?」

「なんで男はみんな乳、乳、乳言いやがって。
そんなに乳がいいなら、酒なんて苦いものじゃなくてミルクでも飲んでろっての」

「話が進まないから、今回のミッションを言おう」

「ん。なんだ」

「今回のミッションは、作法委員の正常化だ」

「正常化か。よし、来た!!」

と、部屋の襖を開けて、拳を握り、
叩けばなおると家電商品に対するおばちゃんの扱い方をしようとすれば、
コンが私を止めた。

「ちょっと待て、それをするのは、二週間後だ。
その前に、怪しまれないように仲良くする必要がある」

「おいおい。仲良くって、あいつか?」

頭に浮かんだ人物は、腕を腰に当てて、フンと鼻で笑っている。
イラッとした。

「・・・拒否権は?」

「ない」

「だよねー、あ、なんで二週間後?」

「その日に、神様の加護がついた人が降りてくるからだ」

「・・・てか、立花って、元から正常じゃないじゃん」

「自分が振った話はちゃんと聞こうか?」

コンが、狐のくせに、涙を流した。








しょうがないから、私はミッションコンプリートするために、立花に話しかけた。

「おい、立花」

「なんだ貧乳」

「考えて見れば、お前も貧乳じゃないか」

「はっ、私は男、お前は女だろう?」

「へー、女かと思った」

「私は、男かと思ったぞ」

・・・嘲笑が癇に障る。

「うん。やっぱり無理だァァ。どMくらえ」

「ぐふぉ、いいパンチだ」

「お前が立花の傍にいて、とても役立つ人物だと知った」

お前、使える奴だな。と言えば、なんだか嬉しそうな顔をしている潮江。
そうか、やっぱりこの世界は負けた奴が勝った奴の配下に下るんだな。
と思っていれば、私たちの間に、立花が侵入して、離れさせられた。

「な、なんで、文次郎と仲良くしているんだ!!」

「・・・お前、もしかして、こっちの人か?」

ゲイですか?という意味を込めたポーズに、立花は、
嫌そうな顔をして。

「なんで女はすぐにそっちの思考にいくのか。
変な女と友人が付き合っていたら、心配するだろう」

「大丈夫だ。こいつは変な性癖を持っている」

そういって、叩けば、

「く、もっと叩いてくれ!!」

と、嬉しそうな顔をしている潮江。立花は、一瞬驚き、それから、
見なかったことにしようとし、そして、最後に怒りが来たのだろう。

「・・・お前、文次郎と小平太に何をした」

「二人もか、お前どんだけ、征服欲強いんだよ」

呆れるわ。のポーズに、立花は、血管を浮き上がらせるほど、怒った。
つまり、図星なんだろう。

「うるさい!!最初から、おかしいと思ったのだ。
女のくせに、忍たまの授業をうけおって、しかも、長屋は、くのいちじゃないだと?
しかも小平太よりも力強いとか、お前、オカマだろう」

一瞬、地球は自転をやめたかと思うほどの、衝撃が頭にぶつかる。
今、こいつ、なんて言った?貧乳だけでは飽きたらず、
最終的に性別までか。ふふふふと、笑いが込み上げてくる。

「・・・・・・・よし、やっぱり無理だ。もう無理。ガマンできるか。
お前の方がよっぽどカマに見えるぞ。このカマ野郎が」

「・・・・いい度胸だ。こい」

地面に降り、私が構え、立花は、懐から、変な丸い砲弾を取り出した。
二人の間に、

「お、俺にしてくれぇぇぇぇ」

と、潮江の声だけが響いていた。


ことがすべて終わったあと、私はコンにことの成り行きを話した。

「ごめん、友好、無理だった。無理だったが、見かければ、
喧嘩腰になり顔をつきあわせるという特典を頂いた」

「・・・・・・」

【ミッションノークリア?】








変な女が来た。その女は、留学生で、学園長が凄い人物だとおっしゃった。
凄い人物&女という抽象的な言葉しかもらえなかった私たちは、
各々想像していれば、
小平太が、「ナイスバディ、ボンキュッボンの凄い体だろうな」
と最初に言ったので、ナイスバディの美人が来るとみんな頭で想像した。
つまり、凄く楽しみだったのだ。
だから、本物を来たときの、「凄い貧乳」はしょうが無いと思う。
その後、貧乳が名前になったのも、しょうが無いと思う。
みんな、お年頃なのだ。そして、期待を裏切ったぶんの落とし前なのだ。
だが、その女は、凄く強かった。
拳を振るう姿は、鬼神のごとくで、一瞬、呆けたが、頭の中に危険信号。
近づいてはならない。
しかし、女は、小平太を手懐け、文次郎に変な性癖をつけさせた。
小平太は、まぁ、いい。
だが、文次郎は、毎日女の元へ行き、「活を入れられた。幸せ」と、
殴られた頬の赤さだけではない赤みをつけて、
帰ってくるのをいかがすればいいものか。
私の自身の平穏のために、戦う覚悟を決めたのだ。

「いいか、お前に作法委員の素晴らしさを教えてやる。
そして、お前がいかに、女ではないかを教えてやる」

「二回目の言葉は聞かなかったことにしてやんよ」

フンと、鼻を鳴らし腕を組んでいる女は、絶対女ではない。
オカマだ。そして、学園をオカマ色に征服するつもりなのだ。
これは、いかん。
作法委員全員に前もって言っておいた「貧乳を嫌え」の任務を
遂行し、ここの侵略は無理だと埋めつけなければ。


「で、凄いでしょう?」

そう興奮して、図面を見せているのが、一年の笹山 兵太夫。

「へー、からくり好きか。私もからくり好きだ。
特に対糞野郎向けのカラクリがな。だから、ここは、こうしたほうがよくないか?」

「うわー凄い」

キラキラと目を輝かせた兵太夫と黒門 伝七は、女に近寄って。

「「先輩、今度それ、教えてください」」

と、きゃきゃと花を咲かせている。


「先輩は、どうしてあんなに強いんですか?
やっぱり予習復習を欠かさなかったからですか?」

三年の浦風 藤内が、女に聞く。
女は、んーっと一回悩んでから。

「そうだな。予習復習のいいが、それに囚われてしまってはいけないぞ?
物事は、なんでも予測不可能な展開を迎えるからな」

「予測不可能・・・・・・あ、あの、僕の組み手に付き合ってもらえませんか?」

・・・お前ら、なんで仲良くなっているんだ。
任務のことすら忘れていそうな姿に、
ぎりぎりと奥歯をかみしめていると、目の前の床が開いて。

「すいません。遅れました」

よいしょっと出てきた灰色の髪と、赤紫の服。
4年の綾部 喜八郎だ。今日も、穴を掘っていたのか。
少々汚れているが、見目麗しい容姿をしている。

「よし、喜八郎。お前は私の味方か?」

「どちらかというと、無関係な人になりたい人です」

「じゃぁ、私の味方だな」

「・・・・・・はぁ、じゃぁそれでいいです」

「お前は、今からあのオカマを徹底的に嫌え。マジで、嫌い。
この世界の誰よりも嫌え。
出来なければ、そう思っている人物を思い浮かべろ」

そういって、指さした女を見て、私を見て。

「あー、じゃぁ、仙蔵先輩を思い浮かべます」

「よし、行って来い」

色々とツンデレすぎる喜八郎を送り出し、今度こそはと喜んでいたが。

「初めまして・・・・えーと・・・・・先輩?」

喜八郎の顔を見た瞬間、女は、行動を停止させた。

「・・・先輩じゃないですか?あれ、あ、貧乳先輩?」

記憶のすみから引き出した名前を聞いて、女はようやく動き、
かなり顔が近くによった喜八郎を見て、女は凄い速さで壁まで後ずさった。

「う、うわぁぁぁぁ、な、なんだと。これが男だと?」

うろたえている姿を見て、実に気分がよくなった私は立ち上がった。

「ほほぉ。目の付け所がいいな。
綾部喜八郎。我が作法委員で私の次に美しい」

「か、可愛い。可愛いのに、男なんて卑怯だ」

「もしかして、お前、喜八郎がタイプか」

そういえば、女は、面白いぐらい顔を赤く染めて、

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあぁあ」

と、叫んで、襖を破壊して、出て行った。

「面白い人ですね」

「・・・・・・あいつ、私ではあんな反応しないというのに!!
礼儀がなっていない女だ。実に、面白くない!!」

「うわぁ、痛いナルシスト。
土の中に、一週間篭って、膀胱炎になればいいのに」


【ミッションクリア】








世界に光が溢れ、匂いが溢れ、幸せが溢れた。
彼女は美しく、優しく、可憐で、誰からも愛される。
神の加護を受けた人をなんというか、人と言っていいのだろうか?
私は、彼女のあだ名を付けた人物に賛同する。
それは、天女というのだよと。
でも、と付け加えよう。

「でも、所詮、人なんだ」

とね。今、私は、それまで敵であった立花の頭を撫でている。

「ひ、酷いと思わないか。文次郎も、長次も、小平太も、留三郎も、伊作も
私のことを無視するんだ。変な女に夢中だし、どこがいいんだあんな女」

グスグスと手ぬぐいを濡らす立花。
急に部屋に入ってきて、仁王立ちで、何も言わないからなんなんだと
顔を見ればほぼ泣きで、みんなが無視する〜な内容だった。

「あーよしよし、立花。お前、征服欲じゃなくて、独占欲が強いんだな。
そんで、結構、幼稚だと。お前はどこの小学生だ」

こいつ、髪ツヤいいな。触り心地もいいなと思い、手がとまらない。

「うー、あんな女、殺してやる」

ナデナデナデ。

「はいはい、物騒なこと言わない言わない」

「でも、悲しいじゃないか」

立花の言葉に、キョトンとする。
自分のなかにある立花が高笑いをやめた。

「・・・・・・立花って」

その後の言葉が続かなくて、立花の顔を見れず、そっぽを向く。
手は離しはしないが、言葉を切った私に立花が怪訝な顔で

「なんだ、途切れて」

「いや、そういうこと素直に言えるのは凄いな、と」

凄い。というか、なんでかこっちが恥ずかしくなる。
私は、もう廃れた大人だったから、悲しくても、悔しくても、
それを言葉にすることはなかった。
・・・いや、小さい頃から、擦れた性格だから、
一人でも、あいつら集団でカッコ悪いとタカを括り、
集団じゃなきゃなにもできない奴らって、弱いと言い。
グループを組めと言われたとき、最後まで残った自分は、
教師の哀れみの視線に、
私は一人でもできるから、あいつらよりも凄くいいものができるからと、
握りしめた拳は、確かに学業的には、立派なものを残しただろう。
だけれど、誰も私に素直さを教えてはくれなかった。
今、目の辺りにしている素直さに、居心地の悪さを感じてる。
完全敗北なんて私の辞書にないのに、ちょっとだけ敗北と尊敬を感じてる。
昔、私もそうであったならなんて。

「凄い?」

立花は、驚いた顔をして、さっきまで流れていた涙が止まっていた。

「ああ、そういうことを言えれる立花を尊敬するよ」

素直な気持ちを、久しぶりに言った気がする。
その言葉を聞いた立花は、可憐な少女のような笑みを浮かべた。
それを直視してしまった私は、時が止まったのだけれど、
立花は、慌てていつものような顔に戻して。

「ふ、ふん、崇めてもいいぞ」

「・・・そうか、立花は、幼稚素直が属性か」

そう軽口を叩かないとさっきの映像が、インパクトがありすぎて、
走って逃げ出したくなる。
なんだか、変な空気に、なってしまいどうするかと思っていれば。

「仙蔵先輩、大丈夫ですか?」

「・・・君等、どこから」

なんでか、作法委員の一年が私の部屋にいた。
鍵がついた襖を見たけれど、開いていない。

「仙蔵先輩が泣いてたら、助けるのが僕らの使命です。
それに、僕、あんまりあの人好きじゃないですよ。
だって、僕らの芸術を悪戯だなんて言うんだもん」
と、伝七くん。

「最悪だよな。
なんかするたびに、ダメよ?引っかかる人がいるかも知れないでしょう?
だって、主に、小松田さんと保健委員だし、
忍びの学園に、罠がないなんてそんなことないのに、
みんな、あの人の味方するし」
と、兵太夫くん。
二人は、顔を見合わして幼い満面な笑顔で。

「「殺してもいいと思います」」

「兵太夫、伝七!!なんて出来た後輩だ」

二人を抱きしめている立花に言いたい。お前、どういう教育をしているんだ。
一年って10歳ぐらいだろうに。人の部屋に、無断にカラクリを作るは、
立花が泣いたことを建前に、私情こみこみな殺人動機が、カラクリを注意されたって。
恐ろしい。忍術学園。そんだけで、人一人殺すか?

「いえ、仙蔵先輩、作法委員の力をあわせて、ヤリましょう」

「うわぁ、一年怖。笑顔なだけに怖い」

とうとう声に漏れた私の素直な気持ち。
ちょっと鳥肌が立っていれば、

「そういうのは計画が必要だと思います」

いつの間にか横に、藤内くんがいた。
本当、いついたのか。

「これ、あの人の行動パターン表です。どうぞ」

すっと差し出された紙に、今度は冷や汗がとまらない。

「お、おまえもか藤内」

頭を振って、常識を思い出そうとするが、
何が正しくて何が悪いか、境界線が多すぎて分からない。

「だって僕、これ以上一年の鬱憤に付き合わされて、
数馬が死にかけているのを見放せない!!」

涙ながらの藤内くんの訴えに、一年を見れば、ぴぴーと下手くそな
口笛を吹いている。

「お、お前ら」

「だって、掛からない場所にかけろって言うから、
かけたら、保健委員率が上がったんですよ」

兵太夫くん。私は、そんなこと聞いていない。
てか、お前ら天女さんの説得を変な理解でとるな。
鬱憤でカラクリ増やすな。

「天女とか、どうでもいいから、数馬をどうにか助けないと。
だから・・・・いいと思います」

「一番いい理由で、内容は黒!!」

「これで残り喜八郎だけか」

立ち直っている作法委員長に、私の頭はガンガン痛みを訴え始めた。

「いや、いや、私の部屋で集結しないで」

出来るなら、現実逃避のために、布団を今すぐひきたい。
そう思っている私に、肩にいたコンが告げる。

【本ミッションスタート】








「なんであなたは穴を掘っているの?」

その質問は、なんで息をしているの?と同レベルな内容だったけれど、
そう言っても目の前の女は理解しないだろう。
不思議そうな顔をして私の行いを見ている女。
理解出来ないから理解しようとする。
それは、なぜか?自分の顔だって分かってる。
可愛い、綺麗と男からでも言われる容姿は、自分ではわからないけれど、
美意識が高い滝が、お前は許せると言わしめた顔だから、
そうなのだろう。ナルシストで、どこかまっすぐな仙蔵先輩ほど、
それを武器出来ない自分は、中途半端で、「なんで?」と
私を見つめるたびに、聞く女に、嫌悪感をいだいている。
自分のことは放っておいてほしい。だから、穴を掘っている。
地面の中じゃ、見つかりにくいでしょう?
私の周りで、あなたに好感を持って、
あなたを知りたいと思っている人は多いのだから、そっちにいて欲しい。
嫉妬の視線に、またかとため息を吐く。
だけど、横にいる甘い匂いを出している女に、
「どっか行って、迷惑」と言えば、滝が怒る。それは、面倒くさい。
同じ部屋に住んでいる平 滝夜叉丸は、
こじれればこじれるほど、面倒くさい生き物なのだ。

「で、喜八郎くんは、何か好きなものはあるかな?」

「・・・・・・」

この人は、質問に答えない私の態度が
嫌悪だと気づかずに、そういう性格だと思っている気がある。
許してもないのに名前を気安く呼ぶあなたとか、
穴に隠れても、わざわざ探し出すあなたに、イラついてる。

イライライライライラ。

似たようなことをしていたくノ一でさえ、私のこの態度に一週間もすれば、
諦めたのに、この女はしつこいのか、自分は嫌われることはないと思っているのか。

イライライライライラ。

イライラにあわせて、穴を掘っていた。
深く深く掘れば、誰も私を見つけ出さないだろうと思ったけれど、
見知った人の大声が聞こえて、気になって出てしまった。

「だから、なんで私も行くんだ!!」

「好みだろう。ならば、いいじゃないか」

仙蔵先輩と、面白い先輩、
たしか、貧乳と呼ばれている先輩が共に歩いている。

「理由が分からない。なんで顔が好みだと会いに行かなくちゃいけないんだ。
どっちかというと、走って逃げたいわ!!」

「?なんでだ?」

「恥ずかしいだろう」

「好意を持っていれば、近づきたいと思うのが普通だろう」

「お前はな。世界は広いから、好みの顔だったら、すぐさま逃亡する奴もいるんだ」

「それは、苦手なんじゃないか」

「好みの顔って赤面するから、その自分が許せない」

「・・・・・・苦手と好意の紙一重ということか」

会話がおかしすぎて、笑えた。
貧乳先輩は自分が想像しているよりもおかしな人だった。
私の顔が好みと言いながら、好みならば、普通は近づくのに、
見れば逃げていくのはそういうことかと分かったけど、理解はできない。
それと。

「それと、手握るのやめてくれない?
しかもなんで緊張してんの?汗ハンパないよ」

そう、なんで険悪な仲だった二人が仲良く手を繋いでいるのか。
それも理解出来ない。

「お、お前が逃げるからだろう。手を繋げば、なかなか離せないからな。
手を繋ぐ行為は、久しぶりだから、しょうがない」

「・・・・・・・」

なんとチグハグな二人組がいたものだろう。
そして、手を繋げば逃げれないは違う。逃げれる。
ちっ、手を繋がれては、しょうがないと諦めている貧乳先輩がおかしいんだ。
ぴたりと、目の前で止まり、仙蔵先輩は大声を出した。

「喜八郎!!どこだ」

「・・・目の前にいるよ。どんだけ、言うのに緊張してんだよ。
てか、巻き込まなきゃいいじゃん。一人ぐらい作戦に加えなくても」

「それだと、省いたみたいで、なんか嫌だ」

「仲間意識が強いのはいいけど、
君の後輩がキョットンとした顔をしてこっちを見てるよ」

そういって、仙蔵先輩の背中に隠れた貧乳先輩。

「なぜ、後ろに隠れる」

「・・・顔が好みだから」

「つくづく変な奴」

「・・・おい、手を離せ。さっさと部屋に戻ってやる」

また、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた彼等。
この人達、何しに来たんだろう。と頭をひねり始めたとき、
唐突に仙蔵先輩は言った。

「喜八郎。どうだ、お前もやるか?」

「・・・・・・何をですか?」

「あの女を殺す計画だ。お前も加われ」

「・・・・・・・」

おやまぁとお決まりの台詞もあまりにいきなりのことについていかない。
固まっている私に、貧乳先輩が。

「・・・・・・・まぁ、そうだけど、ことのあらましも言ったほうがいいよ」

と、言ってくれた。








「ねー。なんでさ、作法委員は私の部屋に集まるかな?
おまえらの委員の部屋で集まれよ。私のオアシスから立ち去れや」

「と、いうわけで、みんなあの女に殺意をいだいている」

「うん、お前が一年を諭せば、終わる話だよね」

「あとはお前だけだ」

立花は、私の話を無視して、綾部くんを諭している。
真剣な表情に、ぴりりとするものの、よく考えてもらいたい。
たかが、無視されたのが原因だ。
それで殺すなという話だけれど、こいつは人の話を全くもって聞かない。

「私は・・・・」

綾部くんは、

「私は参加しません」

綾部くんは、床を見たまま答えた。

「な、なぜだ。喜八郎。お前だって私と同じ気持ちのはず」

「断られるかもって、さっきまで言ってたじゃん」

よろりと崩れる立花に突っ込む。

「ちょっと、黙っとけ、貧乳」

「おう?だったら、人の菓子をバクバク食うな」

「いいだろう?どうせ小平太の貢品だ」

「違う。それは、潮江だ」

「・・・・・・道理で、なんか食べたことがあると思った」

しんみりと菓子をみているこいつに、さっさと部屋に戻れば?
と言う前に、

「帰っていいですか」

綾部くんが立ち上がった。

「・・・・・・喜八郎。ここに藤内レポがあるが、お前、あの女に、
ストーキングされているな。
一人の時間を邪魔されて、正直、ムカついているのでは?」

「・・・・・・そうですけど、殺すまではいいんじゃないですか?」

「作法委員の最後の常識だな」

そういえば、ギロリと立花に睨まれた。
本当のこと言って何が悪いと睨み返しといた。
私たちが睨み合ってる中、綾部くんはいなくなっていて、

「どうしてだろうか。よし、ストーキングされている時間の喜八郎に会ってみるか」

「ストーキングのストーキングすごいね、二重苦だ」

はっと鼻で笑い、立花に、さっさと部屋からお帰り願ったが、
次の日に、立花は朝を感じさせない顔で、人の部屋に無断で入ってきた。
布団の中にいた私は、「やるぞ!」と主語を言わなくても、分かったことに
イラつき、こいつの息の根を止めようかと思った。

「なんで私まで」

二人で同じ柱に隠れて、ちゃんと隠れれてるんだろうかと思ったが。
立花があまりにも真剣なので、隠れれてることにしといた。

「喜八郎」

綾部くんを止める同じ色の服をきた少年。

「?あれは、誰だ」

「ああ、喜八郎の同室者にして、友人の平 滝夜叉丸だ」

目の前でしゃべっている綾部くんと友人を見て、
ふむふむと頷きながら。

「綾部くんって、ナルシストに好かれるタイプだと見た」

綾部くんの友人が自慢話を言っている姿に、前にいる立花をみて、
綾部くん君の人生に幸あれと祈っといた。

「喜八郎くん」

男の声でにしては高く甘い声に、立花は、目をカッと見開き、
胸に手を入れたから、私は、立花の腕をつかんだ。

「そこで砲弾を投げようとしない。落ち着けチチチチチ」

「私は動物ではない」

「でも、撫でるとおとなしくなるよね」

砲弾から手を離した立花に、ようやく撫でる手をやめて、
前を見れば。天女さまは綾部くんに話しかけている。

「喜八郎くん。今日も穴を掘るの?見ててもいい?」

「う、うっわぁ、集中しているときを、見られるという羞恥プレイ。
あの女結構マニアックだぜ」

なんちゅー女と言っていれば、横から冷たい視線。

「おまえの思考は本当に、変だな」

カチンと来たが、前では話が進んでいる。

「良かったな。喜八郎。清花さんに見られるなんて、なんて素晴らしい」

綾部くんの友人の台詞に、ああーと納得した。

「初めて天女さんの名前を知れたよ。
良かったね。あの女だと、どの女か分からないから、識別できる」

「知りたくもないわ」

けっと一蹴した立花の顔が般若のようだ。

「綺麗なものは、綺麗なものと一緒にあるべきだ」

満足気に言う綾部くんの友達の台詞で、
般若のような顔をしているとからかおうとした私は、言葉を止めて、

「はぁ?あいつ、頭がおかしいんじゃないの?」

と、眉間にシワを寄せれば、立花は一人納得いった顔をしていた。

「フム。喜八郎が拒否した理由が分かった。良かった。
私のことが嫌いだから、賛同してないのかと思った」

「そんなこと思ってたのか」

どんだけ心弱いんだよ。と突っ込むと、気にいって好きな奴に嫌われるのは
嫌だろうと言われた。素直に返ってきた言葉に、
私は二の句が告げれなくて、なんでまた人の部屋に集まるのか、
それの愚痴すら言えずに、黙って部屋の柱に立っていた。

「喜八郎。お前、滝夜叉丸に嫌われたくなくて、加わらないのだろう」

「違います」

「いや、そうだ。滝夜叉丸があの女を気に入っているから、
いつもみたく、無下に扱えないのだろう?
なぁ、お前もそう思うだろう?貧乳」

「いつもみたくが凄く気になる」

いつも、なにしてんの彼は?とかストーキングが日常かよとか
色々ツッコミめば、私のツッコミは全部スルーさせされた。
だったら、話をふらないで欲しい。

「・・・・・・滝は、綺麗なものが好きです」

いきなり、変なことを言う綾部くん。

「綺麗なものだったら、嫌わない。それなら、私もそうであるべきなんです」

今日は黙ってこいつらの行方を見守ってやろうと思った。
別に、近いと顔が赤くなるから嫌だったわけではないが、
綾部くんの台詞に私の中の何かが、プチーンと切れた。

「は?嫌いなら、嫌いでいいじゃん」

私の言葉に、綾部くんは、床から私に視線を変える。

「なんで友達の考えに合わせなくちゃいけないの?
所詮、他人なんだから、合うわけ無いでしょう。
家族すら合わないのに。なに、君は右向け右って言ったら、右を向くの?」

はっと笑うと、むっとした彼が私に言う。

「・・・あなた、友人いないでしょう?」

その台詞、何回言われたことか。
だが、私には。

「いたわ。まぁ、もう会えないけど、どこか旅行行くたびに、喧嘩してたけど、
違うならちゃんと違うって言える気の許した友達がね。
君のこそ、平 滝夜叉丸は友人なのか?」

私の問いに彼は黙ったまま。
私の中の興奮状態が収まり、あーあ、言い過ぎたと後悔したから。

「でも、君が友達が好きで、努力している姿は好感が持てる。
私もそうなら、彼女は、あんなに怒らなかっただろうにね」

と、付け加えた。あの世界で私の扱いがどうなっているか分からないけれど、
あの友人は、私の死亡記事を見ても、爆笑しそうな気がして、
あれ?私等のほうこそ、本当に友人なのか疑問が残った。








貧乳先輩に言われた言葉が頭から離れない。
私の言葉に、滝が怒ると思ってきたけれど、
そういえば、この頃、思ったことをちゃんと言ってない。
どうなるかなんて憶測で、
いつから心の底をいい合えなくなったのかと考える。
その合間に合間に
もう会えないと言った友人の話をするときの
先輩らしくない少し悲しげな顔とかが思い出される。

「ねぇ、喜八郎くん、どうして穴を掘るの?」

いつの間にいたんだろうか。いつも見られてムカムカしていたのに、
今日は考え事一杯していたから、いることに気付かなかった。
私の無言に。

「はん?穴を掘る理由?別に、なんでもいいだろう。
好きにさせとけよ。
みかんが好きって言ってるのと同じ理由でしょうよ。
細かく言えば、缶詰みかん派?冷凍みかん派?な内容だよ。
実にくだらん。てか、見るなよ。穴掘りにくいわ」

と、変な仮面をつけた貧乳先輩が出てきた。

「え、あなたは・・・誰?」

「そこにいる少年の心の代弁者だ。なので、他の人には見えません」

なんだそれは、その胸の可哀想加減と忍術学園の服じゃない服で
誰かすぐに分かりますよ先輩。と思ったが、女は先輩を知らないようで、
ええ!!と声をあげている。

「では、清花さん。綾部は、おなかがすいたので、ハンバーグ食べます。じゃぁ」

そう言われて、手を引かれた。
少し経ってから、先輩に声をかける。

「どうして私がハンバーグを好きなこと知ってるんですか」

「さぁ?」

質問の答えは曖昧に濁され、これで終わりとばかりに手を離された。

「貧乳先輩」

前を歩いていく先輩に声をかけて止める。

「・・・何?」

仮面をつけているのを、どうにか取って、
近づけば、さっと顔を背けられる。

「顔を背けないでもらえますか。地味に傷つきます」

「しょうがないだろう。顔が赤くなる自分が嫌なんだ。顔どうにかしろ」

「それ、初めて言われました」

「そう、良かったな。初体験」

さーっと木々が鳴いた。
先輩は相変わらず顔をこっちに向けない。

「先輩、仙蔵先輩を止めるの手伝いましょうか?」

「え。マジ・・」

「ようやくこっち向いた」

瞬間を狙って笑みを浮かべれば、面白いぐらい真っ赤になっていく先輩。
そのままどこかへ走って行こうとするから、

「う、うぎゃぁぁぁああ・・・・・・あ、あの、手放してくれます?」

「嫌です」

ぎゅっと強くすれば、手を繋がれてはしょうがないとよく分からない理屈で、
先輩の抵抗が弱くなった。

「うぅ、なんてプレイだ。赤い顔を人様に晒すなんて、誰か、穴を掘ってくれ!!」

「一杯ありますけど、今は、あげれません。
だって、顔が赤い先輩は、とても可愛いと思いますから」

「・・・・・・そういう台詞も言わないでもらえるかな?」

「先輩は、とても面白い人ですね。興味深い」

「いや、興味対象外にして、私の視界に入ってくれるな。
っもう、疲れた」

と、喚いた先輩のおかげで、頭の整理がついた。
一杯、考えてみた結果。話し合わなかったというよりも、
話を聞かない滝が悪いという結果になったので、
嫌われてもいいから、殴ろうと決めた。








「仙蔵先輩、やめないと嫌いになりますよ」

「や、やめる。今すぐやめるから、嫌いになるな!!」

やっぱり私の部屋に集まった作法委員の面々。
あの後、綾部くんは平 滝夜叉丸を殴って、滝が悪いと一方的な
喧嘩をし、嫌な事すごく我慢したとカミングアウト。
平 滝夜叉丸は、色々ごねていたが、最後には、泣きながら、
悪かったという話に落ち着いたらしい。
細かい内容は、興味がないというか、
色々な遍歴が分かって嫌なので、スルーした。
どこかスッキリした綾部くんは、立花を止めてくれた。
止めてくれたが、

「うわーすごく簡単だね。止め方」

「ええ、大概これで、OKです」

なんだろう。私の苦労。
しかし、後ろで、黒いオーラを放ちながら、ちっ、しょうがない。
僕らだけでもと言っている一年に。

「一年、カラクリを教えてやるから」

といえば、すぐに飛びついてきた。

「え、本当ですか?あれも、あれも教えてくれるんですか」

「あの前教えてくれなかったどぎつい奴も?」

「・・・・・・あ、あぁ。教えるから、暴走すんな」

オーラをしまい一年らしく喜んでいる姿に、横にいる藤内を見れば。

「僕は、数馬が死ななくてすむなら、どうでもいいです」

「ドライすぎる。ドライすぎるよ。藤内くん」

君のレポートは、あんなに事細かく書いてあってドライじゃないのに。
と思っていれば、服を引かれた。

「おい、私にも構え。友人が構わないのだから、お前が構え」

「え、どこをどうしてそうなった。君は、私を嫌いだろう?」

私の言葉に、なんでかみんな止まった。
立花は、呆れた顔で。

「は?なんでそうなる。
学園占拠を企んでいるオカマで倒すべき相手と思っていただけだ」

十分だ。

「ははははは、よし、今から拳で話をつけようか?」

と、パンと手のひらを拳で叩けば、綾部くんが抱きついてきた。

「先輩、仙蔵先輩ばかり構わないでください。私、頑張って説得したんですよ?
褒めてください」

「簡単だったじゃん。てか、近づかないで、抱きつかないでぇ」

くそぉ。あの時、さぁ?なんて言わなきゃ良かった。
なんとなく子どもが好きそうなものを言っただけなんだけど。
その後、子供って言ったら、なんだか怒りそうな気がしたから、濁したのに、
あそこから本格的に気に入られた気がする。
くそぉ。誰か、リセットボタンを押してくれ。


ともあれ、
【ミッションコンプリート】




作法委員がいなくなり、私は笑って、肩にいたコンに話しかけた。

「終わったぞ。私は、帰って億万長者になり、遊んで暮らせる生活を望む」

「?何いってんだ。これで、終わりじゃないぞ」

「は?」

「今回はと言っただろう?」

コンの台詞に時間を戻すと、確かに言っている。

「・・・・・くそぉ、最初から気づくべきだった。こいつらのはめ具合を!!」

「お前、そんな大層な夢が、こんな簡単に叶うと思うなよ?
物事はすべて、対等なんだから」

「くそぉぉぉぉ!!!」

全ミッションコンプリートは、まだまだ終わらない。






【終】