さようなら、みんな。楽しかったよ。さようなら。ありがとう。
そういって消えていってしまった優して愛しかった人。徐々に消えていく姿にみんな涙した。
だけれども、みんな頭のどこかで、
彼女は天女であり、いつか消える人だとどこか思っている節もあったから、
何日かすれば落ち込んでいた気持ちも浮上して、私はに会いに行くことにした。
六年間傍で見続けてきた彼女は、とても可愛くいじりがいがあり、
私達以外の人を寄せつかない人物で、天女が来てからはあまり構えなかったものの、
六年間の年月が裏切りようはないと思っていたのだ。
可愛い可愛い愛しい愛しい。
普通の女ならば薄れていくものも彼女なら濃くなっていくばかりだった。
だから、私が彼女の中から6年生以外を排除したのだ。
だから、構わなくても誰かにとられるわけない。彼女は一人だからだ。
寂しかったから私の胸元で泣いて抱きつく彼女の姿しか考え付かなかった。
なのに、これは一体どういうことだろうか?
「」と一言言っても部屋から誰も出てこない。人の生きている気配すらしない。
すっと開ければ、そこはもぬけの殻。
どういったことだろう?
もしかして、辞めてしまったのか?いいや、そんな情報は聞いていない。
でも、六年全員に聞いてもどこにいるか分からない。と言う言葉だけ。
イライラする。どこにいるんだ?。。
「先輩。さっきからうるさいです」
にゅっと現れたのは喜八郎。鋤をもち、穴を掘っていたのだろう。服も髪も顔も汚れている。
彼は無表情で、煩わしそうな顔をしている。
しかし、今私はそれどころではないのだ。可愛い私のがどこにもいない。
喜八郎に構っている暇などなくそのまま彼女の行きそうな場所へ行こうと後ろを向けば。
「先輩なら、お出かけしていますよ」
そんな声が聞こえた。頭が冷える。固まる。
喜八郎。なんでを先輩と呼んでいる?
なんで、お前はそんなことを知っている?
そして、誰と出かけて行ったんだ?
「先輩は、もう二度と先輩には会えませんよ」
と、言う喜八郎の視線が冷たくて、まさか。まさか。と頭に浮かぶ全ての最悪の可能性を。
「たぶん、それが正解です」
無表情の彼は肯定して、なんでもない日常に戻ろうとする。
なんてことだ。彼女は、私達から逃げ出した。
そして、誰かの手を取った。
6年生が丁度揃っているときだった。
みんな消えてしまった人のことを口にしていたときだった。
バァンと扉が壊れるような音をたてて、いいや実際扉は壊れた。
仙蔵は今にも人を殺さんばかりの殺気を立てていて、
どうしたんだと言葉すら聞けず、彼はフフフと狂気に笑った。
「盗られてしまった。ああ、なんてことだ。私の大切なものが、
どこぞの馬鹿に盗られた」
なんのことだ?と聞きたいが、彼の血走った目に何も言えない。
「文次郎。盗られたら、どうする?」
「はっ?盗りかえす?」
「そうだ!!その通りだ」
何が面白いのか分からないがあははは笑う。気でも触れたかと、伊作が仙蔵どうしたの?と
おそるおそる聞けば。
「だ。私のが、誰かに盗られた」
真剣な彼の顔に、さぁっと血の気が引く。
もし、その話が本当であれば彼女が盗られたならば、もう二度と俺達の元にいることがない。
彼女といることは、慎ましい幸せであった。
「性質の悪い冗談はよせ!!仙蔵」
俺はそういって声を荒げることしか出来なかった。
最後彼女に会ったとき、会ったとき・・・・・・あ?あれ?なんでだ?
俺はの顔を覚えていない。
「冗談?はっ。私がそんな冗談誰が好き好んで言うか。
あのときからが私達の元へ来た事があったか?を見たことがあったか?」
仙蔵の言葉しか響かない。みな思い思いに考えて顔が真っ青だ。
でも。と小平太が言う。「でも、楽しいって言ってくれた」
でも。と伊作が言う。「でも、またやりたいって言ってくれた」
いいや。と留三郎が言う。
「その後、誰が彼女に会えただろうか?そもそも、本当には楽しんでいたんだろうか?」
小平太は絶望した顔で、伊作は泣きそうな顔で、
盗られたんならきっと5年生だと小さな声で言う。双子に盗られた。
いなくなってから、再確認。お前は俺達に必要な存在だ。
だから、盗り返しにいかなくてはいけない。
俺達は自分達の過ちなど気づかない、気づいてはいけない。
気づいたら、もう動くことすら出来ないから。彼女を取り戻すなんて言えるわけもないから。
2009・12・4